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日本経済新聞「未来面」
学生から第一三共社長への提案
「飲めば病気が見つかる薬を」

日本経済新聞「未来面」 学生から第一三共社長への提案 「飲めば病気が見つかる薬を」

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回は第一三共社長・真鍋淳さんからの「製薬会社は世界を変えるため何ができますか」という課題について、学生の皆さんから多数のご投稿をいただきました。

 ここで紹介したのはほんの一部です。掲載できなかったアイデアを日経電子版の未来面サイトで紹介しています。

【課題編】「製薬会社は世界を変えるため何ができますか」

真鍋淳・第一三共社長

 製薬会社の仕事は、ひと昔前なら、薬を創ることに尽きましたが、今はその枠を超え、人々の生活を創ること、未来を創ることといった領域まで広がっています。例えば私たちが最も力を入れている、がんという病気との戦いです。

真鍋淳・第一三共社長

 昔なら、がんは不治の病で、ひとたび発症すれば、人生の終幕を覚悟せざるを得ませんでした。今や、がんは治る病気になりました。入院もせず、手術もせずに、がん治療ができるケースも増えています。がんになっても、将来の夢や希望をあきらめる必要はなく、人間らしい幸福な日々を送ることができるのです。製薬会社が、そのお手伝いをします。

 私たちが開発している抗体薬物複合体(ADC)と呼ぶ画期的な薬があります。わかりやすく言えば、抗体によりがん細胞へ薬物を直接届けるための新しい薬です。正常な細胞を破壊することなく、がん細胞だけに効くため、髪が抜けるなどの副作用の心配が激減します。あと数年で実用化できる段階まできています。

 予防医療の分野でも、製薬会社は頑張っています。病気を未然に防ぐことができれば、より良い生活や夢のある未来が開けます。インフルエンザの予防ワクチンなど、もっと改良の余地があり、今よりいい物ができるはずですし、そのための研究に余念がありません。

 人工知能(AI)やビッグデータの活用も進んでいます。病気を治すには、なにより早期発見が大事です。検査のために採取した血液や尿などの分析や、レントゲン撮影の画像の診断など、データの解析にAIは大いに力を発揮します。これまで人間の目では見落としがちだった小さな兆候でも、AIを活用することで認識できるようになりました。臨床試験を進める上で、ビッグデータをうまく使えば、研究開発の効率は高まります。他の研究機関との連携やデータの交換なども円滑に進み、新しい薬が開発されるまでの時間が大幅に短縮できます。

 今、製薬会社は大きな転機にあります。日々の研究の成果である新しい薬や技術、ノウハウを、私たちは日本だけでなく、世界の人たちとも共有したい。規模では欧米の製薬会社が先行していますが、研究者の熱意や勤勉さ、マーケティングや販売担当者の質の高さでは、日本の製薬会社は世界のトップだと自負しています。

 そこで読者の皆様にお願いです。私たち製薬会社は、世界を変えるために何ができるのか。皆様のアイデアを教えてください。これまでの製薬会社のイメージや枠組みを超えた新しい発想、私たちの常識や思い込みを破ってくれるような斬新なアイデアをお待ちしています。
(日本経済新聞2017年10月2日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 飲めば病気が見つかる薬
落合 涼花(産業能率大学経営学部2年、20歳)

 薬といえば「病気を治すためのもの」「病気を予防するもの」として定着している。がんですら手術も入院もせずに治る時代になったが、薬はその概念にとどまったままだ。そこで「病気を見つける薬」というのはどうだろうか。一回服用するだけで体の不調の理由がわかる薬だ。薬を飲んだ後の便の色で病気が判断できるといったものである。忙しさを言い訳に健康診断に行かない人々も、薬を飲むことはできる。そんな薬が生まれれば、誰でも手軽に自分の体を知り、健康的な生活を送ることが可能になる。特にがんは早期発見が大切だ。ふとした合間に飲んだ薬が早い段階でのがん発見につながり、大切な命を救うきっかけになるかもしれない。すべては命があってこそ。病気の発見を目的とした薬は全く新しいタイプのもので、人々の生活をつくり、未来をつくる可能性を秘めている。

アイデア002 あなただけのカスタムメイド薬
中尾 朱里(光塩女子学院高等科3年、18歳)

 風邪や頭痛、鼻炎などの症状が表れた時に何度も薬に助けられたが、合わない薬を服用して効果があまり出ないこともあった。洋服を体形や趣味に合わせてあつらえるように、個人の体の特性に合わせた内容へ調整する「カスタムメイド薬」ができないだろうか。個人の病歴など体に関する情報や遺伝子情報をあらかじめ登録しておき、性別や国籍、年齢といった諸条件に沿って薬を作る。それができたら薬効は現在よりも上がるのではないだろうか。各自の薬の効果をビッグデータとして活用すれば、新薬開発にも寄与すると考える。国や医療機関と製薬会社が連携して枠組みを作る必要があるものの、ドローンを使えば遠方に住む人にも薬を早く届けられるはずだ。受診してから24時間以内にカスタムメイド薬が自宅に届けられる世界が実現したらと想像すると、期待が膨らむ。

アイデア003 病気を発見する小型機械
鈴木 達也(産業能率大学経営学部2年、20歳)

 生きていく上で病気にかからないことに越したことはないが、絶対にかからない保証はない。だからこそ早期発見が一番必要なことだと考えられる。しかし、生活している中で、多少の風邪や熱ぐらいなら病院には行かない人が多いと私は思う。だから手遅れになるケースが出てしまうのだと思う。そこで、私が考えたのは、近くの薬局などで買うことのできる病気を発見する機械である。病気の詳細まではわからないが、ただの風邪なのか、初期がんなのか、何が体に起きているのかがわかるようにする。近くの薬局などで買うことができれば、少しの症状で試すことができるし、初期がんかもしれないと出れば、病院に行ってすぐ医師の診断をあおぐ人が増えるのではないだろうか。早期発見、早期治療につながるはずだ。普段の生活で自分ががんなどの重い病気になっていると思って生活してる人は少ないと思う。この機械で危機感を持つこともできるのではないか。

アイデア004 がんや血栓を食べる生きた薬
貝原 幹雄(無職、63歳)

 生物薬、つまり「生きた薬」を開発したらどうだろうか。地球上には未知の生物が多数存在する。アマゾンのジャングルには人を食べる細菌が存在すると聞いたことがある。そこへ調査団を送り込み、役に立ちそうな生物を採取。次にゲノム編集により薬に変える。血栓を好んで食べる細菌を注射で体内に取り込めば、脳梗塞の予防につながるのではないだろうか。がん細胞を食べる細菌があれば悪性のがん細胞を除去でき、ウイルスに対抗する細菌を見つければ肝炎の治療に役立つ。人間の幹細胞を欠損箇所に運んでくれる細菌があれば、失われた臓器を再生できる可能性すらある。その薬をなす細菌などが長期的には人間へ害をもたらす要素を持っていても、生物であれば寿命があるはず。「仕事」が終わった後に、死滅するよう設計すれば良い。実現すれば全ての人が健康に天寿を全うすることができるだろう。

【講評】真鍋淳・第一三共社長

 日々薬に関わる私たちの常識や発想を超える、大胆で斬新なアイデアをお願いしたところ、10代の中学生から70代のシニアまで、幅広い世代から多数のご提案をいただきました。

 「病気を見つける薬」は、これまでの薬のイメージを大きく変える、新しい発想だと思います。尿や便、血液などの検査は病院でないとできないため、ついおっくうになって結果的に病気の発見が遅れることがあります。病気を見つける薬を飲むだけで、こうした検査を自宅で1人、気軽にできれば、早期発見につながります。予防医学の観点からも是非、実現したいアイデアです。

 「カスタムメイド薬」も、こんな薬があったらいいなと思うアイデアです。現状では、同じ病気なら体格や体質が違っても、同じ薬を投与するしかありません。患者さんがもともと体内に持っている様々な酵素や遺伝子などの情報、腎臓や肝臓などの機能情報、身長体重などの基本情報をデータ化し、自動的に更新できるようにすれば、同じ薬でも微妙にアレンジできます。それぞれの患者さんに合った薬を、その時々の状態に合わせ、適量を投与できます。投薬効果が上がるのは間違いありません。

 「生きた薬」も研究者魂を刺激される、斬新なアイデアです。がん細胞だけを食べてくれるウイルスがあれば、体への負担が少なく、効果的な治療につながります。生きた薬は、いわば細菌と人間が共存することで、病気を治すという発想です。

 製薬は日々、進化しています。これまで以上に効果が期待できる新薬も続々と登場します。今回選んだ3つのアイデアは、単に患者さんの病気を治すという従来の薬のイメージを超えていますし、さらに新しい発想の治療もこれらから増えていくでしょう。
(日本経済新聞2017年10月25日付)

【「未来面」からの課題】
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