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チェック!今週の日経(29)スシロー・元気寿司が統合
回転ずしはどこへ向かう?

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック!今週の日経(29) スシロー・元気寿司が統合 回転ずしはどこへ向かう?

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。先週は衆院解散をめぐって様々な動きが入り乱れ、次々に政治ニュースが紙面をにぎわせる1週間でした。この動きは投開票が行われる10月下旬まで続いていくでしょう。そんな中でも、各企業は着々と自身の成長戦略を打ち続けていきます。今回取り上げるのは外食産業、それも大手回転ずしチェーンのニュースです。

スシロー・元気寿司が統合

紙面
9月29日朝刊

 9月29日朝刊1面の3番手記事として、次のようなニュースが掲載されました。

スシロー・元気寿司 統合へ シェア3割、海外展開加速(9月29日)

 見出しでスシローと書かれているのは、回転ずしチェーンの最大手、あきんどスシローのこと。元気寿司は同チェーン第5位の会社です。この特報を受けて開かれた会見によれば、両社と元気寿司の親会社コメ卸の神明(神戸市)は資本業務提携を締結、神明は元気寿司に41%出資、あきんどスシローを傘下に持つスシローグローバルホールディングスには33%出資し、神明の主導で経営統合を進めるということです。

 最大手企業がさらなる規模拡大を目指すという動きの背景には何があるのでしょう。その事情を分析しているのが、翌30日の朝刊企業2面の「ビジネスToday」というコラムです。

回転ずし ネタ調達を握れ スシロー・元気寿司統合で首位固め 価格高騰 規模で挑む (9月30日)

提携会見
記者会見で握手する(右から)スシローグローバルホールディングスの水留浩一社長、神明の藤尾益雄社長、元気寿司の法師人尚史社長(9月29日午後、東京都千代田区)

 規模拡大を目指す背景として一番わかりやすいのは、食材価格の高騰です。「食材の調達量が増え交渉力も上がるため、コスト高対策の一手になる」。スシローの水留浩一社長は会見でこのように語りました。回転ずしの価格に占める食材の原価率は40~50%と、ファミリーレストランなどと比べ10~20ポイント高いといわれます。輸入のサケやマスがこの2年で約2割値上がりするなど、食材費のほとんどを占める魚の価格は新興国の需要増で上昇が続いてもいます。原価率が高い分、食材の価格が動くと利益のぶれも大きくなるという構造が回転すしチェーンにはあるのです。

 この記事では主戦場はあくまで国内と指摘していますが、もうひとつのポイントとして海外展開も見逃せません。元気寿司は全店舗の約半分にあたる約170店を海外で展開しています。このノウハウを480店のほとんどが国内というスシローに導入すれば、海外展開が加速することになるでしょう。国内の回転ずし市場はここ数年、積極出店による成長が続き、5年間で2割増の年間6000億円という市場規模になっています。それでも、人口減少が進む国内での成長が早晩頭打ちになるのは明らか。一方、海外市場ではすしという食文化自体の広がりもあり、米国、中国、さらには東南アジアなどではさらなる成長余地が有望視されているのです。すしロボットの導入などによる店舗運営の効率化を徹底して進めた業態でもあるだけに、海外でも低コスト運営が期待できます。

 提携を主導した神明という会社にも注目しておきましょう。このところ積極的な動きが目立つ存在です。まずコメ卸で最大手というのが業界での立ち位置ですが、今回の提携でも明らかなように外食産業での存在感を次第に高めています。2016年初めには居酒屋大手のワタミにも出資していますし、中食を担う神戸屋子会社を買収するなど、コメの消費先を自ら経営し、需要創造することに積極的です。おにぎり店やさばを使った定食店などの事業も始めました。今年に入ってからは7月にキノコ大手の雪国まいたけ(新潟県南魚沼市)への間接出資を決め、「生産から消費まで力強い食のバリューチェーンをつくりたい」というのが大きな経営戦略のようです。数十億円で青果卸大手の東果大阪(大阪市)を買収。水産卸や農業ベンチャーなども買収するなど、川上から川下まで、食の関連事業全般に手を伸ばしています。

元気寿司シンガポール
元気寿司は海外出店に積極的だ(元気寿司シンガポール店)

 コメの会社=国内志向と考えがちですが、神明は海外展開にも積極的な会社です。雪国まいたけへの間接出資と相前後して、神明は国内外食のフランチャイズチェーン(FC)店を海外で展開する合弁会社を香港の外食大手と設立しました。出資比率は25%ですが、日本の外食産業の海外展開を加速し、そこにコメや食材を供給するビジョンを描いています。中国や東南アジアで日本食人気が高まってきていますが、それをさらに推し進めて日本食市場を広くアジアで拡大したい狙いがあるようです。

 食品産業や外食産業というと、これまで国内で事業が完結するイメージが強かった産業ですが、国内市場が縮小に向かう中、これからはますます海外展開に拍車がかかっていくでしょう。海外で働きたいという希望があるなら、外食産業や食品卸といった業種さえも有力な選択肢になってくるのかもしれません。

(企画委員 水柿武志)

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