大学受験後に見つけた「もしも」とは~ヨコスカネイビーパーカー誕生の原点
「わたし」が生まれた、横須賀(2)
お久しぶりです、八村美璃(はちむら・みり)です! 前回の記事では、自分の感性をどのように育んできたか、また転校を経験し、校長先生との出会いに導かれて高校を受験するまでのストーリーをシェアしてきました。今回は、そんなわたしの高校生活と葛藤、「ヨコスカネイビーパーカー」を生み出したきっかけについて、みなさんにお話したいと思います。
二兎も三兎も追った高校時代
憧れだった地元の横須賀高校に入学し、早くも3年が経とうとする頃。気づけば憧れの舞台が、「母校」に変わっていました。みんなが優秀な中で、飛び抜けて「頭が良い」訳じゃない。それでも2年生の時には、先輩対象の勉強合宿に一人でこっそり混ざったり、赤点を取った苦手な数学を克服しようと、連日先生の部屋に通ったり、朝一番に行くと決めていた自習室では、いつの間にか学校の掃除のおじさんと仲良くなっていました(笑)。
「二兎も三兎も追いなさい」。校長先生のお告げの通り、母校は勉強だけじゃなく、部活も行事も盛んです。仲間と演劇部を立ち上げ、英語同好会に兼部しながら、毎年神奈川県のワールドカフェに参加したり、大学の先生が講義をする特別授業も履修したりと、盛りだくさんの毎日。
しかし、3年間クラス替えがないからこそ、仲間とぶつかることが何度もありました。立ち上げた部活も、最後には解散してしまいます。それでも受験前の秋には、クラス全員で文化祭のミュージカルを成功させ、三浦海岸の民宿で打ち上げをして、みんなで海辺の朝日を眺めました。3年前の自分が連れてきてくれた環境と、個性に溢れ、何でもできるマルチな仲間との濃厚な青春が、わたしに「もっと自分らしく、もっと進化しろ」と刺激を与え続けてくれたのです。
未来が、見えない
「自分の感性を通じて何ができるのか、どこまで世の中に反映できるのか。まずは社会の仕組みや、ルールを知りたい」。法学部が第一志望だったわたしに、担任の先生が三者面談で語った一言は「トップを目指せばいいんじゃない?」。
その帰り道に赤本を買ってから3年間、自然と次なる目標の舞台は東京大学でした。でも、願っているだけではもちろん上手くいきません。東大模試を受けても、まるでウィンドウショッピング。受かる貯金がないのに、その空気を吸っているだけで、解いているだけで、いつか受かるような気がしてしまう。
圧倒的なハードルの高さを前に、努力とは何かが分からなくなる。目の前のハードルと自分とのギャップが、いつしか自分自身を押し潰していくようになりました。そんなわたしに構わず迫り来る受験。来年の今頃、自分がどこで何をしているのか分からない。
「もう、どの大学でも学部でもいいから受からなきゃ!」。追いつめられて元も子もない焦りを感じていたある日、わたしの目の前に現れたものはハードルではなく、「指定校推薦」という選択肢でした。「なぜ、大学に行きたいの?」。その問いを、もう一度強く自分の心に投げかけた時、ついにわたしが選んだのは、中央大学法学部に推薦していただくという道。成績が推薦基準を0.1だけ上回っていたことを知ったとき、見えない未来に向き合ってきた自分の足跡を、初めて確かめられた気がしました。
見えない未来を、切り拓く
葛藤を経て見ることのできた、予定より少し早い「合格」の文字。しかし、そこからの日々こそが、わたしにとって更なる闘いの始まりでした。「本当にこれで良かったのだろうか? わたしは逃げたのか? いや、そんなことない」。すっぽりと目標が抜けたわたしと、自問自答を繰り返しては過ぎてゆく時間。受験を控える仲間の追い上げを横目に抱く、不完全燃焼感。
せっかく合格したのに、そんな自分で居続けるのがとても嫌になりました。心から喜べないで入学するなんて、せっかく選んだ自分にも、春からお世話になる中大にも、失礼じゃないか。そこでわたしは、覚悟しました。
「一年後の未来なんて、受験が終わった今だって見えない。だったら、みんながあと3カ月勉強する分、わたしは受験では得られない3カ月を全うしよう。この道を選んだ自分に感謝できる一年後を、たった今から切り拓こう」
そうしてまた、動き出したのです。スターバックスでアルバイトを始めました。下駄箱の掲示板に貼ってあるイベントを片っ端から調べました。YouTubeの履歴は、何かに一生懸命な同世代の活躍でいっぱいに。
そんな中、お世話になった英語の先生から「これ、あなたにぴったりじゃない?」と手渡されたのが、「横須賀学生政策コンペ」のチラシでした。政治と若者を繋げようと、母校のOBが初めて開催するというこのイベント、早速参加を決めます。勉強合宿の夜中、ひとつの部屋で深く自分たちのビジョンを語り合った友だち5人も推薦で受験が終わっていたことから、「一緒に参加しよう!」と口説いて回り、LINEでチームを結成しました。横高生と一緒なら、一人でできないことでも、何だってできる。卒業前、わたしたち最後の「行事」が始まりました。
ネイビーバーガー、ネイビーパーカー?
コンペに参加することを決めた帰り道、自転車で家に帰りながら妄想を膨らませていました。「どうしたら横須賀が盛り上がるんだろう」。そこでふと、頭に浮かんだのは、観光名物、ヨコスカネイビーバーガー。「バーガー、バーガー、、、、パーカー?」。くだらないダジャレを出発点に、「もしも、アメリカのカレッジパーカーみたいに愛着を表せる市のパーカーがあったら」、「もしも、パーカーを着て商店街で割引を受けられたら」。思いつきの適当さに反して、たくさんの溢れ出る「もしも」に心を踊らせながら、家に着くなり真剣にノートに発想を書き留めました。
「この『もしも』を、本物にするとしたら?」。高校卒業までのカウントダウン、そして自分の見てみたい未来を切り拓く道を、走り始めたのでした。
次回は「ヨコスカネイビーパーカー」での活動やコンペの結末、大学入学後についてお話します。ぜひ、次回もお楽しみに!
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