日本経済新聞 関連サイト

OK
skill up-自己成長

トビタった!私たち(3)伝統工芸×北欧デザイン(上) 私が「留学したい!」と思ったきっかけ

authored by トビタテ!留学JAPAN
トビタった!私たち(3) 伝統工芸×北欧デザイン(上) 私が「留学したい!」と思ったきっかけ

 はじめまして! 埼玉大学経済学部3年の柳谷直治と申します。トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム5期生として、「スウェーデンから学ぶ、日本伝統工芸の再興術」というテーマで留学したお話とそれに至った経緯についてご紹介させて頂きます。この記事が、自分の興味ある分野を深めるために、留学という選択肢を持つきっかけになってくれればうれしく思います。

柳谷直治さん

 私は埼玉大学経済学部がグローバル人材育成を目的に設置しているGlobal Talent Program(以下、GTP)に所属しています。入学当初の私は、「経営の勉強>英語」でした。「経営の勉強と英語もできたほうがいいかな?」と考えていたため、本気で留学に行きたいなんて思っていませんでした。そんな私が「留学したい!」と思ったのにはあるきっかけがあったのです。

あの日のショックが今の原動力

 大学1年の前期。GTPメンバーで構成されるゼミ形式の授業でフィールドワークをすることになり、自分たちのグループで「高品質高価格で勝負する企業」とテーマを決めました。そこで私が提案したのが「伝統工芸」だったのです。

GTPでのプレゼン(左から2番目が柳谷さん)

 なぜ伝統工芸が浮かんだのかというと、母方の実家は「樽冨かまた」という秋田県能代市で170年以上「伝統的工芸品 秋田杉桶樽」を作る工房で、祖父は黄綬褒章を受章した現代の名工だったからです。しかし、当時の私は本当の意味で伝統工芸産業について何も知りませんでした。フィールドワークでは、伝統的工芸品産業振興協会にインタビューをさせていただきました。そこであるデータを見せてもらったのです。

出典: :経済産業省製造産業局『伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の施策について』

 これを見たときは本当にショックでした。そして、実家の工房も例外ではありませんでした。祖父が作ったおひつのご飯を食べて育った私は、伝統工芸品の用の美や魅力は知っていましたが、ここで初めて"現状"を知ったのです。

 なぜ、魅力ある伝統工芸が急激に衰退しているのか納得できなかった私は、職人、お客様50人以上に話を聞き、調査しました。すると、原材料の不足、後継者問題、生活様式の変化など、まとめてしまえば単純に聞こえてしまうかもしれませんが、職人方から直接話を聞くと、深刻で複雑な課題が山積みでした。「伝統」と付くものには「保全」というワードが浮かびがちです。しかし、伝統工芸も結局は商売、ビジネス。使い手から求めるものを作らなければいけません。個人的には好きな考え方ですが、「いいモノを作れば売れる」という昔ながらの職人の考えは通用しなくなってきました。

パリでのテストマーケティングの様子

北欧デザイン×伝統工芸。そしてトビタテ!がくれた自信

 「時代に合ったものづくりで受け継いでいく」。変化を恐れずに伝統と向き合ってきた祖父の言葉です。これの実現に必要なのは、消費者ニーズを捉えるためのマーケティングとライフスタイルを形成するデザインだと思いました。すぐ行動しなければと思いましたが、大きな壁にぶち当たります。経済学部生の私にはデザインなんて何もわかりません。

 もがき苦しんでいるところに北欧デザインが目に留まりました。世界中で受け入れられ、様々なライフスタイルにフィットする。調べてみると、「機能美」「自然からの曲線美」「洗練されたフォルム」など、日本の伝統工芸と共有するところが多いことがわかりました。

 アールヌーヴォー(19世紀末から20世紀初めにフランスを中心に欧州で流行した芸術様式)ではジャポニスム(浮世絵、琳派、工芸品等の日本美術)というアイデアが西洋美術に影響を与えました。であれば逆に、「西洋、北欧のデザインが日本の伝統工芸にヒントを与えてくれるかもしれない!」と思ったのです。北欧デザインは冬場、太陽が上がらないという環境で家の中での生活を豊かにできるように生まれたもの。北欧デザインの本場スウェーデンに身を置き、環境を感じながらデザインを学ぶしかない!と思いました。

パリのセレクトショップで実家の作品が展示されている様子

 しかし、同時に悩みも生まれました。伝統工芸について深めたいなら日本にいた方がいいのではないかということです。留学というと、最先端技術を学ぶことやグローバルなテーマでするものだと思っていました。そこで、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムに出合ったのです。

 このプログラムは、日本が抱える社会課題や地球規模課題を自ら発見し解決できる能力を持ったグローバルに活躍する人材や、グローバルな視点を持って豊かな地域社会の創造に積極的に貢献しようとする志を持った人材をサポートする国家プロジェクトです。そして、このプログラムを利用し、自分の立てた様々な計画で留学する学生たちがいることを知り、自分が伝統工芸をテーマに留学することは間違ってないと自信を持つことができ、決意しました。これが私に本気で「留学する!」と思わせたきっかけです。

プロフィール
柳谷直治(やなぎや・なおはる) 埼玉大学経済学部3年経営イノベーションメジャー Global Talent Program 2期生。トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム5期生として、「スウェーデンから学ぶ、日本伝統工芸の再興術」をテーマに、スウェーデン・リンショーピン大学にて10カ月の交換留学(2016年8月~2017年6月)。秋田杉桶樽の工法を活用した「冷酒杯 乙」をデザインし、第37回秋田県特産品開発コンクールにて奨励賞を受賞。