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グローバルリーダーへの道(1)世界の人に等しく医療を
医者だからできる国際貢献

グローバルリーダーへの道(1) 世界の人に等しく医療を医者だからできる国際貢献
authored by 林航平東京大学

 初めまして。東京大学前期教養学部一年生の林航平です。僕は、理科三類に所属していて医学部進学を目指しているのですが、その一方でグローバル・ネクストリーダーズフォーラム(GNLF)という国際系のサークルに所属していています。今日は、医学部に進みたい僕が、一般的には文系の人が多い国際交流サークルに所属し活動しているわけについて話をしたいと思います。

現代医療のおかげで九死に一生

 まず、医学部にはいろうと思った動機について話します。僕はいま身長も184cmと高く、普段も不自由なく生活できているのですが、生まれたときはかなりの未熟児でした。出産予定日より大幅に早く、急に生まれそうだということになり、母は近所の複数の病院に受け入れを求めたのですが、どこも病室の空きがなかったのか拒否されました。たらい回しの果て、結局家から遠く離れた病院が受け入れてくださることになり、救急車で運ばれることになりました。

GNLFの打ち合わせで発言する筆者

病弱だった幼い頃

 生まれた時の状態は非常に悪く、生まれると同時にすぐに保育器の中に入りました。無事退院ができたものの、何度も体調を崩し2〜3日に1回のペースで通院し、毎週のように点滴を打ってもらっていたそうです。

 体が弱かったエピソードを一つあげると、母が僕に関することで今までで一番嬉しかった瞬間が小学校の入学式だと話したことです。あんなに体の弱かった僕がほかの普通の人と同じ小学校に通えるという感慨が大きかったからということでした。

 これほど体の弱かった僕が、いまは他の人とほとんど同じような生活が送れているのは、現代医療のおかげです。生まれた時、そしてその後何度も病気を繰り返した時など医療によって命を救われたことは、数え切れないくらいあります。

 しかし、一方で現代医療の恩恵を享受できる環境にない人というのも世の中にはたくさんいます。医療のサービスを受けられたということ自体は実は全くの幸運なのです。

 僕と同じくらい体の弱い人や、もしかしたら僕より体の強い人でさえも、医療技術が届かないという理由で、僕の知らないところで僕の知らないうちに亡くなっていると想像すると、すごく申し訳ない気持ちになります。やがて、医療が受けられないという理由だけで人が亡くなるという事態を防ぐために医者になるのが自分の当然の使命なのではないか、と考えるようになりました。そこで、できるだけ良い環境で学び、できるだけ良い医者になるために、東京大学の医学部に入ることを志しました。

通学電車で偶然の出会い

 実は僕は高校の文理選択の段階でかなり迷っていました。というのは、僕が医療に救われたのは事実ですが、医療だけが人を救う道ではないからです。文系に進んでも制度の改革などで抜本的な解決ができるかもしれません。みんなが平等に医療のサービスを受けられれば僕は満足なのです。

高校時代に参加した国際シンポジウムで

 こんなことを迷っていたある日、学校の帰りの電車で友達と生物の授業の関連で癌の話をしていました。癌は原因が人間のシステム上の疾患である以上、根治するのは難しそうだとか、抗がん剤を投与しても耐性を獲得した癌細胞が出てくるのではないか、といった話をしていたのです。すると、前に座っていた人が話しかけてきました。その人は抗がん剤の研究をしているといい、癌と抗がん剤について専門的な話をたくさんしてくれました。それがきっかけとなり、研究医という可能性を考えるようになりました。色々と迷いはあったのですが、医学部進学の可能性を残すためにも理系に進もうと決意しました。

 では、次はそんな僕がどうして国際交流に興味を持つようになったかについて話します。

 高校時代(兵庫県の灘高校)、学校の代表の1人として、音楽に関する国際シンポジウムに参加しましました。そこで自分の至らなさを痛感する経験を2つしました。

 1つ目はナイジェリア出身の女子学生との出会いです。たまたま医学にも興味があるということで医学に関連した話を彼女としました。

ぼく「日本でちょっと前にiPS細胞っていうのが見つかったんだ」
彼女「それはなんなの?」
ぼく「えっと特定の因子を導入したらいろんな細胞になれる細胞で...」
彼女「幹細胞(stem cell)ってこと?」
ぼく「え、ステムセル???(ステム、ステム、stem...あ、幹細胞か!)そうそう」
彼女「それは全能性なの?」
ぼく「いや、一部なれない細胞があって、(あーなんて英語で言うのかわからない...)」
彼女「多能性なのね。倫理的には問題はないの?」(etc.)

 といった感じに英語で即座に専門用語が出てこなくて、あまりうまく会話できませんでした。知識としてはあっても、人にわかる形で伝えられないとだめなのだなと思いました。

インド英語に???

 もう1つはインド英語の経験です。インド人学生の話す英語があまり聞き取れなかったのです。イギリス人もインド人の発音は独特だといっていました。

イギリス人「あれはなんて言うの?」(木を指差して)
インド人「木(tree)」
イギリス人「1、2、次は?」
インド人「3(three)」
イギリス「発音一緒になってる!」
インド人「え???」

 とはいえ、イギリス人たちはインド英語を聞き取ってしっかりと意見を言っていました。世界にはいろんな人がいるわけで、アメリカやイギリスの英語がわかるだけでは世界の人と意思疎通が図れるわけではないのだなと痛感しました。

GNLFのメンバーと

 このような経験を踏まえて、自分はまだまだ世界を知らなくて、世界で自分の知っていることを発信できる状態にないのだと認識しました。そして、この状態を改善するために大学で国際的な交流をしようと思いました。

 GNLFは、毎年1回本会議が開かれ、そこで世界の様々な国からの参加者が時を共にして相互理解を深めます。このような場でなければなかなか会わないような国の人と話し、意見や考えを直接聞くことができます。いまは、次回の本会議に向け企業の協賛や広報活動、参加学生への連絡や本会議中のプログラムの準備などを部署に分かれて行なっています。

 将来たくさんの人のためになるような仕事ができるために、いま自分が出来ることに着実に取り組みたいです。GNLFでは自分の積極性やアウトプットの技術を高めると共に、海外の人の実際の考えを聞き世界についての認識を深めたいと思っています。

◇   ◇   ◇

グローバル・ネクストリーダーズフォーラム(GNLF)
年に1度、世界各国から大学教授と大学(院)生を日本に招き、国際的な問題について議論すると共に文化交流を深める「本会議」を企画、運営している学生団体。今年度は2018年2月下旬に参加者を13カ国(予定)から集め、「ジェンダー」をテーマにした本会議を東京で開催いたします。ホームページ  http://jp.g-nextleaders.net/


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