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有名大学近くに就活VRカフェ、
遠方企業の魅力紹介

有名大学近くに就活VRカフェ、遠方企業の魅力紹介

 就職活動と仮想現実(VR)。関係がなさそうな両者を組み合わせる試みが今秋に始まる。東京大学や慶応義塾大学といった全国16の有名大学のそばにある、キャリア支援のための学生向けカフェが舞台だ。エンターテインメントの世界を変えつつあるVRは、学生と企業を結びつけるツールにもなるか。

学生と企業をつなぐ「知るカフェ」

有名大学の近くの就活応援カフェにVR機器を設置する(写真は慶応大学そばの「知るカフェ」)

 慶応大の三田キャンパス(東京・港)の正門近く。ビルの2階に1日200人の学生が訪れる「知るカフェ」がある。約120社がスポンサーになっており、慶応大の学生証を提示すれば無料でコーヒーや紅茶を飲める。スポンサーは店舗に企業ロゴを掲げたり、会社説明会を開いたりできるため、学生と企業をつなぐ場として注目を集めている。

 このカフェで11月、豊田自動織機のIT(情報技術)事業子会社の豊田ハイシステム(愛知県刈谷市)とグリー、知るカフェを運営するエンリッション(京都市)が新しい試みを始める。ゲームの世界で広がりつつあるVR技術を使い、学生が訪れにくい遠方の企業のオフィスを疑似体験できるようにする。その名も「VRオフィス見学」という。

 まず、豊田ハイシステムとグリーがVR映像を企画・制作する。360度を撮影できる特殊な機材を使い、本社周辺の雰囲気やオフィス、社員食堂を撮影する。事業部別の社員紹介といった要素も盛りこみ、視聴を続けても飽きない5分以内の映像に仕上げる。制作費は1本あたり100万円程度の見込みだ。

 知るカフェにはVR映像を視聴できるヘッドセットを置き、スタッフが使い方を説明する。エンリッション営業本部の生雲勝之リーダーは「遠方の会社を訪ねるのはハードルが高い。新しい企業を知るきっかけになる」と話す。働き方改革が注目を集めるなか、学生も働く環境を意識するようになっており、疑似見学への関心も高いという。

 今回の試みはVRの適用範囲を広げるという視点からも意味がある。アミューズメント施設や家庭用ゲームでは話題のVRだが、「初めて触れる学生がほとんど」(生雲氏)。企業がはやりに乗じてVR映像をインターネットに投稿してみたものの、あまり視聴されなかったというケースは少なくない。

 「ゲームファンを除くと、見てもらう場所がないことがVRの課題だった」と、グリーでVR事業を担当する原田考多シニアマネージャーは言う。就活を意識する学生が集う知るカフェに視聴空間を設けることで、企業にとってもVRを使って会社を紹介するハードルが下がるとみる。まず、1年で40社からのVR映像の制作受注を目指す。

 米調査会社のIDCによると、日本のVRヘッドセットの出荷台数は16年に11万台だった。今後5年は年間平均54.5%のペースで伸び、21年に96万7000台になると見込まれる。ただ、この成長をけん引するのはエンタメ分野。100万台を超え、1000万台規模まで拡大させるには、幅広いVRの使い道を見つけられるかがカギとなる。

 知るカフェを訪ねた8月の終わり、インターンシップに参加した学生に出会った。「どんな企業が自分に合うのか知りたかった。準備を始める時期はどんどん早くなっている」。企業を知るツールはいくつあっても構わない。一昔前は一部の学生の参加に限られていたインターンシップが浸透したように、VRでの会社見学もそのうち当たり前になるかもしれない。
(企業報道部 佐藤浩実)[日経産業新聞より転載、日経電子版2017年9月7日付]

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