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野外会議は心も躍る?
キャンプ+オフィス

野外会議は心も躍る?キャンプ+オフィス

 自然を感じながら野外で働く「キャンピングオフィス」が話題を集めている。「キャンプ」と「オフィス」を融合した新しい働き方で、サントリー食品インターナショナルなどが実践。コクヨは企業向けに提案するイベントを開催した。社内会議に活用すれば発想の転換につながるほか、社員間の結束強化や防災対策といった利点も大きい。

サントリー食品インターナショナルは屋外でアイデア会議を実施した(東京都昭島市)

 「ブランド戦略はこれからどうしていこうか」「世の中に役立つ製品とはなんだろう」――。

 今年4月、サントリー食品の社員約20人が、激論を交わしていた。場所は普段の本社会議室ではない。キャンプ場に設置されたタープと呼ばれる日よけ布の下、つまり野外だ。

 サントリー食品がキャンピングオフィスを実践したのは昨年5月に続いて2回目。場所は東京都昭島市の「スノーピーク昭島アウトドアヴィレッジ」で、休憩時間も含む約4時間、自分たちで設営したテントの中やタープの下で仕事をした。

 「今までとは違う環境で会議をしてみてはどうだろうか」。キャンピングオフィスは、同社のミネラルウオーター「天然水」のブランドグループ、糸瀬大祐課長らの提案で実現した。実際にやってみると、「驚くほど多くの収穫があった」と振り返る。

 例えば、テントやタープの設営や、椅子を並べるなどの準備・片付けの過程。同じ目的に向かい協力する「チームビルディング」に近く、社員間の結束の高まりを感じたという。パソコンを使わず互いの顔を見る機会が増え、「普段より社員の笑顔が多く、通常より密なコミュニケーションがとれた」(糸瀬課長)などの成果も実感した。

 キャンピングオフィスの締めは、たき火を皆で囲んだフリートークの時間。都会の騒がしさとはかけ離れた自然のなかで、心も体も癒やされた社員が多かったという。同社では今後も定期的にキャンピングオフィスを実施していく考えだ。

 キャンピングオフィスの導入を唱えるのは、アウトドア用品大手、スノーピークの子会社、スノーピークビジネスソリューションズ(名古屋市)。村瀬亮代表は「生産作業は今後ロボットや人工知能(AI)に置き換わる。人間には彼らにできないクリエーティブな作業が求められている」と指摘する。

 閉鎖的な日常のオフィスから離れ、開放的な屋外に飛び出すことで、発想の仕方や議論も普段とは変わってくる。「風や雲、太陽の光などに五感が刺激され、多くのインスピレーションを得ることができる」(村瀬代表)と期待する。

 2016年の創業後、企業へのアウトドア製品の貸し出しや、キャンピングオフィスの導入実験などを行ってきた。これまで既に300社以上が利用している。今年からは企業向けに、キャンピングオフィスとして使えるテーブルなどアウトドア用品のセット販売を本格的に始めた。

 キャンピングオフィスを「防災対策」で活用する動きもありそうだ。

 昨年10月、品川シーズンテラス(東京・港)で「アウトドアオフィスプロジェクト」が開催された。スノーピークビジネスソリューションズに加え、コクヨ、NTT都市開発が共催したイベントで、3日間で約20社、計60人が参加。テントやタープ、時には太陽の下で、各社会議を行った。

 コクヨの防災ソリューション事業部・企画グループの酒井希望グループリーダーは、イベント開催の狙いの1つを「アウトドアを通じて防災の知識を身につけてほしいと思った」と述べる。

コクヨとスノーピークビジネスソリューションズらが開催したイベント。3日間で約20社60人程度が集まった

 緊急時のテントの設営だけでなく、電気や水道がない状態でどう仕事を続けるか。パソコンに依存せず企業活動が継続できるか。キャンピングオフィスを通じて災害発生時のBCP(事業継続計画)対策と向き合った企業も多かったようだ。

 今月4日からは再び品川シーズンテラスで同様のイベントを開催する。今回酒井氏が所属する防災チームは、運営ではなく利用者の立場でイベントに参加する予定だ。

 自宅などオフィスではない場所で働く「テレワーク」が広がっているが、キャンピングオフィスはその究極のスタイルだと言えるだろう。

 実際には、場所や季節、天候など制約は多い。通信環境などのインフラや費用の問題もある。頻繁に実施するのは現実的ではないが、まずは月に一度や半年に一度など、イベント感覚での導入から広がっていきそうだ。
(斉藤美保)[日経産業新聞9月1日付、日経電子版から転載]

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