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[ liberal arts-大学生の常識 ]

刺激的で楽しい多様性
普遍的な商品開発に必須

笹本裕 authored by 笹本裕ツイッタージャパン代表取締役
刺激的で楽しい多様性普遍的な商品開発に必須

 サンフランシスコやシリコンバレーを含むベイエリアのIT(情報技術)業界とその周辺から、性別を中心とする多様性に関するニュースが伝えられています。

 まずベンチャー企業に投資をしているベンチャーキャピタリストと呼ばれている人たちによるセクシュアルハラスメントのケースが続けて報道されました。

 女性起業家が性的なからかいや女性を見下すようなコメントを受けたりすることが多いという話は、以前から耳にしてはいました。問題が一気に表面化したのはこの春からではないでしょうか。セクハラをしたとされる人たちのリストには、著名な投資家たちの名前もあり、本人や所属団体からの謝罪がありました。

 セクハラを受けた女性社員の訴えに対して、経営陣が行動を起こさなかったことが問題になった企業もありました。「女性社員だけがよい待遇を受けるのは問題だ」という趣旨の文章を書いた社員が解雇されたケースもありました。

 このような事象の根本には、IT業界で働く人に占める男性の比率が高いという点があると思います。日本だけでなく、米国でもエンジニアリング関係の科目を専攻している女子学生はまだ少数派です。IT分野の有力企業では社員の約半分がエンジニアのため、どうしても男性社員が多くなってしまいがちです。

 企業はこの問題にどのように対処しているのでしょうか。短期的解決策は意識的に女性を雇用することです。女性という理由だけで採用することはありえません。それでも最終面接に能力に差のない男女が1人ずつ残ったとき、どちらかを選ぶのなら、女性を選ぶという考え方はあります。

 この考え方には業界内にもいろいろな意見があります。異論や反論もあると思います。しかし、まずは男女比の大きな差を近づけることが大切であることは確かです。

 IT業界における男女比問題の根本的な解決策として、女性のエンジニアを増やすことがあります。そして、女性がエンジニアになることを奨励する活動も世界各地で行われています。本格的に活動してからまだ数年という団体が多いため、男女比に結果をもたらすまでにまだ数年はかかりそうです。それでも、この種まき活動はいずれ豊かな収穫をもたらすことと思います。

 現実には性別だけでなく、人種間のバランスも加わるので、多様性という部分には、まだたくさんの課題が存在します。それでもツイッターやグーグルのような米国のIT企業は性別や人種の比率にこだわります。

 それは「いろいろな性別や人種が一緒に平等に働くことが正しいから」という強い信条があるからです。自社のサービスを世界中のあらゆる人たちに利用してもらいたいとの思いもあります。

 1つの例として、東京以外に住んだことがない30代前半の男性5人があるサービスをつくると考えてみましょう。

 彼らは東京の人たちの生活やニーズはよくわかっていますから、東京の人たちが使いやすいサービスの開発はそれほど難しくはないでしょう。

 しかし、そのサービスを沖縄に住む10代の女性にも利用してほしいと考えたとき、彼らは、彼女たちのニーズにあったサービスをつくれるでしょうか。ローマに住む50代の女性につかってほしいと思ったときはどうでしょうか。

 インターネットのサービスのすばらしい点のひとつは、世に出した瞬間から世界中の方々に利用してもらえることです。その利点を生かすには、異なる背景・言語・年齢などの社員が意見を出し合える環境が必須なのです。肌の色も言語も文化的背景も異なる社員がひとつのゴールに向かう会社は、刺激も学ぶことも多く、楽しい。私にとってはこれが本音です。
[日経産業新聞2017年8月31日付、日経電子版から転載]

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