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ユーチューバー、
知っておくべき3つのこと

ユーチューバー、知っておくべき3つのこと

 動画共有サイト「ユーチューブ」に投稿して広告収入を得る「ユーチューバー」の存在感が高まっている。30日にはユーチューバーのマネジメント事務所UUUM(ウーム)が東証マザーズに新規上場した。UUUM株には買い注文が殺到し、前場では初値が付かなかった。動画配信市場は今後も拡大が見込まれ、社会へのユーチューバーの影響力は増していきそうだ。知っておくべき3つのポイントをまとめた。

年収1億円?ユーチューバーの実態

UUUMの企業サイト

 ユーチューバーは自分の動画をアップする「チャンネル」を持つ必要がある。その数を集計しているサイト「wizトラッカー」によると、日本のチャンネル数は約3万6000。1人で複数を持つ場合もあり実際のユーチューバーはもっと少ない。

 視聴者はお気に入りのユーチューバーのチャンネルを登録する。その登録者数はユーチューバーの人気のバロメーターとなる。日本で最多の登録者を抱えるのは「はじめしゃちょー」(540万人)だ。24歳の男性で「iPhoneを天ぷらにする」などの過激な動画が特徴。端正なルックスと高身長で女性からの人気も高い。2位はユーチューバーの第一人者と呼ばれる「ヒカキン」で500万人。

 ユーチューバーは自分の動画再生回数に応じて広告収入を得ることができる。その報酬体系は明らかにされていないが、一般的には1回の再生につき0.1円ほどとされる。はじめしゃちょーのように多数の視聴者を獲得できれば1回あたりの金額はさらに増えるとみられる。企業の新商品を紹介する広告動画を作成するなどすれば収入はさらに膨らむ。

 1回0.1円で2016年の再生回数をもとに著名ユーチューバーの収入を試算すると、はじめしゃちょーの収入は1.5億円を大きく上回る。企業とのタイアップ広告などを入れればさらに増える。実力次第で高収入を実現できる世界だといえる。

中高生の間では人気「職業」

 子供たちにとってユーチューバーは憧れの対象だ。ソニー生命保険が今年3月に全国の中高生1000人を対象に実施した調査では、男子中学生の「将来なりたい職業」の3位に「ユーチューバーなどの動画投稿者」が入った。女子中学生や男子高校生でも10位だ。大人は「どう稼ぐのか?」と思うかもしれないが、子供は「職業」として認知している。

フルマは小学生向けに動画作成のための講座を開いている(企業提供)

 ユーチューブ上ではアンパンマンなど子供向け動画が数カ月間で数百万回再生される。幼児期から親しみ、自らも動画を投稿したいという子供が増えているようだ。

 こうしたニーズに対応し、子供向けプログラムも登場した。FULMA(フルマ、東京・港)が今年の3月に始めた「ユーチューバーアカデミー」は小学生を対象にユーチューブのルールや表現の仕方の教育プログラムを千葉県柏市などで開いている。

 「ギャップがある時に視聴者はすごいと感じる」などプレゼンテーションの方法や表情での表現の仕方を伝える。同時に、「投稿した動画は何年残る?」「住所を言ってしまったらどうなる?」などクイズ形式で動画投稿時のルールやリスクについても教えている。フルマの斉藤涼太郎代表(21)は慶応大3年生の学生起業家。「動画は一度投稿されるとネット上に残ってしまう。しかし『上手く使うことで子どもたちの可能性を広げるツールにもなる』など、子供が楽しく安全に動画サイトを利用できるよう表現方法やルールを伝えていきたい」という。

 ネット上での動画公開は、個人情報を特定され犯罪に巻き込まれるリスクもある。特に子供が利用する場合は安易に投稿しないよう、保護者も含めた慎重な判断が必要となる。また、人気ユーチューバーになれるのは一握り。子供が「楽しいことをして簡単に稼げる」と勘違いしたら問題だという指摘もある。

専門事務所、高成長もユーチューブ依存のリスク

 動画広告市場の拡大に伴い、個人で活動してきたユーチューバーを対象にしたマネジメント事務所も現れている。2013年に設立したUUUMはその代表格で、はじめしゃちょーさん、ヒカキンさんも所属する。所属するユーチューバーの動画制作を支援したり、企業との調整をしたりする。設立から連続増収で、18年5月期は前期比2割以上の増収を見込む。

 上場する芸能事務所では、福山雅治さん、星野源さん、サザンオールスターズなどが所属するアミューズもある。UUUMの11時30分時点の気配値ベースの時価総額は210億円。アミューズの520億円に対し4割もの評価がされ、株式市場の期待は高い。

 リスクは米グーグルが運営するユーチューブに依存する点だ。UUUMはグーグルに対し所属するユーチューバーの動画コンテンツの利用を許諾し、見返りでグーグルの広告収益の一定料率を受け取る。UUUMの目論見書によると、両社の契約は1年更新で30日前の通知がなければ自動更新される。グーグルのような「プラットフォーマー」と呼ばれる企業と組み、コストを抑えて事業をしやすい半面、グーグル1社に依存し契約、ルール変更時のリスクも高い。UUUMは企業とのタイアップ広告などで収益源を広げている。

 また、従来型の事務所同様、所属するスターの動向で業績も左右する。UUUMの目論見書では、「人気クリエイターの活動が休止・停止した場合や、スキャンダルや炎上によりクリエイター活動に影響が生じた場合」などに、業績に影響が与える可能性があると説明する。

 8月には個人の価値を売買するサービス「VALU」で、人気ユーチューバーのヒカルさんの「売り逃げ」騒動が発生。ヒカルさんが所属する事務所VAZ(東京・渋谷)の責任も問われ、VALUの運営会社はVAZに対し損失を出した人に損害賠償するよう勧告した。

 「おふざけ」ともとられるような動画を限られたコミュニティーで遊ぶうちはよいが、上場企業となると所属するユーチューバーの管理や教育の重要性も増す。ネットで拡散する面白さと健全性の両立が問われる。
(栗原健太、佐藤史佳、加藤貴行)[日経電子版2017年8月30日付]

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