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ミネルバのふくろう(5)一日2コマだけど脳が悲鳴を上げる過酷な授業って?

日原翔 authored by 日原翔
ミネルバのふくろう(5) 一日2コマだけど脳が悲鳴を上げる過酷な授業って?

 日原翔です。前回はミネルバのカリキュラムについて着目しました。今回は、実際の授業の様子を、私の体験を通じて紹介していきたいと思います。一年次の授業は一日2コマ、週4日という一見ライトなスケジュールなのですが、同時に大変過酷で、一コマ90分の授業が終わる頃には私の脳はいつも悲鳴をあげています。

1コマの授業の準備・予習に2、3時間!

 授業紹介といっても、まずは予習と授業準備から始まります。それだけ外せない要素なのです。前回少しだけ触れましたが、ミネルバの授業は反転されているので準備なしでは授業には臨めません。各自授業内容を予め理解し、授業中はアウトプットに臨みます。この事前準備をいかに徹底してやるかによって、授業の参加度合も理解度も段違いに変わります。 人にもよりますが、私の場合は一コマの授業の準備におよそ2、3時間程度を費やすことが多いです。

とある授業の事前課題の一部。筆者はこれらに取り組んでいる際に興味本位で関連する文献や動画などに耽ってしまうことも多く、気がついたら数時間経っていた、なんてことも珍しくない

 ちなみに、事前課題をやっていない生徒は、授業に出席していても欠席扱いになってしまいます。それだけミネルバの授業における準備の存在意義は大きいのでしょう。

全生徒が最前列、緊張感あふれる授業開始

Preparatory Assessmentの一例。大体1〜2分程度で回答する

 いよいよ授業開始です。始まるとすぐに、Preparatory Assessmentというものがあります。これは事前に読んで取り組んできた文献や課題について、それをさらに発展させるような問いです。このPreparatory Assessmentに対する各生徒の回答を起点に、授業が始まります。

 日本にいた頃だったら少し気が重くなるような記述式の問いですが、90分という限られた授業時間を効果的に使うために、あまり時間はくれません。また、HC(前回参照)を適切に用いた回答が求められているので、短い時間の中でもしっかり質の高い回答をしなければいけません。
Preparatory Assessmentに回答すると、クラスはそのままディスカッションに移行します。教授が次々と生徒に意見を求め、生徒は呼応して議論を発展させていきます。HCの本質に触れながら、それを応用した例などを的確に用いて自分の考えを述べます。画像に表れている通り、全生徒が最前列にいる状態なので気は抜けません。そのちょっとしたプレッシャーがまたいい具合に集中の源になっているような感じがします。

 些細なことですが、私がALFで現代的だなと思うのは、絵文字の存在です。コマンドを入力することで自分のアイコンの部分に数種類の絵文字を表示できるので、提起された意見に対して賛成であったり、反対であったりなどの意思表示ができます。オフラインのクラスと同様、手を挙げたりなどもできるので、オンラインでも意外と不便を感じることは少ないです。

クラスディスカッションの様子。いつ名前を呼ばれるか分からないので、集中は切らせない

移動せずに少人数グループに分かれて作業

 議論はさらに進行し、途中でBreakoutという時間に入ります。ここでは生徒たちが複数の小規模の班に分かれ、それぞれ教授の指示に従ってドキュメントを製作したり、意見をまとめたりします。人数の少ないBreakoutでは、より一層個々人の役割が大きくなります。こうした工夫でミネルバの授業は一人一人が100%授業に参加して学べるものになっているのです。

Breakoutの様子。三人でドキュメントを製作している

 セミナー形式の授業において少人数グループでの作業というのは他大学にもよくある形式だと思うのですが、ミネルバがテクノロジーの良さをうまく引き出しているなぁ、と私がいつも思うのがこのBreakoutです。ALF(前回参照)上では教授がボタンを押すだけで少人数グループに移行するので、従来のBreakoutでは避けられなかった、机や生徒の移動などの授業の途切れがありません。また、各班の製作物を全体に共有するのも一瞬です。テクノロジーを上手く活用することで時間的な無駄を省くだけでなく、生徒の集中も持続します。

 Breakoutが終了すると、またクラスは全体での議論に戻ってきます。各班の成果物を比べ、さらに深いレベルでの対話を発展させていきます。この頃には生徒たちもその授業で問われているHCの本質やその応用を理解し始めているので、一層面白い議論になってきます。

各班の製作物を比べ、HCへの理解をさらに深める。授業が終わる頃には脳が疲弊していることがほとんど。

 全く違う背景からやって来る生徒たちが対話をするので、私はいつも周りの豊かな発想や考えに驚かされています。私には思いつきもしないような視点から、それまでの議論をひっくり返す発言が出て来ることもしばしば。逆に、自分から大局を動かす発言が出てきた時の高揚感もまた形容しがたいものがあります。

 ミネルバの授業では、教授は基本的に最低限しか話しません。90分の授業の中で80分以上は生徒の発言でなくてはならないという目安があるので、彼らはファシリテーションの役割に徹します。さらに、各生徒の発言量がALFによって可視化されているので、教授は平等かつ効果的なファシリテーションをすることができます。

定期試験は存在しない

 これらの数多くの特徴に加えて、ミネルバに定期試験は存在しません。実はここにも「学び」というものに対するミネルバの信念が感じられます。私もミネルバに来る前はよくやっていた、試験直前での短期記憶(一夜漬けともいいますね)というのは、数日もすればほとんど忘れてしまいます。しかし、それでは当然全く学びにはなっていません。長期的に定着する効果的な学びを追求する中で、試験というシステムは不要であるとミネルバはいうのです。

 成績は全て日々の授業内での発言内容とPreparatory Assessmentなどに対する回答、そして提出物によってつけられます。毎日が成績に直結するので、授業に対する生徒の態度も全く違います。現に私がこれまでに学んできたHCはもはや私の思考の一部となり、仮に忘れたくても忘れることはできません。日々積み重ねる学習は、想像以上に大きな効果があったということを実感しています。

 いかがでしょうか。ミネルバの特徴的なクラスの様子、上手く伝われば幸いです。効果的な学びを提供する大学と、それを求めてやって来る意欲的な生徒の間に、相乗効果がうまいこと働いているように思います。

 そういえば、今年のミネルバの出願も始まりました。こんな授業を実際に受けてみたい!なんて思った方は、是非挑戦してみてください。

 それではまた次回。

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