日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

20年後から見る職選び(2)ディズニーランド化する空港
AIで入国管理要員などは縮小

戸崎肇 authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者
20年後から見る職選び(2) ディズニーランド化する空港AIで入国管理要員などは縮小

 インバウンドの旅行者が増加すれば、当然、急増する旅客をどのように効率的に案内・誘導するかという空港での対応も問題となってきます。現在、日本では、大都市の空港はもちろんのこと、各地の空港において、海外から日本に入国する旅行者が入国審査のために長い列をなし、長時間待たされている状況を目にします。観光立国を目指すには是非とも改善しなければなりません。

 これは日本に限ったことではありません。私達が海外にいく場合も同じようなところがほとんどですね。たとえばニューヨークのような世界を代表するような都市の国際空港でも、とんでもない長蛇の列に並ばなければなりません。ただ、今後インバウンドによる経済振興に多くの期待をかけている日本としては、他国以上のスピードで、空港でのスムーズな人の流れを早急に実現していかなければなりません。

審査、簡素化と迅速化を両立

 安全管理もおろそかにできません。2019年のラグビー・ワールドカップや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催は、テロリストにとっての日本が、自らの政治的主張をアピールするための格好の舞台となることを意味します。したがって、審査の簡素化、迅速化を進めながら、同時に審査の厳格化も進めなければなりません。これは従来の人間による対応だけでは不可能です。

関西国際空港の免税店

 こうした難しい問題の解決のために、新たな技術革新が大きな可能性をもたらしています。今年7月、法務省は、2018年度から、成田、羽田、中部、関西の4つの空港において、日本人の出入国審査について、顔認証技術を用いた自動化ゲートの本格運用を目指す方針を明らかにしました。そして羽田空港で、10月18日から日本人の入国審査に限ってこの顔認証による審査を先行導入しました。他人を誤って入国させる可能性は0.01%以下だとしています。このように、高度な技術の導入によって人間によるチェックは、今後機械的なチェックによって急速に代替されていくでしょう。

ロンドンでは、都心部の混雑緩和のために、都心部を走行する車両に対しては課金するシステムを導入しています。その料金の徴収は、都心部外から都心部に流入するポイント各所に設置された監視カメラによる車両ナンバーのチェックによって行われています。また、すでに日本でも、一般生活の中で、様々な場所でモニターカメラが設置されており、犯罪者の検挙などにおいて大きな役割を果たしています。

入国管理や税関業務効率化

 こうした取り組みが今後さらに進展していけば、現在、人手不足が問題視されている入国管理官や税関職員といった職業に必要とされる人の数は、一部の管理業務を行う人を除いて、極めて少なくなっていくでしょう。そして、空港は今の姿とは様変わりし、鉄道の駅のように、飛行場についてから飛行機まで、何の障害もなく、直行できるようになるでしょう。

もちろん、ここまで監視カメラなどのチェックが進むと、世の中の「監視社会化」が進むという怖さもあります。ジョージ・オーウェルがその著書である「1984」の中で警鐘を鳴らした状況です。利便性をとるか、安心感をとるか。この究極の選択を迫られることは必至でもあるのです。

一般客訪れるレジャー拠点に

 このようなセキュリティ面だけでなく、空港はより広範にその機能を拡大・強化し、複合商業施設としても大きく変貌を遂げていくでしょう。未来の空港は、航空利用者よりも、むしろ周辺の住民を中心に、極めて多くの人々が日常的に空港を訪れ、買い物や映画などを楽しむ一大レジャーセンターとなっていきます。そして空港は、海外から来た人々と日本人が交じり合って一緒に時間を過ごし、交流を果たす「真の国際交流広場」となるのです。

 すでにその方向に向けて動き始めています。すなわち、海外同様に近年日本でも推進されている空港の運営権(コンセッション)の売却です。仙台空港は2016年3月から、関西空港は2016年4月から民間の事業者がその運営を担い、収益をあげるべく、様々な取り組みを行っています。この他にも多くの空港が続々とコンセッションの売却(民営化)に向けて準備を進めています。民間の事業者にコンセッションが与えられる期間は数十年の長期にわたるものですから、20年後くらいにはその成果も目に見える形で表れていることでしょう。

 さらに、政府はインバウンドに関わる観光政策の大きな柱の1つとして、MICE(会議観光)の推進を掲げています。MICEとはMeeting, Incentive, Conference, Events or Exhibitionの頭文字をとったものです。国際的な学会などが開催されれば、それに伴って多くの人が世界中から集まり、長期的に滞在することで、その会議が開催される都市・地方は大きな経済効果が期待できます。そのため、MICEの振興を進めるべく、大規模で使い勝手の良い会議場の建設など、環境の整備を行おうとしています。空港の周辺に、あるいは空港と一体となった形でこうした施設が魅力ある形で整備されれば、海外からのアクセスもよく、しかも楽しむ場所・機会も多くあるということで、誘致運動を進める上で「鬼に金棒」となるでしょう。

 シンガポールなど、世界の最先端を行く空港はこうした取り組みをもう進めています。日本も負けるわけにはいきません。是非、この分野のプロを今後育成していく必要があるのです。

 そして、こうした業態は、「夢の空間の演出と提供」といった意味で、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドのような会社とほぼ同じような形をとることになるでしょう。違うのは、航空機が発着するという魅力がさらに加わるということです。現段階では、空港経営は極めて特殊な分野だと思われていると思われますが、これからの面白味を考えれば、是非そこで活躍できるような研鑽を積んで、面白い空港の演出に自らの将来を賭けてみるのも魅力的ではないでしょうか。

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>