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「お嬢様学校には違和感」
女子御三家、雙葉生の今
雙葉中学・高校の和田紀代子校長に聞く

「お嬢様学校には違和感」女子御三家、雙葉生の今雙葉中学・高校の和田紀代子校長に聞く

 「女子御三家」と呼ばれる名門私立女子校の雙葉学園(東京都千代田区)。カトリック系で、幼稚園から小学校、中学校、高校まである一貫女子校だ。東京大学と国公立大学医学部に全体の約2割が進学し、首都圏では「頭のいいお嬢様学校」というイメージで知られる。JR四ツ谷駅にほど近い雙葉を訪ねた。

荘厳な新校舎

 四ツ谷駅から徒歩3分、上智大学と道路をへだてた所に雙葉学園はある。いかにもカトリックと思わせる荘厳な新校舎だ。都心だが、江戸城内にあった土手が校舎前にあり緑も豊かだ。2学期の始業日は9月9日と他の学校よりも遅めだが、訪れた6日は多くの生徒が文化祭の準備のため登校していた。上品なイメージの女子校だが、久しぶりに同級生に再会したためか、校内には和気あいあいとした雰囲気が漂う。

東京都千代田区にある雙葉学園

 現在、早稲田大学に通う雙葉OGは「中学に入学する時は、お嬢様学校なんだろうなと思っていましたが、全然違いました。『ごきげんよう』なんていう子はいません。中高はしつけも厳しくないし、かなり自由。ボーイフレンドのいる子もいて活発な学校でした」と話す。雙葉中学・高校の和田紀代子校長も「お嬢様学校といわれるのは違和感があります」という。

 雙葉は1909年にフランスの修道会「幼きイエス会」により設立されたカトリック系の女子校だ。姉妹校に田園調布雙葉学園など4校がある。お嬢様学校とされるのは、皇后・美智子さまが雙葉小学校、皇太子妃・雅子さまが田園調布雙葉出身であるのも一因といわれる。和田校長は「幼稚園や小学校から中高まで一貫の私立ですから、公立よりもお金がかかるのは事実です。しかし、うちの生徒はまじめだけど、物静かなお嬢様タイプではないでしょうね。明るく、元気で行動的な生徒が多く、文化祭などの行事で盛り上がります」と話す。

対外試合OKは3部だけ

荘厳な雙葉学園の外観

 雙葉の幼稚園の定員は1学年40人、小学校は80人。中学には外部から100人が入学して180人となり、中高6年間を過ごす。中学に4月に入学すると、6月に校内球技大会が控えている。バレーボールなどの球技を通して同級生のきずなが強くなり、友人の輪が広がる仕組みだ。続いて9月に文化祭、10月に体育祭がある。

 クラブ活動は全員参加が義務付けられる。運動系から文化系まで37のクラブがあるが、スポーツで対外試合が許されるのは、バレーボール、バスケットボール、卓球の3部だけだ。全国大会に出るレベルのクラブはない。校外の関係者が参観を認められるのは文化祭のみ。しかも「文化祭に注目が集まりすぎて入場者が多くなると、危険な状況になりかねません。そこで在校生と関係のある方を中心に入場してもらうように制限しています」(和田校長)という。やはりそこは「女の園」。外部の人間が校内に立ち入ることはまず許されない。

強まる医学部志向

 基本的な教育の理念は、「人は神様から命が与えられ、一人ひとりに別々の使命がある。自分を含め一人ひとりの命を大切にする」というキリスト教の精神に基づいている。入信や洗礼は一切強要しないが、週に1時間は「宗教の時間」という授業がある。ひたすらに聖書を読むというよりも、高2や高3になると、平和や環境をテーマにした世界情勢などについて考え、互いに意見を出し合い、「自らのミッションは何かと自問自答し、先のキャリアを考えるのが狙いです」(和田校長)という。

 17年の雙葉高校の合格実績は、東大が14人、京都大学が3人、国公立大学医学部は17人(防衛医科大学校を含む)。早稲田大は70人、慶応義塾大学は49人、隣の上智大は32人だ。「大学名ではなく、将来のキャリアで考えて選択する子が少なくないです。お医者さんの子供が多いからか、医学部には私立を含め30人ぐらい合格しますね」(和田校長)という。東大合格者で女子校トップの桜蔭高校も医学部志向が強いが、雙葉も東大よりも医学部を目指す生徒が増えているようだ。

仏語で東大受験も

 伝統的な特長は語学だ。かつては外国人のシスターがたくさんいた。現在はゼロになったが、小学校1年生から会話中心の英語の授業をしている。中学入学組で英語力が一定の水準に達していない生徒は1年間は別クラスとなるが、外国人教師によるスピーキングなどの授業を積極的にやっているため、すぐに慣れるという。

雙葉中学・高校の和田紀代子校長

 フランス語の学習を重視しているのも特徴だ。フランスの修道会が母体のため、中学3年生は仏語が必修。高校生になっても、第1外国語として1学年の10%弱が仏語を履修し、大学受験にも臨む。仏語で東大を受験する生徒もいる。ただ、2020年には大学入試改革が実施される。和田校長は「英語にはスピーキングテストを課すといわれますが、仏語のテストがどう変わるのかまだ分からないので心配です」と話す。

 数学など理系科目の授業にも熱心だ。和田校長は数学教師として40年間教壇に立ったが、「数学は授業前の休憩時間のうちに問題の解答を黒板に書いておくように指導してきました。黒板は前だけではなく横にもあります。2枚の黒板が問題で埋まり、効率よく授業を進められます」という。

成績順位は公表しない

 女子校としては全国有数の進学校だが、成績順位は公表しない。数学などは標準、基礎といったようにコース分けしているが、成績をベースにした能力別クラスは編成していない。「人間の価値を数字で判断しないためです。成績トップの生徒は、鼻が高くなるし、逆にトップを守ろうと精神的に追い込まれることもあるでしょう。一方で下位の生徒はあきらめてしまうかもしれません」。順位を非公表として無理に他人との競争をあおらないのが雙葉らしさでもある。「バリバリの受験校だけど、休んでいる生徒のノートをとってあげるとか、性格のいい子が多かった。これも『隣人愛』ですかね」(雙葉OB)という。他人に優しく、親切にするというのが雙葉生のモットーだ。

 卒業生には研究者タイプが多いが、子育てと仕事を両立する人も少なくないという。職業も研究者のほか、医師や弁護士、芸能人など多様だ。アナウンサーの高橋真麻さんや、お笑いタレントのいとうあさこさんもいる。

 芥川賞作家の川上弘美さんもOGだが、最近ではノートルダム清心学園の理事長だったシスター、渡辺和子さんが印象的な存在だ。16年に89歳で亡くなったが、著書の「置かれた場所で咲きなさい」は大ベストセラーになった。かつての雙葉生の生き方を思わせる深みのある言葉だ。

 女子御三家の桜蔭や女子学院と覇を競う雙葉。「コツコツ努力家」の桜蔭生、「自由で自立型」の女子学院生とはひと味違う。上品なお嬢様学校というイメージだったが、校内からは「ファイトー」という大きな声が何度も聞こえてきた。
(代慶達也)[NIKKEI STYLE 2017年9月17日付]

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