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[ career-働き方 ]

スキマ時間は社外で仕事
広がる「コワーキングスペース」

スキマ時間は社外で仕事広がる「コワーキングスペース」

「Basis Point」の机はパソコンと資料を広げて作業しやすい特注品(東京都港区)

 会社の外で仕事をしたいけど、カフェや自宅では落ち着かない――。そんなビジネスパーソンから人気を集めているのが「コワーキングスペース」(共用オフィス)だ。フリーランスや起業家が使うスペースというイメージが強かったが、会社とはひと味違う居心地の良さや設備の充実から、他の業界の人たちとの交流まで魅力は多く、利用者の裾野が広がっている。

打ち合わせや出張中の利用が増加

 「こんな快適なスペースがあるなんて知らなかった」――。JR新橋駅からほど近いビルにある「Basis Point」の新橋店(東京・港)。受付に置いてある「プロフィルブック」をめくると、利用者の感想や自分の仕事のアピールなどが書き込まれていた。貼付された名刺には、個人事業主やベンチャー企業にまざってメーカーや運輸業など大手企業の名前もある。

 室内に入ると、木目調の机やおしゃれなランプ、ゆったりと座れるソファなどが置かれ、カフェのように居心地のよい空間が現れた。もちろん電源や無線通信「Wi―Fi」など仕事に必要な設備もそろい、仕事場として快適に使える。利用していた流通大手勤務の入谷昌利さん(44)は「会社と違う場所で発想を切り替えられ、作業効率が上がった」と満足そうだ。

 名古屋が拠点の不動産会社に勤める男性(42)は月に2~3回、東京出張の際に利用するという。最初の利用は「空いた時間に仕事ができる場所をネットで探して見つけた」のがきっかけ。入店するとメールの添付ファイルなどを確認する。「スマホでも読めるが、机の上でパソコンを見たほうが落ち着いて確認できる」と話す。

 運営するアセントビジネスコンサルティング(東京・港)の北村貴明社長によると、「打ち合わせをする営業マンや、スーツケースを持った出張中の会社員の利用が増えている」という。きっかけは昨年3月、「30分200円(税別)」の利用区分を作ったことだった。従来は月額利用が基本だったが、料金設定を細かく見直したところ、朝の出勤前や外回り中に空いたスキマ時間に利用する人が増えた。

 平日だけでなく週末にも利用する人や、20~30歳代の女性の姿も見られる。今年は都内に3店舗を新規オープンした。来年3月までにJR山手線沿線を中心にさらに数店舗の開店を検討しているという。

「the SNACK」ではクリエーティブな雰囲気を感じられる(東京都中央区)

 日常と異なる雰囲気を売りにするコワーキングスペースもある。銀座にある「the SNACK」(東京・中央)は「クリエーティブな空気を感じられる空間」を掲げる。店内にはアート作品が飾られ、内装も芸術的。普段とはひと味違う場で仕事をすると、思いがけない発想が生まれることもありそうだ。

 2014年の開店当初の利用者はクリエーターらが中心で、「一般の人にはコワーキングスペース自体、『自分の行く場所じゃない』という感覚があったのでは」(運営を手がける大人=札幌市=の五十嵐慎一郎社長)。だが、昨年、3時間1000円の料金プランを設けたところ、会社員が打ち合わせなどに訪れるケースも増え始めた。五十嵐社長は「ビジネスーパーソンも取り込んだ多様性のある場から様々なアイデアを生み出していきたい」と語る。

 コワーキングスペースの数は着実に増えているが、「どこにあるのかよくわからない」という人には、ポータルサイトが便利だ。例えば「cocopo」では、都道府県別や設備の状況などの条件から600店以上を検索でき、評判や特徴などの口コミも見られる。

仲間を見つける場所

「LIFULL HUB」はイベントも開催できるオープンスペースを併設(東京都千代田区)

 ウェブサービス開発のエッグレイ(大阪府豊中市)が同サイトを始めた2年前の掲載件数は300店に満たなかったが、「ここ1年で急激に増えてきた」(同社)。最近は働き方改革の一環で、社外で働く「リモートワーク」を推進する企業も多い。エッグレイの秦博雅社長は「仕事に集中できる場所として注目が高まっている」と話す。

 秦社長はコワーキングスペースのメリットとしてもう1点、「仲間を見つける場所」としての特徴にも注目する。

 不動産情報サービスのLIFULLが今年5月、本社内に開設した「LIFULL HUB」(東京・千代田)は、社内外の交流を活発にするのが狙いだ。改装した本社ビル内の一部のスペースを1時間400円(税別)などの料金で利用できるようにした。

 仕事に集中しやすい独自のオフィス設計に加え、カフェも開放。この結果、起業家やフリーランスに加え、近隣にオフィスがある企業の社員らも集まってきた。同社は社員や外部の利用者の交流の機会も設けており、「人々の出会いを通して新しいビジネスの創出をめざす」という。

 7月には世界各国で共用オフィスを展開して急成長する米ベンチャー、ウィーワークがソフトバンクグループと共同で日本に進出すると発表した。手がける企業が増えることでサービス内容もさらに充実が見込める。

 民泊やカーシェア、ネットのフリーマーケットなど、シェアリングエコノミーへの関心が急速に高まっている。その理由は、出費を抑えられるといった経済性に加え、所有から共有に切り替えることで新しい価値が生み出される効果も期待できるからだ。オフィスの共用もこうした要素を満たしている。シェアリングエコノミーの次の焦点の一つとして注目を集める可能性が高そうだ。
(企業報道部 若狭美緒)[日経電子版2017年9月15日付]

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