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東京芸大が学生をプロデュース
「食える」芸術家を育成
東北芸術工科大は
画家の卵にビジネス知識

東京芸大が学生をプロデュース 「食える」芸術家を育成 東北芸術工科大は画家の卵にビジネス知識
撮影協力:柏の葉イノベーションラボ KOIL

 芸術で身を立てられる学生を育てようと、芸術系の大学が学生への支援を強化している。東京芸術大学は、音楽学部の優秀な学生の演奏音源を音楽配信サービスなどを通じて世界に配信し始めた。私立美大の東北芸術工科大学(山形市)は2018年度、日本画や洋画などを学ぶ学生に作品を広く売り込むためのビジネス知識を教える新たな教育課程を導入する方針だ。「アートでは食べていけない」といわれる中で、各大学がきめ細かいキャリア支援に乗り出す背景を探った。

東京芸大がワーナーと組み音楽配信

 東京芸大は6月、大学が選抜した学生の演奏を収録した音源を「スポティファイ」などを通じて配信し始めた。同大学が学生を支援する背景には受験者数の激減がある。17年度入試の東京芸大の受験者数は約3800人と、10年前に比べ3割以上も減った。

 沢和樹学長は、少子化に加え、バブル崩壊後の日本経済の低迷が続く中で、実学志向が高まったことも要因とみる。「芸術系学部を卒業しても、すぐに食べていけないことから、バイオリンやピアノで期待された子供が小学校高学年の段階で有名中学受験のために楽器をやめてしまう傾向がある」と指摘する。

 東京芸大は、若手音楽家を発掘したい音楽大手ワーナーミュージック・ジャパンと提携し、これまで6月と8月の2回にわたって学生9組の演奏を配信している。中には、今年3月に同大学を卒業し、14年7月にバッハ国際コンクール・バイオリン部門で日本人初の優勝者となった岡本誠司さんの在学中の演奏も含まれている。8月に箏曲(そうきょく)の演奏を配信した同大大学院博士後期課程の村沢丈児さんは、「学生が自分で売り込んでいくのはなかなか難しい」と話す。こうした学生に対し、「世界3大レーベルであるワーナーの力を借りて、優れた才能を芸大が世界に後押ししていく」(沢学長)と語り、今後数年にわたって他の音源も配信していく計画だ。

新カリキュラムでビジネス知識

 美術大学も芸術家を目指す学生への支援を模索している。山形市の東北芸術工科大学は18年度から、日本画や洋画といった「ファインアート」を専攻する大学3~4年生向けの教育カリキュラムの一部を改定する。アートで生きていくために必要なビジネス知識も教える授業を一部の必修科目に盛り込む方針だ。自分の作品のコンセプトや芸術活動などをわかりやすくプレゼンテーションする方法や、税理士から芸術家という個人事業主として必要な法的な手続きも学ぶ。美術の技法だけでなく、アートで生計を立てるノウハウをたたき込む。

 「人工知能(AI)やロボットが発達しているが、芸術的センスは人間にしかない部分だ」と東京芸大の沢学長は指摘する。「これからも世の中には、芸術を学ぶ者にとって貢献できる部分がまだある」と主張し、芸術系の大学の可能性に期待を込める。少子化に直面するなか、学生をきめ細かく支援することを通じて芸術の必要性を広く訴えながら、生き残りを模索している。
(映像報道部 鎌田倫子)[日経電子版2017年9月13日付]

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