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[ career-働き方 ]

ホンネの就活ツッコミ論(34)外国語・国際系学部の就活
~留学アピール、語学以外がカギ

石渡嶺司 authored by 石渡嶺司大学ジャーナリスト
ホンネの就活ツッコミ論(34) 外国語・国際系学部の就活~留学アピール、語学以外がカギ

 今回のテーマは、「外国語・国際系学部の就活」です。20回目で文学部就活24回で理学部就活25回で工学部就活27回目で社会学部28回目で教育学部をご紹介しました。この学部シリーズ6回目ということで外国語・教育系学部についてです。外国語学部や近年急増している国際系学部(国際教養学部など)は、留学を必須とする学部が多数を占めます。こうした学部で大きなポイントとなるのが、留学のアピールです。それから、語学スコアの思い込み、業界・企業の選択、合わせて3点が重要です。

「留学アピールは飽きた」は本当か

 外国語学部や国際系学部と言えば留学です。この留学について、企業サイドからこんな意見があります。いわく、「学生の留学アピールは聞き飽きた」と。これで頭を抱えるのが留学をしてきた外国語学部・国際系学部の学生です。留学アピールが聞き飽きた、となると、何をアピールすればいいのかわかりません。中には、わざわざ留学ネタを引っ込めてしまう学生、さらっとしか書かない学生も出てしまいます。

 先月、関西外国語大学学研都市キャンパス(英語国際学部)の就職ガイダンスで講演した際、この留学アピールについて話したところ、関心を持つ学生が多数いました。「留学アピールは聞き飽きた」とする採用担当者には、何を話せばいいのでしょうか。

 実は答えは簡単で、留学ネタを話せばいいのです。それも留学期間を合わせて。「留学アピールは聞き飽きた」と話す採用担当者に、その内実をよくよく聞いてみました。すると、外国語学部・国際系学部の学生からすれば意外な答えが。

「みんな留学、留学というが、話を聞くと、数週間程度の留学とはほど遠い語学研修レベルのものを留学と言い張っているだけ。それでグローバルだ、何だと言われても空々しく聞こえる」

 外国語学部・国際系学部であれば、数週間程度の期間のものは語学研修ないし短期留学としています。留学と言えば半年ないし1年という長期間のものを指します。私が講演をした関西外国語大学英語国際学部だと、半年(1学期間)英語圏へ留学、さらに全員必須ではないですが推奨として大半の学生が半年(1学期間)中国語圏へ留学します。合計1年もの長期間、留学するわけで、これは就活において大きな武器となります。

 ところが、当の学生は留学をするのが当たり前となっており、それが武器になることをわかっていません。そこに「留学アピールは聞き飽きた」との風説を耳にすれば、留学アピールをやめようか、となってしまうのです。もし、関西外国語大学と同じく、半年以上の留学をしているのであれば、留学ネタを展開するのが一番です。

 その際は、単に「留学しました」ではなく、「合計1年間、イギリスと中国に留学をしていました」「8カ月間、アメリカに留学をしていました」など、留学期間も合わせるといいのではないでしょうか。これで、単なる語学研修レベルのものか、それとも本気の留学だったか、判別が可能となります。「留学アピールは聞き飽きた」とする採用担当者もきちんと話を聞いてくれるでしょう。

TOEICスコアはどれだけ必要?

 留学と同じく、TOEICスコアや語学検定試験なども、外国語学部・国際系学部の学生の間では高レベルが常識化しています。そのため、いざ就活となると、どこまでアピールできるかどうか、判断できない学生が出てしまいます。資格・語学試験については18回でも取り上げましたが、もう1度。たとえば、以前、ある国際系学部で「TOEICのスコアが700点しかない。これで就活は乗り切れるか」と不安がる学生がいました。

 TOEIC700点であれば十分とも言えます。ところが彼が在籍していた大学では800点、900点の学生がごろごろいたとのこと。それから、大手企業の中には、選考参加の学生の大半がTOEIC800点、900点ということもあり得ます。では、TOEIC700点(あるいはそれ以下)の学生がノーチャンスか、と言えばそんなことはありません。TOEICスコアが高くても企業が採用したくない学生、TOEICスコアが低くても企業が採用したい学生、どちらが採用されるか。後者であることは言うまでもありません。TOEICのスコアが高レベルな同級生に比べて劣っているとしても、それだけで就活が不利になることはありません。他の点でアピールすればいいだけの話です。

業界・企業選びをどこまでこだわるか

 外国語学部・国際系学部の学生の就職先と言えば、グローバル企業、それから特に女子学生で多いのが航空業界です。この極端な志望業界選びが時には大きな落とし穴になりかねません。

 まず前者から。留学経験や語学を生かせると言えば、確かにグローバル企業です。ただ、学生によってはグローバル企業をごく少数の大企業にのみ限定してしまいます。これは学生の知識不足もありますが、大学の広報戦略にもやや問題があります。知名度の高い大企業を出さないと宣伝効果が低いと勝手に判断し、優良なグローバル企業でも知名度の低い企業は就職先一覧にすら載せない大学がよくあります。世間一般での知名度は低くても優良なグローバル企業であれば、きちんと就職実績がある、と掲載すべきです。理解ある高校教員は優良なグローバル企業を把握していますし、把握していないのであれば把握させるような広報が求められます。

 話を学生に戻すと、知名度の高い大企業だけでなく、知名度が低くても業界トップシェアを持つなどの優良なグローバル企業も合わせて探すべきでしょう。それから、グローバル企業でなくても、語学力の高さを評価する企業はいくらでもあります。小売・流通であれば急増する外国人観光客に対応できる人材はいくらいても足りません。まして、そうした人材を統括できる人材も同じように必要です。海外に拠点のない商社・メーカーでも、日本にいながら海外の取引先とやり取りする、ということも珍しくありません。わかりやすい有名企業以外にも丁寧に業界・企業研究を進めていけば就活はもっと面白くなるはずです。

 次に、外国語学部・国際系学部の就職先として人気の高い、航空業界について。航空業界志望が悪いとは言いません。ただ、留学や語学の勉強などの苦労に見合うだけのリターンが用意されているか、と言えばやや疑問です。客室乗務員だと、国内線の大手エアラインは正社員化が進んでいますが、海外エアライン、それもアジア系だと、最初は契約社員扱いというところがあります。給料から生活費を差し引けば、日本国内のアルバイトと同じくらい賃金が低かった、という例はいくらでもあります。

 今後、外国人観光客が増えていく中で航空業界も待遇は大きく改善されていくかもしれません。しかし、それを言うのであれば、ホテル・観光業界や鉄道会社なども同様です。むしろ、そちらの方がグローバル人材は不足気味であり、給料等の条件がいい企業も多数あります。そうした企業・業界も合わせて検討した方がいいでしょう。

 外国語学部・国際系学部は勉強熱心な反面、その勉強熱心さが普通となっており、うまくアピールできない学生が多数います。さらに、派手な部分に目が行きがちで、就活でもごく一部の大企業と航空業界にしか注目しないのはもったいないことです。もう少し、広く業界・企業研究をしていけば、就活はさらに楽しく、かつ、好条件の企業が見つかるに違いありません。