日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

チェック! 今週の日経(33)EVに乗り遅れるな 東京モーターショーに見る「大転換」

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック! 今週の日経(33) EVに乗り遅れるな 東京モーターショーに見る「大転換」
EVの「トヨタ コンセプト愛i」を展示するトヨタ自動車のメーンステージ

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は現在、東京・有明の東京ビッグサイトで開催中の「東京モーターショー」の見所とともに、いま自動車業界で起きている「CASE」と呼ばれる大転換の動きに触れたいと思います。

モーターショーでトップが語った戦略は

 東京モーターショーは毎回取材していますが、リーマンショック以降、出展企業が減少し、世界の自動車販売の中心が中国に移ったこともあって、華やかさが年々減っている気がします。特に今回は開催直前に日産自動車の無資格検査問題が発覚し、開幕後にはスバルでも同様な問題が明らかになったことで、いまひとつ意気が上がらない様子です。

 それでも、その年の自動車業界のトレンドがはっきり分かるので、足を運ばないわけにはいきません。今回は「CASE」(コネクティッド、オートノマス=自動運転、シェアリング、エレクトリック)の中でも特に「C」と「E」の展示が目立っていました。コネクティッド(つながる車)については別の機会に譲るとして、各社が展示の中心に据えていたエレクトリック、つまりEV(電気自動車)を見てみましょう。日本経済新聞では報道陣向けの公開(プレスデー)が始まった翌日の10月26日に詳細に報じています。

日本車もEVシフト ホンダは街乗り用、ダイハツも軽で 東京モーターショー27日開幕(10月26日)

 プレスデーでは展示するコンセプトカーや新型車を前に、経営トップが自社の方向性を発表するのが恒例です。ホンダは八郷隆弘社長が「小型のEVを2020年に国内で発売する」と表明しました。今回出展したコンセプトカーの「ホンダアーバンEVコンセプト」をベースにするEVで、短距離の市街地走行を想定しているそうです。

 トヨタ自動車はディディエ・ルロア副社長が「EVが近い将来、重要なソリューションのひとつになることに疑う余地はない」と話し、EV強化の姿勢を明確に打ち出しました。展示しているコンセプトカー「トヨタ コンセプト愛i」はAI(人工知能)が運転をアシストする未来のクルマですが、これもEVです。

「ホンダアーバンEVコンセプト」を発表するホンダの八郷社長

軽自動車にも広がるEV化の波

 軽自動車はどうでしょうか。低価格が売り物の軽では費用のかさむ大容量のバッテリーがネックとなり、これまでEVには慎重とみられていましたが、今回はダイハツ工業、スズキの両社がEVのコンセプトカーを出展しました。ダイハツは床が低く、乗り降りしやすい商用のEVを発表、「どんな消費者にも手が届きやすいEVを提供したい」と奥平総一郎社長が語っています。

 こうした中でも、すでにEVの「リーフ」を累計28万台以上売った実績のある日産自動車の展示は光っていました。メーンステージではリーフのスポーツタイプやコンセプトカー「IMX」を据え、来年発売予定のEVミニバン「セレナe-POWER」も展示するなどEV一色です。「IMX」は航続距離600キロ以上とうたっており、もし市販されれば日本初の本格的EVスポーツカーとなるでしょう。

 各社がこれほどEVに力を入れるのは、自動車産業を取り巻く環境が急速に変わっているからです。ご存知のように今年、英仏両国が2040年以降にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出し、世界最大の自動車市場である中国も深刻な大気汚染対策として同様の政策を採る模様です。将来を考えるとEVやFCV(燃料電池車)が自動車の主流となる可能性は高いでしょう。

「トヨタ コンセプト愛i」はAIが運転者の感情や嗜好を読み運転支援

ダイハツの商用EV「DNプロカーゴ」

立ち遅れ挽回の秘策は「全固体電池」

 しかし、日本の自動車メーカーの当初の反応は鈍いものでした。これまでトヨタ自動車やホンダなどは「EVの本格普及はまだ先」として、エコカーの主力をガソリンエンジンも併用するハイブリッド車(HV)としており、日産と三菱自動車以外はEV開発が遅れていました。しかし世界的なトレンドを考えればEVへの対応を急いで進めざるを得ないのです。

日産自動車の「IMX」は航続距離600キロ以上

 世界市場では、中国に強いフォルクスワーゲンが2025年に世界総販売台数の4分の1にあたる300万台をEVにする方針です。モーターショー会場でも日本での販売が始まったばかりのEV「e-ゴルフ」に注目が集まっていました。スウェーデンのボルボ・カーに至っては、7月に19年以降に発売するすべての車種をEVやHVにすると発表したほどです。こうした動きをみると、日本メーカーのあせりすら感じてしまいます。

 では日本メーカーに挽回策はあるのでしょうか。今回のモーターショーで希望がうかがえたのが、トヨタ自動車が次世代のバッテリー「全固体電池」を20年代前半に実用化する計画を明らかにしたことです。

トヨタ創始者の夢「佐吉電池」 能力2倍の次世代型開発(日経電子版10月25日)

フォルクスワーゲンの「e-ゴルフ」

 全固体電池は現在、EV用電池の主流であるリチウムイオン電池の2倍以上の能力をもつとともに、フル充電までの時間も数分で済むという夢のバッテリーです。これが実際にEVに搭載されれば、航続距離の短さ、充電時間の長さというEV普及のための障害がなくなりそうです。品質の安定や寿命の長さ、そしてコストという実現へのハードルはまだ高いようですが、日本メーカーが世界のEV市場をリードするためには開発が急がなければならないでしょう。

 東京モーターショーは11月5日まで公開されます。クルマ好きの方、自動車業界への就職を考えている方はもちろん、日本の産業の将来に関心がある方もぜひご覧ください。
(研修解説委員 若林宏)