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秋の富士山名所10選
北斎が愛した「赤富士」も堪能

秋の富士山名所10選北斎が愛した「赤富士」も堪能
日本が誇る、世界遺産の富士山。
秋、霊峰を望める有名観光地は大にぎわい。
意外と知られていない名所をランキングした。

 富士山が世界文化遺産に登録されたのは2013年。以来、行楽の秋になると、一大観光地の山梨・河口湖周辺に国内外から観光客が押し寄せるようになった。

 富士見の名所は河口湖や箱根だけではない。各地に知られざる名所がある。1位の山中湖パノラマ台は「富士マニアの写真家の間では有名だが、県内ではあまり知られていない」と山梨県の観光担当者は話す。

 霊峰を愛した葛飾北斎は、朝日を受けてあかあかと照り輝く夏の富士を描いた。「赤富士」である。時代は変わり、気象条件や温暖化の影響で赤富士は秋でも見られるようになった。

 富士山頂に太陽が重なる「ダイヤモンド富士」が有名だが、冠雪の頂に朝日や夕日が当たってピンクに近い姿の「紅富士」もある。四季の移ろいで"変身"する山に人々は魅了され、何度でもその地を訪れる。

 9月下旬、奥庭自然公園で千葉県からきたシニア夫婦に出会った。山中湖畔に泊まったという。「早朝、湖畔から赤富士が見えたの。心が洗われたわ。私だけの富士よ」と女性は話し、写真を見せてくれた。「おらが富士」を見つけるのも旅の楽しみだと知った。

1位 山中湖パノラマ台 740ポイント
山裾染めるワインレッドの紅葉(山梨県山中湖村)
山中湖パノラマ台(山梨県山中湖村)

 眼下に山中湖、その向こうにある梨ケ原を経て富士山頂まで奥行きのある風景を楽しめる。あたり一面が夕日で真っ赤に染まり、そこに山裾を染めるワインレッドの紅葉が重なる幻想的な景色を絶賛する選者が多かった。「富士はもちろん、遠く南アルプスまで楽しめる極上のパノラマ展望台。山中湖近辺を訪れるならぜひ訪れたいスポット」(鬼頭宏和さん)

 山頂に太陽が重なって輝いて見える「ダイヤモンド富士」を「10月中旬に見ることができるのが特におすすめ」(上野裕吉さん)。パノラマ台から湖周辺に戻ればレストランが立ち並び、観光用の水陸両用バスも運行している。富士見以外でも魅力満載だ。

(1)富士急行富士山駅からバスと徒歩で約1時間(2)0555・62・3100(山中湖観光協会)

2位 朝霧高原 710ポイント
ススキとの見事なコントラスト(静岡県富士宮市)

 富士西麓に広がる標高700~1000メートルの高原は、遮るものが何一つなく、大迫力の富士を堪能できる。幹線道路の国道139号はほぼ一直線で、好天なら車窓から円すい形の姿をどこからでも望める。139号から外れて山に近づく県道をたどっていくとさらに迫力は増す。

 秋はススキとのコントラストが見事だ。「道の駅、朝霧高原周辺は、ススキを前景に富士山をどこからでも撮れる」(冨塚晴夫さん)。高原は牧草地帯で、乳牛が放牧される。「牧歌的な富士の展望は他にはない」(渡邊定元さん)。道の駅では乳製品が豊富で、ソフトクリームが名物だ。

(1)JR富士宮駅から道の駅までバスで35分(2)0544・27・5240(富士宮市観光協会)

3位 大観山(だいかんざん) 480ポイント
湖、雲海との幻想的な組み合わせ(神奈川県箱根町)

 観光有料道路「箱根ターンパイク」の大観山駐車場がビューポイント。「眼下に芦ノ湖があり構図的に素晴らしい。時には雲海が広がり、湖と富士、そして雲海の組み合わせは幻想的」(撹上貴裕さん)。雲海は早朝に現れることが多いので、早起きしたり前日夜から現地にスタンバイしたりしてシャッターチャンスを待ちたい。

 「大気の澄んだ秋から冬がベストシーズン。ちょっと足を延ばせば箱根があるため、観光としての要素は富士見の場所として抜群」(田代博さん)。駐車場には観光施設もある。

(1)マイカーやレンタカーが基本だが、JR湯河原駅から駐車場までバスで約50分(2)0465・23・0381(箱根ターンパイク)

4位 奥庭自然公園 450ポイント
金色のカラマツと山肌間近(山梨県鳴沢村)

 富士山中腹にある公園内の遊歩道を300メートルほど歩くと展望台に着く。そこは霊峰の雲の上の世界で「山肌を間近に感じる」(撹上さん)。錦秋になると風雪に耐えた樹齢700年以上のカラマツが金色に輝き、山腹の紅葉とのコラボレーションが見事だ。

 高山植物も豊富で「遊歩道を歩くと高山の自然を学ぶことができる」(入倉博文さん)。展望台へと続く遊歩道の近くに下山道もあるので要注意。道に迷ったら遊歩道のそばにある休憩所「奥庭荘」の主人に尋ねれば、丁寧に教えてくれる。

(1)富士急行富士山駅または河口湖駅からバスと徒歩で約80分(2)0555・85・3900(鳴沢村観光協会)

5位 二十曲峠 390ポイント
標高1150メートルからの「忍野富士」(山梨県忍野村)

 標高1150メートルの峠からの景観は秋がベスト。「高所に位置しており、近くの山の紅葉と冠雪が始まった富士の眺望は絶景。富士も裾野までしっかりと見ることができる」(宇田川友道さん)。忍野(おしの)村からの富士をこよなく愛した写真家、岡田紅陽が名付けた「忍野富士」としても有名。シャッターチャンスは早朝と夕方という。峠までは林道だが「この夏、路肩が整備されアクセスが良くなった」(冨塚さん)。

(1)富士急行富士山駅からバスと徒歩で約80分(2)0555・84・4221(忍野村観光案内所)

6位 田貫湖(たぬきこ) 370ポイント
曇っていても「逆さ富士」(静岡県富士宮市)

 富士は気まぐれ。いつも全景を見られるとは限らない。だが富士箱根伊豆国立公園内にあるこの湖は、曇り程度の天候なら湖面に映る「逆さ富士」を楽しめる。「いつも美しい姿を見せてくれて感動的」(内野昌美さん)。晴天であれば「山裾の紅葉と静かな湖面の美しさが素晴らしい」(久保田賢次さん)。湖畔にはキャンプ場や宿泊施設、立ち寄り湯もある。湖畔一周3.3キロの散策路も足元に優しく整備されている。

(1)JR富士宮駅からバスで約45分(2)0544・27・5240(富士宮市観光協会)

7位 筑波山 350ポイント
関東平野のかなた すっきり全景(茨城県つくば市)

 遠望の霊峰を望める代表的な山だ。「標高877メートルの女体山頂からは遮るものはなく、関東平野のかなた157キロにすっきりとした全景を楽しめる」(田代さん)。東京都心のビル群や果てしなく広がる住宅街を背景にした富士見はこの山ならでは、と選者の多くが推す。「関東平野のスケールの大きさが不思議な感じになる」(四角友里さん)。

(1)男体山頂までケーブルカー、女体山頂までロープウエー(2)029・866・1616(筑波山観光案内所)

7位 達磨山(だるまやま) 350ポイント
駿河湾越しの大パノラマ(静岡県伊豆市)

 山頂途中にある「だるま山高原レストハウス」が撮影ポイントとして有名。「駿河湾と沼津市内の奥に富士山。海越しの風景として素晴らしい」(宇田川さん)。ここからの眺めは1939年、米国で開かれた万国博覧会に大パノラマ写真として出展された。標高約900メートルの登山は「バスが通っているので途中ギブアップしても大丈夫」(四角さん)。

(1)レストハウスまで伊豆箱根鉄道修善寺駅からバスで約30分(2)0558・99・9501(伊豆市観光協会)

9位 高尾山 340ポイント
夕焼けに浮かぶシルエット(東京都八王子市)

 登山でも観光でも魅力満載だが富士見の場所としても評価が高い。「晩秋は太陽が沈む位置が富士山に近いので、夕焼けに浮かぶ富士のシルエットが期待できる」(鬼頭さん)。山頂から見ると、富士山は丹沢山系など重層な山々を従えて鎮座する。「高尾山から大阪・箕面までをつなぐ東海自然歩道で、富士山周辺と直接結ばれていることを知ればより親近感が増す」(上野さん)。

(1)中腹までケーブルカーかリフト(2)042・643・3115(八王子観光コンベンション協会)

10位 水ヶ塚(みずがづか)公園 310ポイント
カエデ20種類 紅葉の共演(静岡県裾野市)

 標高約1500メートル、富士の中腹にある自然公園。最大の火口である宝永火口を望めるのが特徴。夏は富士山ハイキングの起点、秋は紅葉が美しい。「20種類ほどのカエデの紅葉を楽しめる」(渡邊さん)。目の前に広がる大迫力の富士山と多種多様な紅葉の競演は必見。公園駐車場からでも一望できるが、遊歩道で15分ほどの腰切塚展望台からの眺めはまさに絶景だ。

(1)JR岩波駅からタクシーで30分ほど(2)055・992・5005(裾野市観光協会)

◇  ◇  ◇

 ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。名称、所在地。(1)交通手段(2)問い合わせ先電話番号。写真は1、5、10位日本富士山協会、2、3、4位冨塚晴夫、6位保田井建、7位(筑波山)田代博、7位(達磨山)林田甫、9位樋口徹撮影。

 調査の方法 専門家が山梨、静岡、神奈川、長野、東京、千葉、茨城から秋の富士見ポイントを30選出。「全景の美しさ」「周辺も楽しめる」「アクセス」の観点で11人の選者にベスト10を選んでもらい、集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。

 入倉博文(山梨県世界遺産富士山課長)▽上野裕吉(富士急行グループ事業部調査役)▽宇田川友道(昭文社「山と高原地図」編集担当)▽内野昌美(静岡県富士山世界遺産課長)▽撹上貴裕(JTBガイアレック サン&サン事業部課長)▽鬼頭宏和(写真家)▽久保田賢次(ヤマケイ登山総合研究所所長)▽田代博(日本地図センター相談役)▽冨塚晴夫(写真家)▽四角友里(アウトドアスタイル・クリエーター)▽渡邊定元(富士学会会長)

[NIKKEIプラス1 2017年10月14日付、NIKKEI STYLEから転載]

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