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チェック! 今週の日経(34)ソニーの新「アイボ」はブランド再生へののろしか

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック! 今週の日経(34) ソニーの新「アイボ」はブランド再生へののろしか
新型「aibo(アイボ)」発表会でのソニー・平井一夫社長

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回はソニーが先週発表した犬型家庭用ロボット「aibo(アイボ)」の話を取り上げたいと思います。愛らしい動きをするこのロボットをテレビなどで見た方も多いと思いますが、この新「アイボ」にはソニーのブランド再生に向けた並々ならぬ意欲が込められているようです。

AIやクラウド利用でより賢く、愛らしく

 アイボの発表記事は、日本経済新聞ではまず11月1日の夕刊1面で速報として、翌日の朝刊「総合2」面では詳報で、掲載しています。

ソニー、新型AIBO1月発売 犬型ロボに再挑戦

ソニーの新アイボ、飼い主喜ぶ動き習得 AI活用(11月2日)

 今回の「アイボ」は1999年に発売した初代に次ぐ2代目です。初代は「AIBO」と大文字での表記でしたが、2代目はなぜか小文字の「aibo」です。初代はいかにもメカっぽいロボット犬で、動くときもギーギーというモーター音が響きましたが、2代目は静かな滑らか動きで、愛らしさが強調されています。

 「ワン、ワン」「クー、クー」という鳴き声はもちろん、アクチュエーターという振動する部品を首やしっぽなどに配置し、本物の犬に近い動きを再現したそうです。詳しい姿は上記の電子版記事に動画がアップされていますので、見てください。

ソニーの新型「アイボ」は最新技術のかたまり

 最新のAI(人工知能)やクラウドの技術が盛り込まれているのも特徴です。内蔵されたカメラやセンサーを使って、腰や首、手足をどう動かせば「飼い主」が喜ぶかという情報を収集し、クラウド上で集約。AIを使って徐々に飼い主が喜ぶような動きをするようになっているそうです。電池がなくなれば自分でチャージスタンドに向かうというお利口さんです。

 価格は初代より2割ほど安い19万8000円(税別)。ただし、クラウドの利用料が必要となり、3年間分の9万円の一括払いか、月額2980円の36カ月契約が必須というから、スマホのような料金体系ですね。発売は来年1月11日ですが、1日夜に予約を始めたところ、初回分はたった30分で完売したというから、立ち上がりは上々のようです。

なぜ12年ぶりのロボット再参入なのか

初代の「AIBO(アイボ)」初期型。生産中止までデザインも進化を続けた

 初代の「アイボ」は家庭用ペット型ロボットの代表的商品として人気を集め、累計で15万台以上が販売されました。「ウォークマン」や「プレイステーション」のようないかにもソニーらしい他社にはない商品だったのですが、「収益性や成長性に乏しい」として2006年に生産を中止してしまいました。当時は、販売の柱だった大型液晶画面テレビや携帯電話で韓国などアジア企業に追い上げられ、リストラを迫られていた時期。アイボの生産中止はソニー衰退の象徴でもあったのです。

 それが今回なぜ、12年ぶりのロボット再参入となったのでしょうか。そのヒントは新アイボ発表の当日の記事にあります。

ソニーの18年3月期、20年ぶり営業最高益 半導体・ゲーム好調で(11月1日)

 同社は10月31日に、今期の連結営業利益、つまりグループ企業も含めた本業での儲けが20年ぶりに過去最高値を更新する見込みだ、と発表しました。でも稼いだのはかつてのソニーの屋台骨を支えた家電ではありません。最も貢献したのは半導体部門で、これまでの予想より200億円多い1500億円の黒字になりそうとのことです。中心はスマホに使われる画像センサーで、いわば電子部品が収益を支えているのですね。

呼びかけた平井社長に向かうアイボ

 ともあれ、この決算見通しの上方修正は「ソニー復活か」ととらえられ、株式市場ではソニー株が急騰しました。そして直後の新アイボの発表です。アイボの発表会見で、同社の平井一夫社長は、「感動や好奇心を刺激するのがソニーのミッションで、存在意義だ」と強調しました。輝きを失いつつあったソニーブランド復権に向けて、改めて挑戦する強い意思を表明したのです。

 もちろんこの新アイボがソニーの売り上げの柱になることはありえません。同社も誤解を恐れてか、販売目標は未公表です。しかし、独自の製品作りというソニーらしさの復活が本物ならば、そのブランドも往時の力を取り戻すでしょう。それは筆者も含めた多くのソニーファンが待ち望んでいたことでもあります。
(研修解説委員 若林宏)