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次世代通信「5G」に期待
動画配信や自動運転に活用

次世代通信「5G」に期待動画配信や自動運転に活用

 最近、携帯電話会社の記事で5Gって言葉が出てくるわ。一体どんな意味なの。スマホ画面の上の方に4Gと表示されているけど、これが5Gに変わるのかな。そうなると何ができるようになるの。

 第5世代(5G)と呼ばれる次世代通信規格について、奥平和行編集委員に話を聞いた。

――そもそも5Gとは何でしょうか。

NTTドコモは東武鉄道と一緒に東京スカイツリーの超高精細映像を伝送する実験を始めた

 「次世代の無線通信規格です。1980年代の1Gでは用途は通話に限られていました。その後、ほぼ10年ごとに世代交代が起き、90年代に広がった2Gでは携帯電話でメールができるようになりました。ネットが使える『iモード』をNTTドコモが始めたのも90年代です。2000年代に入って、3Gになると音楽配信や画像のやり取りが一般的になりました。また、米アップルのスマートフォン(スマホ)『iPhone(アイフォーン)』が登場しています。現在は4Gとなり、スマホで動画などを楽しめるようになりました」

 「世代交代の度にデータを送受信するスピードが高まっています。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は展示会で、8ギガ(ギガは10億)バイトのハイビジョン(HD)画質の動画をダウンロードするのに3Gでは70分かかりましたが4Gでは7分、5Gなら6秒ですむと説明していました。5Gによりスマホはよりサクサク動くようになるでしょう」

 「5Gではデータを送る際の遅延がほぼなくなり、機械の遠隔操作などに活用するとスムーズで使いやすくなるといわれています。一定のエリアで同時に接続できる機器の数も大幅に増え、こうした特長を生かした新たな使い道についての研究開発も進んでいます」

――どんなことができるようになるのですか。

 「データを遅延なく送れるため、自動運転車の分野での活用が期待されています。高速運転中に前方の車がブレーキを踏み、後続車のブレーキが作動するまでに4Gだと1メートル以上進んでしまいますが、5Gなら数センチメートルに抑えられるといわれています。2017年3月にはトヨタ自動車とNTTが5Gの自動車分野での活用を視野に協業すると発表しました」

 「ロボットの遠隔操作や遠隔手術などにも活用できるでしょう。また、同時接続する能力が高まるため、あらゆるモノがネットにつながる『IoT』の普及を後押しするとの期待が高まっています」

――導入のスケジュールはどうなっていますか。

 「日本は20年の東京五輪に合わせ、サービスを始める目標です。韓国は18年の平昌五輪で一部サービスを開始すると表明しています。米国でも携帯電話サービス最大手のベライゾン・コミュニケーションズが18年の提供を目指しています。ただ、国際規格が決まるのは17年の年末なので、両国とも試験的な意味合いが強くなるかもしれません」

 「国際規格は各国の通信会社や関連機関が話し合って決めます。従来、フィンランドのノキアやスウェーデンのエリクソンなど有力メーカーが多かった欧州主導で決まっていましたが、5Gに関しては中国勢の影響力が強くなっているといわれています。ネット人口が世界一になり、通信会社も力をつけているためです」

――実用化に向けた今後の課題は何ですか。

 「基地局や、大量のデータを流す光ファイバー網の整備などのため巨額の投資が必要となります。英調査会社のIHSマークイットは、米国や中国、日本など主要国で5Gの研究開発や設備の整備にかかる費用が20年から35年まで年間2000億ドル(約22兆円)になると推計しています。莫大な投資に耐えるために通信会社の再編が進むと、競争が弱まって料金が高止まりする懸念が出てきます」

 「これまでは世代交代の度に、iモードやiPhoneといった消費者を引き付けるサービス・機器が普及を後押ししてきました。5Gでは消費者向けの分野に加え、BtoBと呼ばれる企業向けで有力な用途を見つけることが普及のカギを握っています」

■ちょっとウンチク
放送と通信融合に期待
 5Gの普及で議論が進むとひそかに期待されているのは「放送と通信の融合」というテーマだ。スマホの普及により通信回線を経由して送られた動画を視聴するのが一般的になっているが、NHKの番組のネット同時配信ができないなど両者の間には大きな壁があるのが実情だ。
 ただ、5Gの登場で放送と通信の大きな違いのひとつとされている映像や音声を送る際の遅延が大きく改善することで、4Kや8Kなどの高精細な動画は放送よりも通信の方が配信サービスを実用化しやすいとの見方もある。5Gの普及により、10年以上にわたってなかなか進んでこなかった議論が前進し、便利なサービスが生まれることを期待したい。

(編集委員 奥平和行)[日本経済新聞夕刊2017年9月25日付、NIKKEI STYLEから転載]

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