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目指せ!世界変える「変人」(2)ジョブズ氏に触発され活動
多様な生き方できる社会に

目指せ!世界変える「変人」(2) ジョブズ氏に触発され活動 多様な生き方できる社会に
authored by 谷村一成中央大学4年生

 2016年4月5日。故郷の高松への帰省を終えた私は東京行きの夜行バスに乗っていた。いつもはどこでも寝ることができる私だが、なぜかその日だけは寝つけなかった。まるで乗馬している夢でも見ているかのように寝相の悪い隣客のせいで全く眠ることができず、仕方がないので新年度の目標なんかを考えていた。そんな時にふと、「中央大って意外と変な奴多いよな」と思った。そして、その変な奴らを集めたらおもしろいのではと思った。「集めて何しよう? じゃあ授業しよう! そしたら名前は変人学部だ!」突然のひらめきだった。

「授業」のリハーサル後にメンバーと

 夜行バスからそのまま大学に直行した私は、その場にいた何人かの友人を集めていきなり宣言した。

 「変人学部を作ろうと思う」

 あ然としている友人たちに構わず、その場で1週間後の設立宣言と、2週間後の最初の授業実施を決めた。「なんだかおもしろそうだぞ」。友人たちは手分けしてそれぞれが「こいつは変人だ」と思う人に電話した。発起人は一晩で20人近く集まった。ノリと勢いだけで変人学部がスタートした。

「馬鹿にしているのか?」怒る人も

 とはいえ設立準備から最初の「授業」までは、スムーズに進んだわけではなかった。問題となったのは「変人」というワードだ。メンバーに誘った友人からは「俺を変人だなんて馬鹿にしているのか?」と怒られてしまった。大学からは「変人」という名前が教育現場に相応しくないのでは?と言われてしまった。SNS上では危ない学生団体ができたと噂されてしまった。「変人」以外の言葉を使うべきだと友人から、大学から何度も勧められた。

 それでも「変人」というワードにこだわった。私の頭の中にはスティーブ・ジョブズの言葉があった。"Because the people who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do." 一年生の英語の授業で習ったこの言葉。クレイジーな人はクレイジーだからこそ、世界を変えることができる。そんな素敵なメッセージ。このクレイジーの和訳を私は「変人」にした。社会を変える人は往々にして世間一般から見ると「変な人」である。だが、その人たちこそが「変えていく人」なのだ。そんな思いを込めて。そして、そんな「変人」に敬意と憧れを込めて、ポジティブに変人と名乗ろう。

メンバー60人、教職員も応援

活動を支えてくれる教職員のみなさん

 2017年11月現在、変人学部はこの理念を共有する60人を超えるメンバーと、理解ある友人や教職員の皆さん、そして大学に支えられて活動している。ポジティブな「変人」という言葉に多くの方が共感していただき、大変感謝している。

 ところで、設立当初多くの人から同じことを聞かれては困った質問がある。それは、「なぜ変人学部を始めようと思ったのか?」というものだ。おそらく多くの人は、なんらかの問題意識がまずあって、その結果として行動を起こすのだと思う。だが、私の場合はノリと勢いで変人学部を作ってしまった。本当にただただ「おもしろそうだったから」でしかなかったのだ。

 だが、活動を続けているうちに、自分が変人学部を始めることになったのは必然だったと思うようになった。その理由は私のこれまでの人生にあった。

人と違うことが好き

 私は香川県高松市の潮風香る港町で生まれた。フェリーの汽笛で目覚め、家の窓からは瀬戸内海に浮かぶ島々が見える、のどかな環境だった。そんな風土が影響してか、保守的で安定志向で和を重んじる人々が多かった。私はそんな香川の人々が大好きだが、一方でなじめない部分もあった。高知出身の龍馬好きな父と、同じく高知出身でフリーの日本語教師をしていた母に育てられた私は、改革志向で人と違うことが好きで、負けず嫌いなこどもだった。まるで周囲の友人とは真逆な性格。相手が誰だろうとおかしいことはおかしいと言い、自分の意見を次々と言う。問題児扱いを受け、みんなと同じようにするよう叱られる。人と違っていて何が悪いのか?と疑問に思っていた。

 高校卒業後、より刺激的な環境、よりレベルの高い環境を求めて迷わず東京に出てきた。共に東京に出てきた友人は少なく、多くは近距離の関西圏に進学し、地元に残る人も少なくなかった。

地元の友人たちと

 ある時、久しぶりに帰省して地元の友人と再会した。私が東京での生活を話すと、「起業!?NPO!?世界一周!?大学生でできるんだ...?」そんな答えが返ってきた。「みんなサークルやバイトと授業の4年間で終わるし、別に不満があるわけでもなくみんな満足して卒業するよ。」

 私はハッとした。別に友人と私は能力で差があるわけではない。もともと同じ高校だったわけだ。つまり、人は環境に大きく左右されるのだ。もちろん4年間サークルやバイトで過ごすことが悪いことではない。だが、選択肢を知らないことはその人の可能性を潰すこと、とてももったいないことだと感じた。様々な選択肢があり、多様な生き方が肯定される環境の必要さを痛感した。

 さて、自分が通う中央大学はどうだろうか。もちろん個性的な学生生活を過ごしている人はいる。だが、そのような人たちはあまり知られていない。学食でトランプをして、サークルの先輩と付き合って、気づいたら就活になって、あっという間に卒業。一般的中央大生の大学生活だ。なんだかもったいないのでは?これが変人学部を始めることになった私の潜在的な問題意識だった。

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