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[ career-働き方 ]

サステナブルな会社選び(10)誰もが楽しめるまちを想う
三菱地所のCSR 

authored by 「オルタナ」編集部
サステナブルな会社選び(10) 誰もが楽しめるまちを想う三菱地所のCSR 

 この連載では、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」編集部の記者が企業の規模や知名度を問わず、CSR(企業の社会的責任)で先進的な役割を果たし、社会的課題にも積極的に取り組む企業を紹介していきます。企業のCSRやサステナビリティ担当部署で働く若手社会人や社会起業家へインタビューし、「社会的課題を解決する働き方」を様々な角度からお伝えします。

山梨県北杜市の耕作放棄地での農業体験ツアーを実施した

 今回取り上げるのは三菱地所。1890年に政府から東京・丸の内一体の払い下げを受けたことをきっかけに、丸の内エリアをはじめ国内外でまちづくりを行っています。1994年に社会貢献活動理念を策定し、社会貢献活動に精力的に取り組んできました。

 活動が加速したのは2008年。社会的課題の変化とグループ全体での取り組みの必要性を背景に、新たに社会貢献活動基本方針を策定しました。重点分野を「地域社会との共生」、「文化・芸術支援」、「環境保全」、「社会福祉」とし、社会と連携しながら同社の経営資源を生かした特色ある活動を展開しています。今回、三菱地所 環境・CSR推進部で働く長井頼寛さんに、社会貢献活動の事業内容と働きがいについて聞きました。

防災・バリアフリーの先に見据える、魅力あふれるまちづくり

三菱地所の環境・CSR推進部で働く長井さん

 長井さんが働く三菱地所では、防災対策やバリアフリー対応で、様々なひとが集い、憩う、そんな「魅力あふれるまちづくり」を通じて、真に価値ある持続可能な社会の実現を目指しています。

 2017年1月、東京・大手町の「大手町パークビルディング」が竣工したことを機に、同ビル周辺の約3000平方メートルの範囲に環境共生型緑地広場をつくりました。これを「ホトリア広場」と名付け、そのエリアに住んだり、働いたりしている人とともに街をつくる試みとして、在来種や地域種の樹木を植えています。鳥やトンボ、チョウなどの生物多様性にも配慮し、吸蜜植物を植えたり、鳥の巣を設置したりしています。

 「地域社会との共生」「文化・芸術支援」「環境保全」「社会福祉」の4つを重点分野に掲げる同社の社会貢献活動の中で、特に特徴的なのは地域社会との共生を主眼に置く「空と土プロジェクト」と呼ばれる活動です。

皇居の自然との調和を考えた東京・大手町の「ホトリア広場」

 これは、三菱地所グループ社員はもちろん、「大丸有エリア」(大手町、丸の内、有楽町)で勤務する人々を対象にした耕作放棄地での農業体験ツアーです。山梨県北杜市の「NPO法人えがおつなげて」と組み、同市内の耕作放棄地で田植えや稲刈り、さくらんぼやぶどうの収穫を行います。

 2008年から実施したこのツアーは、これまでの参加人数が2000人を突破しました。普段はパソコンに向かって働く社会人にとっては貴重なリフレッシュの機会となり、北杜市にとっては耕作放棄地の改善に寄与しています。

 2017年からは「空と土のプロジェクト」の一環として、「三菱地所グループの森」構想も始まりました。これは、北杜市内で手つかずの状態となっている管理放棄林を再生し、同社グループ内の主な住宅事業会社への木材提供を推進するとともに、社員研修の場としても活用するものです。

 地域での活動が必ずしも本業であるデベロッパー事業に直結するとは限りませんが、CSV(共有価値の創造)として本業を通じて地域に貢献できることを積極的に行っています。

どんな部署でも社会のために働ける。三方よしの仕事をしよう

 長井さんは社会人5年目の27歳。今年4月に環境・CSR推進部へ異動してきたばかりです。入社して4年間は三菱地所レジデンスへ出向し、分譲マンション事業の営業や開発を担当してきました。

 営業ノルマが求められる仕事から、明確なKPI(重要業績評価指標)が設定しづらいCSRの世界へ異動してきたことで、当初は戸惑いがあったとも明かします。異動前は、「働くことは、自分にとっての自己実現でしかなかった」と言い切ります。

 それがCSRを学んだことで、「企業の一員ではなく、社会の一員としての自覚が芽生え、利益追求だけでなく、広い視野と長期的なスパンで物事を考えるようになった」そうです。いまの長井さんにとって仕事は、「子どもや孫などの次の世代が豊かに暮らせるように課題を解決していく手段」に変わりました。「CSRの知識のある状態で住宅の開発に当たったら、まったく違う視点で仕事ができていたのではないか」と語ります。

20代唯一のCSR担当者として若手社員へSDGsやESG投資などを教える

 いまはCSRの勉強をしながら、社会において企業は何を求められているのかを日々考えているそうです。同社の環境・CSR推進部には14人の社員がいますが、平均年齢は40歳。同社には20代は約200人いますが、この部署にいる20代は長井さんだけです。

 だからこそ、長井さんには若手社員へCSR関連の情報を伝えていくことが期待されています。売り上げなどの財務情報ではなく非財務情報を投資指標とするESG投資(E=環境、S=社会、G=企業統治)の潮流や、国連が定めた2030年までに解決すべき17のグローバルイシューをまとめたSDGs(持続可能な開発目標)について、SNSや普段の会話で取り上げ、「企業として何ができるのか」と周囲に投げかけています。

 取材の最後には、これからCSRやサステナビリティ関連の部署で働くことを目指す学生へのメッセージをもらいました。長井さんの言葉からは、「社会のために働く」という意識を持つことが、職種を問わず大切だと気付かせてくれます。

 「どの会社に就職し、どの部署に配属されたとしても、働き方は大きくは変わらないはず。売り手と買い手だけでなく、社会にとってもよい『三方よし』の姿勢で仕事をしてほしい」
(「オルタナS」編集長・池田 真隆)

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