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人気漫画をゲーム化
出版社がVRコンテンツに活路

人気漫画をゲーム化出版社がVRコンテンツに活路

 出版社が仮想現実(VR)を活用したコンテンツ作成に注力している。人気漫画をテーマにしたVRゲームやVRアイドルなどが登場。集英社と小学館は9月上旬、VRコンテンツの体験会「VRフェスタ」を東京都内で開催した。出版不況が続くなか、稼ぐ手段としてVRコンテンツに期待している。

VRフェスタには人気漫画「暗殺教室」のVRゲームなどが出展された(東京都千代田区)

人気漫画「暗殺教室」のVRゲームも

 「どこ! 鍵が見つからない」。薄暗い地下室に閉じこめられ、水がどんどん流れ込んでくる。制限時間内に鍵を見つけて脱出しなければ、水没してしまう。プレーヤーは部屋に置かれた怪しい段ボールなどを探してみたものの、最後まで見つけられなかった。

 これは集英社の人気コミック誌「週刊少年ジャンプ」で連載されていた漫画「デスノート」の世界観を再現したVRコンテンツ。プレーヤーはヒロイン「ミサ」となり、死に神「レム」と協力して脱出を試みる。同社がフェスタに出展し、女性らがプレーしていた。

 目の前で死に神が行ったり来たりするほか、ヘッドホンから水の流れる音が聞こえ、密室に閉じこめられた緊迫感を体験できる。すでに全国のインターネットカフェなどで遊べる。同社は6月、人気漫画「暗殺教室」のパソコン用VRゲームも発売した。

 フェスタには出版社やVRコンテンツ開発会社など約15社が出展した。出版社などは人気のある漫画タイトルの著作権を保有している。ただ、VRコンテンツとして十分に活用できていない。フェスタはそんな現状を打破しようと小学館と集英社が企画し、両社や講談社の社員らが参加した。小学館デジタル事業局の青木岳課長代理は「VRの可能性を感じてもらうことが狙い」と話す。

ドラえもんのひみつ道具「どこでもドア」をくぐると南極が広がる。(c)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2017(c)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 講談社は昨夏、女性3人組のVRアイドルグループ「ホップ ステップ シング!」を本格的に立ちあげた。ゴーグル型の機器を装着すると、アイドルが目の前で歌ったり踊ったりする。オリジナルソングを6カ月に一度のペースで作成しており、現在は3曲ある。

 同社のキャラクターVRチームの松下友一チーフプロデューサーは「VRアイドルは既存のコンテンツに比べて失うものがない。曲づくりを含めてチャレンジしたい」と強調する。21日に開幕する「東京ゲームショウ」に出展し、最新曲を披露する予定だ。同社は人気SF漫画「攻殻機動隊」の世界観を楽しめるVRコンテンツも作成した。

 小学館は3月に公開した「ドラえもん」の映画のPRにVRコンテンツを活用した。ドラえもんのひみつ道具「どこでもドア」を東京スカイツリー(東京・墨田)の特設会場で再現。ゴーグル型の機器を装着した利用者がドアをくぐると、南極の世界が広がる。ドアを開けたときに冷たい風を感じられるほか、南極の氷を踏む感触をクッションで再現した。

 出版市場は縮小傾向にある。出版科学研究所によると、16年の書籍・雑誌の市場規模は1兆4709億円と12年連続で前年を下回った。ピークだった1996年から4割超も減った。一方、電子出版市場は拡大する見通しで、出版社は漫画を中心とする電子書籍の販売に力を入れている。

 米調査会社IDCは日本のVR・拡張現実(AR)関連市場が21年に28億3400万ドル(約3100億円)と、「VR元年」と呼ばれた16年の13倍に成長すると予測している。出版市場が低迷するなか、出版社は保有するコンテンツをVR市場にも投入して稼ごうとしている。今後、紙媒体からVRコンテンツに応用する流れが当たり前となるかもしれない。
(企業報道部 亀井慶一)[日経電子版2017年9月21日付]