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不正の洪水、SNS揺れる
メルカリが登録義務化

不正の洪水、SNS揺れるメルカリが登録義務化

 SNS(交流サイト)やフリーマーケットアプリの運営企業がフェイク(ニセ物)に苦しんでいる。利用者の拡大に合わせて、盗品や不正商品の売買の場になったり、虚偽ニュースで人々が混乱したりする事態が多発。情報をスクリーニングする仕組みや、利用者が何者か分かるようにする規約を設けるなど、対策を強化しているが、フェイクの数があまりに多く、根絶にはほど遠い状況だ。

インスタグラムに投稿されたシャネルのバッグの「パロディー商品」の写真(画像は一部修正しています)

コピー商品、インスタで横行

 若い女性を中心に人気を集めている写真共有アプリ「インスタグラム」。アプリ内の機能で「コピー品」を検索すると、10月12日正午時点で12万3781件の投稿があることが分かった。

 その一つを調べると、シャネル製のようにみえるバッグの写真と共に「最高品質です。送料無料」の文章が投稿されていた。本物か、価格はいくらか、どのように購入するのか、といった問い合わせのメッセージを送ると、2万2000円の「パロディー商品」で、楽天が運営するフリマアプリ「ラクマ」で決済してほしいとの返事が来た。

 実はネットでは今春ごろから「インスタグラムで被害に遭った」との体験談が急増している。ブランド商品の写真にひかれて問い合わせのメッセージを送ると、格安の価格を提示される。指定の方法で代金を払うが、いつまでたっても商品は送られてこない。2週間もすれば投稿主はインスタを退会し行方知れずになる。あるいは商品は送られてくるのだが、それは本物とは似ても似つかない粗悪なコピー商品だ。

 悪質な不正行為は、フリマアプリのメルカリでも起きている。9月、スーパーで万引きした商品をメルカリで出品し現金に換えた大阪府在住の男性2人が窃盗の疑いで逮捕された。10月には、関東地方や福島県の高校で大量の野球道具が盗まれた事件にからみ、窃盗などの疑いで逮捕された男性3人がボールをメルカリで売却した可能性が浮上している。現金やチャージ済み電子マネーといった不正な出品も相次ぎ問題になった。

メルカリ、情報管理を厳格化

 運営企業も手をこまねいているわけではない。メルカリは12日、年内をめどにアプリ利用者の個人情報の登録を義務化すると発表した。ユーザーが初めて出品する際に、住所や氏名、生年月日を入力してもらう。メルカリ側で入力情報と銀行口座の情報を照合し、登録氏名と口座名義が一致しなければ売上金を引き出せないようにするという。

 これまでも売買成立時に個人情報を入力する仕組みはあったが、出品段階に前倒しでの登録を義務付けることで、不正な出品を抑える狙いだ。

 フェイクの洪水に対抗するには、自社のマンパワーだけに頼らない仕組みの構築も必要だ。フェイスブックでは、利用者が虚偽情報を含む投稿や本物のニュースサイトであるかのようになりすます偽ニュースサイトを見つけた場合、クリック1つで報告できるような米国本国の仕組みを海外にも広げようとしている。8月には、試験的に導入していた関連記事の事実確認機能を拡充すると発表。利用者が関連記事に多く触れるようにして、情報の真偽を見極めてもらおうという狙いだ。グーグルでは情報をスクリーニングするアルゴリズムの改善など対策を急ぐ。

銃乱射事件でもフェイクの猛威

 ただ、フェイクの猛威は広がる一方だ。米国時間1日に米ラスベガスで発生した銃乱射事件ではツイッターやフェイスブックで明らかな偽情報が拡散し、運営企業は苦境に追い込まれた。事件とは無関係な人物を犯人と決めつけたり、強引に政治的な思想と結びつけたりする情報が、これらのSNSで飛び交ったためだ。グーグルでは、偽情報を流す匿名掲示板「4chan」を検索結果の上位に表示してしまう不手際があり、フェイクニュース拡散に一役買ったと非難を浴びた。

 詐欺のような営利目的の犯罪行為から、間違った口コミの流布まで全てのフェイクに対処しようとすると、企業だけの取り組みに頼るのは限界があるのは明らかだ。新たな立法措置や専門組織によるネット上のパトロールなどが有効だが、政府など公的機関の参画は、自由な空間として発展してきたSNS・アプリにとっては、自らの事業活動を縛ることになりかねない。悩みは深い。
(石塚史人、新田祐司)[日経電子版2017年10月12日付]

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