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20年後から見る職選び(3)危険地作業や荷物の配送
ドローンが変える人の仕事

20年後から見る職選び(3) 危険地作業や荷物の配送ドローンが変える人の仕事
authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者

 これからは、空に関わる仕事がますます注目されるでしょう。とはいっても、これまでの連載でとりあげてきた航空会社や空港のことを言っているのではありません。ドローンです。

 ドローンは遠隔操作によって、あるいは自律的に空を飛び回る無人航空機のことです。その性能はどんどん向上しており、様々な分野で活用されることが期待されています。すでにその威力を発揮しつつある例としては、山での遭難者の捜索活動があります。捜索側が困難な状況で活動せざるを得ず、二次遭難が懸念されるような場合でも、ドローンであれば空中から即座し、かつ機動的に活動を行うことができます。

テロ対策に期待

ドローンを使ったAED(自動体外式除細動器)の緊急輸送デモ風景

 また、犯人の追跡もより機動的に行われるでしょうし、テロ対策上、監視体制を強化することもできます。

 勿論、現状では、ドローンの飛行に与える天候の影響はまだ大きく、活用度合いは限定的なのは仕方ありません。しかし、もともと軍事目的で開発されてきたドローンですから、我々が目にすることのできる民間用のドローンとは違い、戦闘兵器としてのドローンの能力はすでに相当に高いものと推察できます。その開発は、軍事目的ということであれば、今後も巨額の資金を投入し手急速に進められていくでしょうし、その結果得られる、ドローンをめぐる高度な技術の民間への開放も速やかに進んでいくものと期待できます。

物流業界の救世主

 日本において、特にドローンの活用の可能性が期待されているのは、深刻な人手不足に悩んでいる物流業界です。

 現在、トラックのドライバーの不足は、物流の在り方を根本的に見直さざるを得ないまでに大きな問題になっています。ヤマト、佐川など大手宅配業者は、配送運賃を値上げすることで少しでも状況を改善しようとしていますが、根本的な解決にはなっていません。電子商取引の急激な成長によって宅配需要は増える一方であるのに対して、ドライバーの供給は全く追いつかないからです。運賃の値上げによってドライバーの給与が若干ながら上がったとしても、きつい勤務体系を敬遠してそれほどドライバー志望者は増加しないでしょうし、そもそもトラック輸送事業には零細事業者が多く、独占禁止法の存在もあって、トラック業界が結束して運賃の値上げを図るということもなかなかできないのです。

 トラック輸送業にとって、特に山間地などでは、そこまで行くのに長い時間がかかるのにも関わらず、人口が少ないがゆえに需要が少なく、こうした輸送効率が悪い「へき地」では、現状のままでは、いずれ宅配サービスを打ち切らざるを得ない時がくるでしょう。そうなると、こうした地域での人々の生活は成り立たず、過疎化はさらに進み、地方の衰退は加速されることになります。ドローンは、人に代わって荷物を輸送することで、地域の今後の生活を根底から支え、過疎地域の維持・再生を可能にするものとして大きな期待が寄せられています。まさに地方創生の鍵となるのです。

 現段階では、天候条件に加え、ドローンが運ぶことができる重量の限界、あるいは飛ばせることができる空域の制約などによっても応用範囲が限られていますが、上述したように、これからはドローンの技術も飛躍的に向上し、その活躍範囲も間違いなく拡大していきます。

 シード・プランニングの推計では、2015年の業務用ドローンの市場規模は約30億円程度ですが、2020年には約634億円、2024年には2270億円に達すると予測されています。それほど成長性は高いのです。

法規制など課題に

 このように、ドローンの将来の可能性については積極的に評価できる一方で、今後ドローンが本格的に社会に受け入れられていくためには、安全対策をめぐる法規制など、解決しかなければならない課題も多く存在します。たとえば、危険物をドローンで輸送する場合です。

 トラックの場合とは違い、何でもドローンで運んでいいということになると、空中から危険物を都心に投下させることも可能となり、テロが起こる危険性も高くなってしまいます。そのため、ドローンを操縦することができるための資格要件は、今後、厳しく規定されていくことが予想されます。

 また、プライバシー保護の問題もあります。空中から密かに私生活が覗き見られる、あるいは監視されるということになれば、ただでさえ監視カメラが広範に普及している中、今以上に息苦しい私生活を強いられることにもなりかねません。こうした問題を解決するためにも、ドローンの操縦士、あるいは運営会社に対しては、高い社会的倫理性を持たせ、それを常時確実なものとして履行させるための法的枠組みが必要です。

 そこで、この成長可能性の高い分野にいち早く注目し、ドローンの操縦士、あるいはその管理者としての資格を取得し、経験値を高めていけば、今後安定した収入を見込めるでしょう。すでにドローンの操縦に関しては、国土交通省の認定団体であるDPA(Drone Pilot Association)が認定制度を設けており、それに基づいていくつかのスクールが講習を行っています。しかし、まだ試行的な段階といってよく、今後、国家資格化していく上では相当な制度変更を経ていくことになります。

 というのも、空はますます過密になっていきます。すでに大型航空機とドローンの接触事故は発生していますし、これから「空飛ぶ自動車」が実際に空を飛ぶようになると、ますます空の交通は混雑度を増し、安全な航行のためのスキルが重要となってきます。したがって、ドローンの操縦免許の取得はどんどん難しいものとなっていくでしょう。その変化を予期し、今の取りやすい段階から認定を取得し、キャリアアップを図っていくことが将来のドローンのトップ操縦士として活躍していくための有効な道であると思います。

 そして、ドローンに関しては、それを操縦するという観点だけではなく、やはりドローンを活用したビジネスを起業することを一義的に模索すべきです。すでに述べたように、ドローンが活用できる領域は無限の広がりを持っています。そのため、この分野で先行すれば、成功する可能性は極めて大きいものと思われます。

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