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アパレル業界なぜ苦戦?
バーゲン頻発あだに

アパレル業界なぜ苦戦?バーゲン頻発あだに

 アパレル業界が苦戦しているという話をよく聞くわ。そういえば私がたまに行っていたお店もいつの間にか閉店していた。どうして苦戦しているの。今後の打開策は何かあるのかな。

 今のアパレル業界について、石鍋仁美編集委員に話を聞いた。

 ――アパレル業界が苦戦していると聞きました。

 「バブル経済の頂点に近い1991年、国内アパレル市場は15.3兆円ありました。それが2013年には10.5兆円に落ち込んでいます。百貨店やショッピングセンター(SC)に強い総合アパレル大手5社(ワールド、オンワードホールディングス、TSIホールディングス、三陽商会、レナウン)の16年度の売上高は前年度に比べ1割近く減り、ここ2年間で1600以上の店を閉じています」

 ――どうして苦戦を強いられているのですか。

バーゲンセール頼みの商法は結果的に利益を減らしかねない

 「理由の一つはユニクロなどファストファッションの登場で服が安くなったことです。既存のアパレル企業の服が今までのようには売れなくなり、在庫処分のバーゲンを頻発するようになります。消費者は最初からバーゲンを待つようになったため、服の低価格化が進みました」

 「国内市場に供給される服は91年の約20億点から、今は40億点弱と約2倍となっています。消費を刺激しようと次々に新製品を投入しますが、それがまた余剰在庫となる。結局バーゲンせざるを得ず、金額ベースでは市場が縮小する悪循環に陥っています」

 「『ゾゾタウン』のような通販サイトの台頭も影響しています。ゾゾタウンはブラウスなど単品ごとに検索や比較ができるため、消費者はブランドが提案する世界観より、単品ごとの魅力で服を選ぶようになりました。そのため、アパレル会社は自社ファンをつくりにくくなっています」

 「消費者の節約志向で服離れが進んだ面もあります。総務省の家計調査によると、2人以上の世帯の被服及び履物の年間支出は93年の約28万円から16年は約14万円に減っています。ただし美しさへの関心が消えたわけではなく、化粧品の国内市場は年率3%で伸びています。消費者の関心が服から肌や髪などボディーケアに移っているのです」

 ――アパレル業界以外にも影響が出そうですか。

 「服は本来、粗利の大きい商品です。経済産業省によれば、当初設定した小売価格が1万円の服なら、90年に6000円だった流通段階の粗利が今は8000円に増えています。海外生産で製造費を下げ、アパレルと小売りが利益を分け合ってきたのです。しかしバーゲンの多発でこの利益がどんどん削られているのが現状です」

 「百貨店や総合スーパー、SCは粗利の大きな衣料品が売れていたおかげで経営が成り立っていました。客の服離れで経営が厳しくなっています。今、百貨店や総合スーパーが相次ぎ閉店しています。このままではSCの未来も安泰ではないでしょう」

 ――現状を変える打開策はありますか。

 「世界の衣料品市場は13年の110兆円から、20年には165兆円になるといわれています。日本企業も国内市場にとどまらず、ネット通販も活用し海外市場を開拓する必要があるでしょう。国内ではレンタルや中古品の売買がのびており、この市場に本格的に参入する手もあります」

 「ネットでの直販には各社とも力を入れています。しかし、あるアパレル会社の社長は、店を閉鎖するとその地域でのネット通販の売り上げも減ると取材に答えています。消費者は店の看板や商品を日常的に目にすることでブランドを認知するのです。ネットだけに頼るのではなく、試着などの体験や情報提供の場として店を残し、相乗効果を狙う企業も増えそうです」

 「もう一つ期待できそうなのがスポーツとの融合です。これからは健康に役立つイメージを訴求できるブランドが強みを発揮するでしょう。すでにカジュアルウエアの一部には世界的なスポーツブランドが入ってきています。将来、着心地のよいスーツなどフォーマルの世界にも乗り出してくるかもしれません」

■ちょっとウンチク
服離れ、若者層ほど顕著に
 消費者の服離れは若者層ほど顕著だ。伊藤忠ファッションシステム(東京・港)の吉水由美子マーケティングクリエイティブディレクターによれば、若い世代ほど自分らしさを追うことより快適な居場所を確保することを優先する。そうなると服で周りと差をつけたいという欲は起こらない。むしろ変に目立てば周りから浮いてしまい、損になる。
 安いがおそろいの服で仲間とテーマパークで遊んだり、花火の日には浴衣を借りたり。若者にとって服の役割は、昔のような地位やライフスタイルを表現する手段から、その時の気分を表現し、場の盛り上がりを助ける道具へと変わった。いずれ彼らが社会の主役になる。服を巡るビジネスモデルも大きく変わりそうだ。

(編集委員 石鍋仁美)[日本経済新聞夕刊 2017年10月2日付、NIKKEI STYLEから転載]

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