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「1分プレゼン」極めよう
伝わる話力の磨き方

「1分プレゼン」極めよう 伝わる話力の磨き方

 言いたいことが伝わらない――。日々の仕事を通じ、こんなストレスを感じることはないだろうか。業務報告やプレゼンなど説明力が問われる場面も多い。相手にしっかり伝わるスマートな説明の仕方を専門家に聞いた。

コクヨでは1分での説明を推奨している

 「悪いけど、かいつまんで話してもらえる?」。旅行業勤務の女性(26)は新人時代、職場の先輩にキャンペーンの状況を説明した際、こうダメだしをされた。「伝え漏れが怖くあれこれ盛り込み過ぎた」からだ。後輩から説明を受ける立場になった今でこそそう分析するが、「自分なりに準備したつもりだっただけに少し凹んだ」と話す。

「ていねいに説明」の落とし穴

 「話をわかりやすくするポイントの一つは、いかに余分な事を言わずに聞き手にメッセージを理解してもらうかを考えること」。こう説明するのはコミュニケーションスキルや自己演出力向上セミナーを開催し、「頭のいい説明『すぐできる』コツ」(三笠書房)などの著書があるビーンスター(東京・港)代表取締役の鶴野充茂さんだ。

 鶴野さんによると話が長い人は、ほぼ説明下手という。時間をかけて丁寧に説明すれば理解してもらえると本人は考えるが、実は逆。必要な情報と不要な情報が混在し、何を言いたいのかが不明確になっているのが実態だ。

 とはいえ、伝えたいことがたくさんある場合、必要な情報を選んで優先順位をつけるのは簡単ではない。そこで意識したいのが「相手が聞きたい、聞きやすいと思う順番で話す」(鶴野さん)ことだ。

 自分の話したい点を優先しそうだが、それは避けた方がいい。「伝わらない説明で欠けているのは聞き手の視点。伝え方のテクニックよりまず相手が何を聞きたいかをつかむのが第一」(鶴野さん)。業務遂行の上で、今、必要とされることは何かを、冷静に整理する。

 同時に一文を短くするのも鉄則だ。短い文章の繰り返しが最も理解しやすく記憶に残りやすい。短文にしようとすればおのずと言葉も慎重に選ぶ。「この時、話のキーワードを意識するといい」と鶴野さん、「『つまり、ひと言で言うと』を常に念頭に置くと話に一本筋が通りメッセージもはっきりする」

なんの話か、まず明らかに

 伝わる説明には話の流れ、順序も大切だ。「テーマ→結論→理由が基本」と説明するのはコクヨのスキルパークシニアトレーナーで「コクヨ式1分間で伝わる話し方」(KADOKAWA)などの著書がある下地寛也さん。仕事の場面では過程より結果が重要。起承転結は脇によけ、大切な情報から伝えるだけでもかなりすっきりする。

 下地さんは「何についての話かというテーマが抜けている人が案外多い」という。「××案件の報告です。結論から言うと......」といった言葉があれば相手は聞く準備もできる。話し始めのフレーズとして使えるようにしたい。

 伝え方にも工夫が必要となる。初めに「要点は3つです」「理由は4点あります」など、数を挙げると聞き手の注目度も高まり理解もスムーズになるという。

 相手に伝わる説明を身につけるために、下地さんが提唱するのが「1分プレゼン」。1分間という時間を設定して、きっちり説明する伝え方だ。1分で話せるのは400文字、10文前後。要点を箇条書きした10枚の付箋を分類し、並べ替えながら構成を考えタイマーで時間を測って全体を1分でまとまるように文章化する。大切なのは時間の感覚をつかむことだ。「説明する時は相手の時間を奪っているということを忘れずに」

 この練習で下地さんが勧めるのが、ニュース番組のコメンテーターと一緒にコメントしてみること。テーマも幅広く短時間で伝える訓練になる。家族に聞いてもらい評価してもらえば一層、効果的だ。

 鶴野さんも1分説明の効用を説く。「研修でも簡潔に説明したいとの相談が増えている。『簡潔』な話は聞き手にも負担が少ない。1分程度なら飽きずに聞ける」という。話す側にも現実的でベストな長さだ。1分という時間は短そうだが「相手が話の重要度を判断できるだけの内容を十分に盛り込める」と話す。
(ライター 村樫裕理子)[日本経済新聞夕刊2017年9月25日付、NIKKEI STYLEから転載]

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