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liberal arts-大学生の常識

人生を経済学で考えよう(9)大学生の効果的な英語勉強法って?

人生を経済学で考えよう(9) 大学生の効果的な英語勉強法って?
authored by 慶應大学 中室牧子ゼミ

 こんにちは。慶應義塾大学中室牧子ゼミナールの坂本彩乃です。前回、小学生の英語必修化と英語学習についてお話しました。では、中学から英語を学び始めた私たち大学生は、どのように英語を勉強すればよいのでしょうか。

 今回は、アメリカのケースウェスタンリザーブ大学で第二言語習得を専門に研究されている、世界的な応用言語学者の白井恭弘先生に、「いま大学生の私たちが英語力を上げるためにどうするべきなのか」について、坂本彩乃がお話を伺いました。

◇ ◇ ◇

英語の勉強は「開始時期」よりも「量」

坂本 文部科学省は平成23年度から小学校第5・6年生で、週に一度の外国語活動を必修化しましたが、白井先生はどうお考えですか。

白井 小学校で英語の授業を行うことを含め、早期英語教育には賛成です。英語力を高めるには「どのくらい英語に触れたか」という量が非常に大事です。このため、厳密に言えば、いつ始めたかという「時期」よりは、どのくらい英語に触れたか、という「量」が大事なのです。早く始めれば始めるほど、英語に触れる量は多くなると考えられますから、早く始めることを推奨します。

 もちろん、現在の小学校の外国語学習の授業の質が問題になることもありますが、仮に授業がきちんとデザインされておらず、英語の学力テストの点数を上げることに直結していなかったとしても、早期英語教育はモチベーションを高める効果があることを示す研究が少なくありません。これらのことを勘案すれば、外国語学習の必修化は良いことだと思います。

坂本 大学生の私たちが今から英語力を上げるためには何が必要なのか教えてください。

白井 これは大学生に限ったことではありませんが、英語力を上げるために最も必要なのは大量のインプット(=聞くこと、読むことにより内容を理解する)と少量のアウトプット(=話すこと、書くことにより、言いたいことを伝える)です。どちらか一方ではなく、どちらも必要です。

左から2人目が筆者

 受験英語を勉強しても英語を話せるようにならなかった人が、「受験英語は無駄だ」と言ったりしますが、これは正しくありません。受験英語で学習した単語、文法などの知識は、英語力を高めるために役に立ちます。

 もちろん、それだけでは不十分で、大量のインプット(読む・聞く)と少量のアウトプット(話す・書く)が必要になります。インプットだけでなく、適量のアウトプットをする必要があります。

坂本 大量のインプット理解といっても、文法や単語の暗記、リスニングなどやることが多くてどれから手を付けていいかわからないのですが、何から手を付ければより英語力が上がりやすい、という順番はあるのでしょうか。

白井 一概にどれからやる方が良いというものはありませんが、まずは聞くことから始めるほうがよいと思います。スマホを英語設定にしてしまうのもインプットになるので効果的です。

 また、英語能力を養う上では適性があります。この適性は文法理解をするための「言語分析能力」、音声を聞き取ったり、再生するための「音声認識能力」、単語、熟語などを覚えるための「記憶力」、の3つに分類されます。もちろん全てあればよいのですが、より得意な能力から手を付けることで、モチベーションを保ちやすく、英語の学習を持続しやすいということはあると思います。上記3つのうちどれが一番得意か、好きかを意識して勉強すると良いかもしれません。

坂本 なるほど。一方、アウトプットには具体的にどのような方法があるのでしょうか。

白井 大学生だったら、英語で日記を書いたり、ひとりごとを録音したり、英語を学習している仲間と英語で電話したり、チャットするのはどうでしょうか。iPhoneなら英語設定のSiri を相手に英語を練習するのもいいと思います。まずは意味を通じさせることが大事ですが、余裕があれば正しい文を言うように心がけるといいと思います。

英語の「間違い」は気にしなくていい

坂本 電話やチャットは英語を話す人とやりとりができればいいのですが、相手を見つけることが難しそうです。日記やひとりごとの録音なら手軽にできそうですが、自分一人では間違った英語を使っていても気づくことができないかもしれません。

中室牧子・慶應義塾大学総合政策学部准教授は、教育経済学が専門。著書に『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。最新刊は写真の津川友介との共著『「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)

白井 あまり「間違い」にこだわらないほうがいいと思います。それには2つ理由があって、1つ目の理由は、英語学習においてはモチベーションを保つことがとても重要だからです。特に日本だと、日常生活で英語が使えないと困るという環境ではないので、モチベーションが下がりやすい。そんな中で細かく間違いを指摘されてはさらにモチベーションを下げることになりかねないからです。2つ目の理由は、多くの間違いはインプットを重ねれば自然となくなっていくものだということがわかっているからです。もちろん自分では直しにくい間違いもあり、ときどきは誰かに修正してもらうとより効果的でしょう。

坂本 修正してくれる人がいない場合、自分でできる工夫はありますか。

白井 英文の間違いを無料でチェックしてくれるサイト(例えばLang-8, http://lang-8.com/)があるので、それらを活用すると良いと思います。発音に関しては、Siriに話しかけて通じなかったら発音が悪いのかもしれない、というある程度の判断基準になるでしょう。英語の種類(アメリカ英語、イギリス英語など)まで設定で選べます。それから、自分の本で恐縮ですが、『しゃべる英文法』(コスモピア)という本が、大量のインプットと少量のアウトプットを実現する教材になっていますので、機会があれば手にとってみてください。

坂本 そうした工夫をすれば、手軽に実践できそうです。わたしも引き続きインプットをしつつ、アウトプットもする英語学習をしていこうと思います!
(中室牧子・坂本彩乃)

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