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目指せ!世界変える「変人」(3)専門分野の殻破る交流
こども食堂などに結実

谷村一成 authored by 谷村一成中央大学4年生
目指せ!世界変える「変人」(3) 専門分野の殻破る交流こども食堂などに結実

 「変人学部は学生団体ですか?それとも会社ですか?」よく聞かれる質問だ。いつもそれには「学部です(笑)」と答えているのだが、あえて言うならばコミュニティーだ。

 変人学部は学部長である私以外に、「変人教授」と呼ばれる人たちと、「職員」と呼ばれる人たちで構成されている。

専門多彩な学生「教授」

「職員」とのミーティング風景

 変人教授は、様々な分野で活躍している現役中央大生である。世界一周した旅人、主権者教育プランナー、レストランオーナー、カメラマン、マジシャン、音楽プロデューサー、モデル、プログラマー、研究員、ラグビー選手、ゾウ使いなど、分野は多岐に渡る。普段はそれぞれの分野の活動をしながら、このコミュニティーに属して、「授業」の講師として、学生生活や進路に迷っている学生のアドバイザーとして活躍する。

 一方、職員はコミュニティーの運営役だ。やる気があって変人学部の理念に共感する現役中央大生なら誰でもなれる。このコミュニティーの価値を最大限高めるために、イベントを企画したり、仕組みを作ったりしながら、変人教授たちをまとめ、調整する。
いわば変人教授たちは役者で、職員たちはプロデューサーだ。

 全学部、全学年、多岐にわたる分野。このように変人学部は多様なメンバーで構成されている。だが、このような多様性あふれるコミュニティーを実現するまでは長い道のりだった。

文系と理系のメンバーによるパネルディスカッション

 設立当初は周囲の友人からメンバーを集めたため、国際系や政治系の人に分野が偏っていた。そこで、大学の広報誌やSNS上の学生向けメディアに掲載されている変わった現役中央大生を探したり、友人におもしろい知り合いがいないか聞いてまわったり、時には新歓中のサークルのブースにアポなしで行って、「変人知りませんか?」って声をかけてドン引きされたり。あの手この手で変人を探し、なんとか連絡先を得て、会いに行っては勧誘する日々だった。

イノベーションは多様性から

 こうした地道な活動を繰り返す日々で気づいたことがある。それは、多くの人が自分の専門分野の中だけで生きているということだ。勧誘するたびに、「同じ分野の人には会ってみたいけど、それ以外の分野の人とつるむつもりはない」と言われたのだ。だが、私は異分野間コミュニケーションこそが重要だと説き続けた。

 もちろん同じ分野で集まることは大切なことだ。共通の話題、共通の悩みなどを持っており、互いに互いを「洗練」させることができる。より専門的に、より具体的に。

こども食堂の様子(C-plant提供)

 だが、同じ分野での交流にはできないことがある。それはイノベーションだ。違うものと違うものがぶつかった時に、新しいアイデアや価値観が生まれる。イノベーションは多様性から、カオスな場所から生まれるのだ。同じ分野の人は磁力が強いので勝手に集まる。一方で、自らと違う分野の人と関わることは体力も知力も使い大変だ。そのため、そのようなコミュニティーはなかなか存在しない。だからこそ意義があると思うのだ。

「こども食堂」開始

 実際に変人学部から化学反応が生まれつつある。2016年9月30日に設立されたC-plant。日野市で地域の拠点となる「こども食堂」を毎月一回開催している。この団体が生まれるきっかけとなったのが変人学部であった。もともと子供の貧困問題を専門としていた桒原元芳さんとまちづくりが専門だった八鍬あゆみさんが出会い意気投合。そして、そのこども食堂の会場を提供しているのが稲村行真さん。古民家鑑定士として日野市の古民家「ヒラヤマちべっと」を管理している。C-plantの広報として活躍しているジャーナリズムが専門の田崎陸さんも含め、この4人は全員変人学部で出会ったのであった。C-plantは変人学部で生まれたいくつかある化学反応の中で最も成功した例である。現在団体は日野市や企業、地域住民のみなさんの支援を受けながら、こども食堂を運営している。

 異分野間コミュニケーションの面白さは、それぞれの価値観の違いを知り、それらが交じり合うことなのだが、時には互いに違うと思っていたものどうしに共通点があることを見出すこともあり、奥が深い。

てつとさんと大塚流光さんの対談イベントの様子

 シンガーソングライターのてつとさんとマジシャンの大塚流光さんの対談イベントを企画したときのことだ。打ち合わせの時、私の思い付きで対談することになった2人は正直困惑していた。音楽とマジックでどんな会話ができるのか見当がつかなかったからである。会話の口火を切ったのは大塚さんだった。曲づくりの際に考えていることについての話がはじまった。そこから対談は正直私が予想しなかった方向へと向かった。

 マジックにも一連のストーリーがあり、表現として組み立てているという話から、お互い手段は違うけど表現者であるという共通点を見つけた。そこから表現論が盛り上がり、最終的には大学教授の講義方法や学生のプレゼンテーションの仕方にまで話が発展したのだった。

 「人前に立つすべての人はステージに上がるという意識を、パフォーマーとしての意識を持つべき」。私がこの対談で最も印象的だった言葉だ。音楽とマジックという特殊な分野の話がこれほどまで普遍的な真理にたどり着くとは思ってみなかった。これも化学反応だと私は思う。
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