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発信! 理系女子(20)「ミジンコに一目惚れ」と面接で答えた私

発信! 理系女子(20) 「ミジンコに一目惚れ」と面接で答えた私
authored by 東北大学サイエンス・エンジェル

 こんにちは! 東北大学サイエンスエンジェルの丸岡奈津美です。私は大学院の生命科学研究科に所属していて、現在修士1年生として日々、研究や講義にいそしんでいます! 今回は私の研究しているミジンコの話、そしてどうしてミジンコ研究の道を選んだかというお話をしたいと思います。

初めて顕微鏡で観察したミジンコ

 突然ですが...みなさん、ミジンコってご存知でしょうか? 中学校の理科の授業で、顕微鏡を使って観察した! という方もいるかもしれません。ミジンコは、水中を泳ぐとっても小さな生き物です。私の研究室で扱っているテーマは湖や干潟といった水環境の生態系なのですが、その中で私はミジンコを研究しています。

 まずはミジンコの紹介をします。ミジンコは体長およそ2mmの動物プランクトンで、肉眼でも泳いでいるのが見えるくらいの大きさです。植物プランクトンを食べて生きていて、水温にもよりますがおおよその寿命は1か月あるかないかくらい。分類的に見るとミジンコは甲殻類で、カニやエビと同じ仲間です。

あだ名は「ミジンコちゃん」

湖にボートを出してサンプリングします(著者は中央)

 また、ミジンコと一口に言っても意外といろんな種類がいて、マルミジンコやシカクミジンコ、ゾウミジンコなどなど、見た目そのままに和名がつけられたものが多く、なんだかもう少し考えてあげたらよかったのに・・・と思ってしまいます。

 さて、私はこんな生き物を使って毎日実験をしているわけですが、「どうしてミジンコ?」とみなさん思っているかもしれません。ここからは、私がどうして今の進路を選んだのかという話をしたいと思います。

 私が今の道に進むことを考え始めたのは、中学1年生の春です。早い! どうしてかと言いますと、理科の教科書に載っていたミジンコの写真を見て、一目惚れをしてしまったからです。

凍った湖の上でも穴を開けてサンプリングします(筆者は一番右)

 「...どこに?」とみなさんお思いでしょうが、ミジンコの大きな黒い複眼と、体の中で臓器を懸命に動かして生きている姿に心を奪われてしまいました。めちゃくちゃかわいい!! その後、図鑑や本でミジンコのことを知っていくうちに、すごく身近な生き物なのにわからないことだらけだということに気が付きました。私がこの子のことを暴いてやりたい! そう思い、ミジンコの研究者になることを志しました。みなさんも、好きな人のことは何でも知りたくなってしまいますよね?

ミジンコのメスです ミジンコはほとんどがメスなのです

 中学生の頃は、理科の先生に車に乗せてもらってミジンコを探しに出かけたり、「岩国市立ミクロ生物館」という博物館で行われた「微生物絵画コンクール」でミジンコの絵を描いて最優秀賞をいただいたりしました。高校生の頃は生物部に所属してミジンコの研究をしていたので、友達からのあだ名は「ミジンコちゃん」でした。ちなみに私はかなり背が高い方です(笑)。

 大学はミジンコの研究ができるところを探し、今の研究室を希望しました。東北大学は私にとってはかなり高嶺の花だったのですが、AO入試(生物学科志望なら筆記試験は生物と英語だけ、それと面接試験)という自分の得意を活かせる入試方法があったので、何とか入学できました。面接試験では「どうしてミジンコの研究をしようと思ったの?」と聞かれ、「一目惚れです」と答えて試験官から笑いを取りました。

 それでも、高校生の頃「ミジンコの研究なんかして何の役に立つの?」と言われることも多く、もっと世の中の役に立つような仕事をした方がいいのかもしれないと思うこともありました。しかし、好きなことを仕事にしたいという気持ちが強かったので、たくさん迷った結果、私は今の進路を決め、中学生の頃からの夢を叶えるために毎日研究に励んでいます。

田沢湖で行われた学会の時の晩ごはん(着ているのはミジンコTシャツ)

 研究を始めて、ますますミジンコのことを知っていくと、ミジンコの研究が何の役にも立たないなんてことはない! ということも分かりました。ミジンコが生きているからこそ、ミジンコを餌とする魚たちが生きられるのであって、自然の環境が保たれ、巡り巡って私たちの命を支えてくれています。知れば知るほどミジンコの生態は面白いし、疑問がどんどん湧いてきて、飽きるなんてこともまったくありません!

 今私が取り組んでいるのは、日本に広く生息するミジンコ種の4つのクローン(遺伝子型)集団を使って、集団ごとの日本での分布が何によって決まっているのかを探る研究です。今は競争能力の違いと、水温耐性の違いに仮説を絞って検証しています。温度耐性を調べると、温暖化が進むとミジンコ達の成長はどうなるか、分布はどう変化するかということが予測できます。ミジンコが生きられなければ、生態系を構成する他の生物にも影響を与えてしまうので、意味がある研究だと思っています。

正面から見たミジンコ いつもは横顔なのです

ミジンコの世話は休日なし

 大好きなミジンコを扱っているとはいえ、苦労することももちろんあります。生物を扱う分野に共通することですが、やはり生き物を扱うというのは大変です。餌の入った水を換えるために休日も学校に来なくてはなりませんし、ミジンコには盆も正月もありません。私は去年、大みそかも三が日も、卒業式の日もミジンコに餌をあげに来ていました。でも、もうミジンコなんて見たくない! とは思わなかったのは、私のミジンコに対する愛の力かなと思います。

研究室でニコニコ超会議に出展

 最後になりますが、進学や就職など、いろんな選択を迫られる時、金銭的なことや、人からどう見えるかということ・・・様々な雑念がよぎると思います。しかし、そこでぜひみなさんには、「好き! 面白い!」と思う選択肢を大事にしてほしいです。好きだからこそ一生懸命になれるし、好きでないことを続けていくことは大変です。

 最後まで読んでいただいてありがとうございました! これを機に、私の大好きなミジンコにも興味を持っていただけたら嬉しいです。

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