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チェック!今週の日経(37)通信会社は総合生活産業?
KDDIがイーオン買収

チェック!今週の日経(37) 通信会社は総合生活産業?KDDIがイーオン買収
イーオンの英会話教室
authored by 日経カレッジカフェ 

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は携帯電話会社の戦略をめぐるニュースを取り上げてみましょう。

KDDIが教育事業に参入

紙面
11月23日朝刊

 11月23日朝刊の14ページ、企業1面に次のようなニュースが掲載されました。

KDDI、イーオン買収 数百億円 教育参入、通信と連携(11月23日)

 KDDIは携帯大手3社の一角。イーオンホールディングス(HD、岡山市)は、英会話教室で全国2位の教室網を持つイーオンなどを傘下に持つ企業です。見出しにある通り、大手通信会社であるKDDIが教育事業に参入するというところが、このニュースのポイントです。金額は非公表ですが、数百億円という大型の企業買収になります。「メガキャリア」などと呼ばれる携帯電話会社のビジネスモデルは、スマホや携帯電話の加入者を増やし、さらには通信量を増やして、その通信料金で稼ぐというの基本ですが、KDDIがこのところ強めているのは、非通信事業への出資や買収という動きです。

 今年に入ってからも7月には、コンサートやスポーツのチケット販売大手のぴあの株式を30億円投じて買い増しました。2013年、8億円を出資して資本業務提携を結んでから4年、グループ会社も合わせた出資比率は議決権ベースで11.06%となり、これをテコにauユーザーに音楽ライブやプロスポーツなどのチケットの良い席を限定販売するなどのサービスを一段と拡大していきます。

ぴあとの共同事業
ぴあとの提携では、会員限定の招待コンサートなど魅力的なコンテンツを提供する

 さらに11月に入ると、ライフネット生命保険の株式も16億8000万円使って買い増し、出資比率は25%を超えました。こちらは2015年に資本業務提携を結び、auショップで保険の販売をするといった形で事業展開しています。そして、今度は教育事業というわけです。16年度からの3カ年で成長分野に5000億円を投資する方針も示しており、非通信分野への投資は来年にかけても続きそうです。

 こうした非通信分野の事業を同社では「バリュー事業」と呼んでいます。携帯電話、そしてスマートフォンで獲得した顧客に対して、その生活まわり全般に向けてのサービスを提供していく「ライフデザイン戦略」。これがKDDIが推し進める戦略です。背景には何があるのでしょうか。

伸びが鈍化する通信料収入

 この辺の事情は少し前の記事になりますが、次の記事が詳しく解説しています。

スマホの次より副業 KDDIが上海で訴えた通信業の未来(6月30日、日経電子版)

 携帯電話やスマホ事情に詳しいジャーナリストによる日経電子版のオリジナルコラム「モバイルの達人」という連載の1本です。携帯機器の世界的な見本市で行われたKDDIの田中孝司社長の基調講演に焦点を当ててリポートしています。講演内容は「いかに通信分野以外で稼ぐか」。「データ通信収入の成長は鈍化しつつある。また、日本国内では仮想移動体通信事業者(MVNO)による格安スマホが増えている。我々、キャリアは変化しなければならない時期にきている」と、田中社長は発言したそうです。

決算発表する田中孝司KDDI社長
決算発表する田中孝司KDDI社長

 記事によれば、「KDDIのユーザー1人当たりの収入を比べると、2012年と16年で通信収入は0.7%しか増えていない」そうです。これはKDDI1社に限ったことではありません。携帯電話代が高くて消費が伸びないという議論が出て、政府主導で「値下げ要請」が検討されたこともありました。通信料が増えてもそれを価格に転嫁しにくくなっており、どのキャリアも通信料収入が上がらなくて困っているというのが、世界のメガキャリアの実情です。そこでどうやって稼ぐ力を伸ばしていくか。これがKDDI、そして多くのキャリアが直面している経営課題なのです。

 KDDIのコンテンツやサービスによる収入は、同じ12年と16年で比べると、11%も伸びているということです。まだ、全体の売り上げの9%にすぎませんが、こちらの方が伸ばす余地が大きいのはいうまでもありません。

 田中社長はこの戦略を進めるカギとなるのが「個人認証の仕組み」と見ています。KDDIはユーザーに「au ID」を発行して様々なサービスに活用しています。ユーザーの生活に関連する様々なサービスを提供しつつ、au IDによってそれらを一つに関連付ける。こうしたユーザーを囲い込みを進めることで、稼ぐ力を伸ばしていくのがKDDIの考える「ライフデザイン戦略」です。

 チケットや保険の販売ばかりか、ネット専業銀行のじぶん銀行もすでに展開済みのKDDI。競合の多いネット通販でも、16年12月にDeNAの運営するEC事業「DeNAショッピング」を買収し、同社と共同で運営していた「auショッピングモール」と統合するなど、てこ入れを進めています。既存の生活サービスを通信とITを使って、どのように快適に提供できるか。あらゆる生活サービスの入り口として存在感を高めるスマホが開く未来は、通信会社というインフラ企業も生活企業へと変わっていかざるを得ないようです。

(企画委員 水柿武志)

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