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お悩み解決!就活探偵団201810月に就活説明会?
大学が先走るのはなぜ

authored by 就活探偵団'18
お悩み解決!就活探偵団2018 10月に就活説明会?大学が先走るのはなぜ
(写真はイメージ)

 来春卒業予定の大卒内定率は10月1日に92.7%(ディスコ調べ)と、同時期で過去最高を記録した。学生にとって超売り手市場にみえるがなぜか大学は焦っている。通常より5カ月も早く企業説明会を開いたり、1~2年生の就活指導に乗り出したりするところも。「学業優先」を訴えてきたはずの大学が、なぜみずから就活準備の前倒しに動くのだろうか。

イラスト=篠原真紀

12月までに120社が参加予定

 「まさか内定が取れるとは思わなかった」と打ち明けるのは、就職人気企業ランキングで常に上位に入る大手旅行会社に内定した中堅大学の男子学生Aくん。バブル期の就活を経験した親からは「今は売り手市場だから行きたい会社に入らないと損だ」と言われプレッシャーをかけられていたが、「思い切って受けてよかった」と満足げだ。

 上智大学に通う女子学生Bさんの第1志望はある大手不動産デベロッパーだった。しかしその会社の選考は他の会社より遅いため、内定が取れないときに備える「滑り止め」で試しに20社ほどにエントリー。するとあれよあれよという間に選考が進み、結局大手の飲料メーカーやコンサル、旅行会社など人気企業10社から内定をもらった。打率は5割だ。

 そんな空前の売り手市場なのにも関わらず、早期の就活支援に踏み切る大学が増えている。

 立教大学が10月中旬に実施したインターンシップ(就業体験)に関する合同企業説明会には、休校日にもかかわらず約400人もの学生が集まった。会場では、自分から質問をぶつける熱心な学生の姿もみられた。参加したのは、全日本空輸やユニ・チャームなど人気企業15社。これまで、就活ガイダンスは就活開始直後の3月に集中していたが、今年は10月と大幅に前倒しした。今後、11月からは業界研究などに役立つセミナーを順次開催し、12月までに約120社もの企業が参加する予定だ。

明治大は就活への意識を高めるための手帳を2年生に配布している

授業でも就活指南

 明治大学は、これまで3年生を対象にしていた「就活に関する手帳」の配布を2015年から2年生にも配布し始めた。企業分析の方法や試験対策などを盛り込んだものだが、「充実した学生生活を送ることが納得する就活につながる」(就職キャリア支援センター)と判断。手帳には自己分析や自分史を書かせるページがあり、学生に早い時期から就活を意識させる狙いだ。今夏には1~2年生向けに適性検査試験「SPI」の対策講座も開いた。約100人が集まり「想定を超える盛況ぶりだった」(同)という。

 働くことの意味は、早くから教えなければ間に合わない――。法政大学は、来年からキャリアセンターが中心になり、就労観を育てるための専門的な授業を1、2年生対象に始める予定だ。この授業では、大学で書く論文も、書き方や分析方法によっては就活に役立つスキルになる、ということを教える。学校の授業が就活に役立つとなれば出席率もあがるだろう。「満足のいく就活にするには、早期のキャリア教育が必要」(法政大学キャリアセンター)と指摘する。

 経済原則からいえば、売り手市場なら商品を店に並べて待っていればよいはず。なぜ大学は前倒しに動くのか。

人気企業は「超買い手」

 フェリス女学院大学就職課が興味深い分析をしてくれた。同大によると、今年は航空会社や大手金融など人気企業にチャレンジして失敗するケースが出てきているという。フェリス就職課は、「業界研究をきちんとしないまま、憧れやイメージで志望企業を決める学生が増えている」と分析。そのため、現役社員が職場の雰囲気を伝える講座を開くなど、「理想と現実」の違いをきちんと伝えられるよう指導に努めていると話す。

 売り手市場が進み「内定難民」の心配はなくなったが、「売り手」の言葉をうのみにし、「人気企業でもどこにでも入れる」と高をくくる学生が増えているのだ。

 今年の就活は完全に売り手市場だと思うか?――。ディスコが調査したところ、企業と大学では大きく認識が分かれた。「そう思う」と答えたのは企業では72%だったが、大学のキャリアセンターでは37%にとどまった。大学はそれほど、楽観市況だと思っていないのだ。

 企業の規模ごとにみても認識は違う。リクルートホールディングスがまとめた18年春の大学新卒者の求人倍率は1.78倍。売り手市場の目安とされる1.6倍を4年連続で超えた。ただ規模別にみると、従業員規模300人未満の求人倍率が6.45倍なのに対し、5000人以上の大手企業は0.39倍と「超買い手市場」だ。この傾向は、強まっており、16年春は0.7倍、17春は0.59倍と、2年連続で減少し続けているのだ。大手を目指す学生にとっては、「売り手」は幻想なのだ。

大学のジレンマ

 10月に企業合同説明会を実施した立教大学。15社もの人気企業を集めながら、「採用スケジュールの告知をしたり、個人情報を集めるのはやめてほしい」とクギを刺している。気にしているのは、経団連が指針としている就活ルール。指針では、加盟企業が学生に情報提供を始めていいのは3月だからだ。

 これまで、就活のスケジュールが前倒しになるたびに、大学は「学生の本分である学業に差し障る」と反対の声を上げてきた。一方で有名企業への就職率は大学のブランドを高める。もちろん学生自身のニーズも高まっている。「3年生の夏休みから複数のインターンに参加する学生も増えてきた。もはや3月に合同説明会を開いても遅い」(立教キャリアセンターの市川珠美課長)。大学も、本音と建前の間で揺れている。
(松本千恵、鈴木洋介、潟山美穂、桜井豪)[日経電子版2017年11月7日付]

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