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帰ってきた若者ライダー
ツーリング動画きっかけ

帰ってきた若者ライダー ツーリング動画きっかけ

 オートバイ好きといえば中高年の印象が強いが、最近、若いライダーが急増している。人気はスポーツタイプの250cc(ニーハン)。きっかけはSNS(交流サイト)やツーリング動画。見たことのない景色、爽快感などに触発され、自分でも運転したくなってきているようだ。

1~10月の軽二輪車の販売台数23%増

 全国軽自動車協会連合会によると、2017年1~10月の軽二輪車(排気量126~250cc)の販売台数は4万9472台で前年同期比23%増えた。通年ベースでは4年ぶりの水準に回復する見通しだ。原動力は若者ライダーの増加だ。

東京モーターショーでも250ccのバイクには若者が集まった(ホンダのCBR250RR)

 「『ユーチューブ』をみてバイクに興味を持った。楽しそうだし、車よりずっとスポーティー」。東京ビッグサイト(東京・有明)で10月開かれた「東京モーターショー」で、ホンダの「CBR250RR」を眺めていた高校生2年生2人組はこう話す。大学に入学したら買うつもりという。

 CBR250RRは今年4月の発表から3日間で年間販売目標の3500台を上回る受注があった。価格は75万6千円からと同クラス平均よりも20万円程度高いが、ホンダの販売子会社のホンダモーターサイクルジャパンによると購入層の5割が20~30歳代だ。

 14年末に発売したヤマハ発動機の「YZF―R25」は累計販売台数が約1万5000台で購入者の7割近くが10~30代。最近は10代の購入が特に目立ち、17年上半期は15%が10代だ。

 ニーハンブームは08年に川崎重工業が投入した「Ninja250R」が火付け役だ。250ccは普通二輪免許で乗れ、車検が不要で維持費も比較的安い。1980年代のバイク黄金期に青春時代を過ごした40~50歳代の「リターンライダー」から、最近は若者に広がってきた。

 東京都や神奈川県のライダーを中心に90人超が参加するツーリングのコミュニティー「ヤエーライダーズ」。所属する20歳代の多くがニーハンの新車に乗っているという。「都心は駐車場も高いし、若い人には維持費を考えると250ccが現実的」と主宰者の大塚勇規さん(40)は話す。

 ヤマハ発が17年9~10月に18~29歳を対象に実施したネット調査によると、55.4%がバイクにあこがれを感じるという。高校生のバイク利用を禁じる「3ない運動」や暴走族などで形成された、バイクに対する危ない、怖いといった負のイメージは薄れつつあるようだ。

バイク販売店の雰囲気変わる

 とはいえ50~70万円の買い物は決して安くはない。何が購買につながっているか。

 東京モーターショーの会場にいた若者に聞くと、ユーチューブの番組をよく見て乗りたくなったとの声が多かった。ツーリング関連の動画投稿チャンネル「ANTIBCSC(アンチビクスク)」には6万人、都内の販売店店主がバイクテクニックなどを動画で紹介する「二宮祥平ホワイトベース」は20万人が登録している。写真共有アプリ「インスタグラム」ではバイクのタグが入った投稿件数は73万件と車のタグ(68万件)を上回る。感情や体験が伝わりやすい新たなメディアが若者の消費行動に影響を与えているようだ。

カワサキモータースジャパンの専売店は広い間取りとカジュアルな内装が特徴(プラザ大阪鶴見)

 帰ってきた若者ライダーを取り込もうと、販売店も動き始めている。ホンダや川崎重工は新型のバイク専売店を立ち上げている。カジュアルな雰囲気の店内では、ライダースジャケットなども販売する。川崎重工の販売子会社、カワサキモータースジャパンは音楽フェスでの実車展示や若者向けのファッション誌「RUDO」などに広告を出稿している。「ファッションやアウトドアに興味のある若者にファンになってもらいたい」(寺西猛社長)

 バイクレンタル「レンタル819」を手掛けるキズキレンタルサービス(埼玉県川口市)では利用件数が年1割増で推移している。「普段は250ccに乗っているライダーが大型を借りるケースも目立つ」という。

 ボリュームの多かった50ccの販売が下げ止まらない二輪市場だが、ニーハンを通じた若者ライダーの登場で市場に活気が戻ってきた。かつて多くのライダーが映画「トップガン」をみて、バイクにまたがるトム・クルーズに抱いたようなあこがれが復活しつつあるのかもしれない。
(企業報道部 江口良輔)[日経電子版2017年11月6日付]

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