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日本経済新聞「未来面」
学生からセブン&アイHD社長への提案「訪日客にアプリを提供」

日本経済新聞「未来面」 学生からセブン&アイHD社長への提案「訪日客にアプリを提供」

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回はセブン&アイ・ホールディングス社長・井阪隆一さんからの「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか」という課題について、学生の皆さんから多数のご投稿をいただきました。

【課題編】あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか

井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長

井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長

 皆さんはセブン&アイグループのお店に1日何人のお客様がいらっしゃると思われますか。

 答えは約2200万人(人口の約17%)です。これだけたくさん来店し、しかも、そのお客様は日々変化し続けています。かつてのコンビニは「若者のお店」と言われていましたが、現在のセブンイレブンでは50歳以上のお客様の比率が40%を超え、最大の顧客層です。全体の来店客の男女比では女性が47%にもなっています。

 当然、商品も変化し続けています。冷凍食品やフライドチキン、おでんなどの売り上げは10年前より大幅に増えています。お客様の層が広がり、コンビニの利用方法が変化しているのです。セブンイレブンでは今、創業以来約40年間基本としてきた売り場レイアウトの変更に着手するなど、よりお客様にとって必要な商品やサービスを提供するべく努力中です。

 そこで、すべての読者の方に「あなたの考える理想の小売業の姿は何ですか」と問いかけたいと思います。お客様の立場や目線で「理想の流通サービスを実現するには、どんな機能やサービスが必要なのか」「セブン&アイのインフラをこんな風に使えば、もっと便利なサービスを実現できる」といった、未来の流通サービス像を描いていただきたいと思います。

 私たちにはコンビニ、スーパー、百貨店、専門店、金融など多彩な業態があり、グループ全体で2万店を超す国内店舗網、ネット通販サイト「オムニセブン」などのEコマース、全国に構築してきた物流体制や専門工場のネットワーク、そして数多くの自治体との連携などがあります。これらをもっと有機的に結びつけていくことでさまざまな可能性が広がります。

 例えば、11月からセブン&アイ・ホールディングスはアスクルと組み、生鮮食品のネット通販を東京都内の一部で始めました。これは仕事や家事に忙しい女性を主な客層に、イトーヨーカ堂などで取り扱う生鮮食品やプライベートブランド商品を宅配します。交流サイトの普及、IoTの進展なども見逃せません。もはや実店舗とネットは境目なくつながっています。

 流通サービス業を取り巻く大きな変化に対応し続けるため、私たちは常にお客様から学び、新たな挑戦を続けていきます。赤ちゃんからお年寄りまで、よりいっそう便利にご活用いただける新たな流通サービスを生み出していきます。そのためには商品、サービス、店舗や売り場のあり方など、すべてのお客様の「いまのニーズ」や現状へのご不満に、謙虚に耳を傾けてまいります。いろいろな結びつきを視野に入れた革新的なアイデアを期待しています。
(日本経済新聞2017年12月4日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 隙間時間にアプリで買い物
掛川 拓海(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部3年、21歳)

 今日の日本で時間を気にしなくてよい日はあるだろうか? 会社では会議や締め切りの時間、家では夕飯の支度や子供の送り迎え。常に時間との戦いであり、小売店に買い物に行く時間は短い方が良い。そこで私はスマートフォンアプリと店舗の融合を考えた。通勤や休憩といった隙間時間にアプリを使い、店舗で扱っている商品やサービスを選んでカゴに入れる。それと連動し、店舗ではアプリ内でカゴに入れたのと同じものをそろえてレジで待つ。仕事帰りなどに来店したお客様はそのままレジで会計を済ますだけでいいというシステムだ。店舗に並べられている商品をアプリ内で比較、購入でき買い物時間を短縮することができる。カゴに入れた商品を認識し献立を提案する、といった応用もできるのではないか。毎日する買い物時間や料理の時間を10分でも30分でも短くできたら、あなたはその時間を何に使いますか?

アイデア002 外国人訪日客にアプリを提供
大林 裕貴(高千穂大学経営学部3年、20歳)

 海外から日本へやって来る観光客は、年を追うごとに増え続けている。東京五輪開催を控えるなか、小売店の「おもてなし強化」は喫緊の課題だろう。全国で同じ水準に画一化されたサービスを展開するコンビニチェーンでは、その対策が比較的簡単に進むのではないか。例えばスマートフォン(スマホ)のアプリを使って外国人訪日客へのサービスを強化する。商品にスマホのカメラを向ければ、旅行客の使う言語で商品情報を説明するほか、ハラール認証やアレルギー物質の確認にも使えるようにする。店舗内に無料のWi―Fiを設置すれば、アプリの利用率は高まりそうだ。ただし、コンビニ各社で個別のアプリが必要になってしまうと、逐一インストールしなければならなくなる。可能なら小売り各社が協力し、統一化したアプリの提供を期待したい。言語の壁を感じず、スムーズに、そして快適に買い物できるようにスマホを積極的に活用してほしい。

アイデア003 人々の健康をサポートする存在に
宗友 良諭(慶応義塾大学大学院経営管理研究科1年、36歳)

 小売業は通常、消費者のニーズに応える商売だといわれるが、今後はそれだけでは十分とはいえない。病気のように、人々が望まないことが起きないように対応するのもあるべき姿の一つだろう。例えば、一人ひとりの日ごろの健康状態を把握し、好みに合わせた食事の提供を通じて健康を支援する。このサービスを特に、共働き世帯で個食を強いられている子どもたちに提供できないだろうか。IoTを活用して、来店客の日々の健康や成長の状態をつかみ、体調や好みに応じて量や味付けを工夫した食事を提供する。安心できる食材を使い、栄養バランスにも配慮する。その姿はまるで管理栄養士であり、プライベートシェフのような役割だ。個人のデータは医療機関と連携すれば、きめ細かく健康をサポートできるようになる。その結果、小売業はより多くの人たちの生活を支える「社会インフラ」の役割を果たすだろう。

【講評】井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長

 「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか」との問いに、読者の皆さんから多くのアイデアを投稿いただき、ありがとうございました。身近で親しみやすい小売り業、サービス業を軸にするセブン&アイ・ホールディングスに対し、暮らしやすい社会作りを期待されていると改めて認識できました。また高齢化対策など社会的課題により一層、向き合っていく必要性と使命があると痛感しました。

 今回寄せていただいたアイデアは、今の時代を映すように、AI(人工知能)や、すべてのモノがインターネットでつながるIoT技術を活用したものが多く、関心の高さが表れていると思います。

 まずは「人々の健康をサポートする存在に」です。IoTの時代にあって、健康管理の場として小売業がお役に立てる可能性を示してくれたアイデアで、注目に値します。社会環境と技術革新の変化をうまくとらえていますね。

 「隙間時間にアプリで買い物」は、デジタルと店舗をうまく生かした方法で、利便性のさらなる追求につながる提案です。忙しい日常で時間を節約しながら、日々の買い物ができる仕組みは、働く女性にとっても大きなメリットになるでしょう。献立の提案も時間の節約につながるかもしれません。

 「外国人訪日客にアプリを提供」はぜひとも取り組むべき課題です。セブンイレブンの一部店舗ではスマートフォンで商品を読み取り、その原材料を外国語で表示する実証実験を進めています。今後、ますます訪日外国人が増えることを考えれば、早い段階で実用化したいものです。

 私たちが小売業として取り組むべきことはまだまだたくさんあると感じています。これからもセブン&アイグループの総力を結集して皆さんの期待に応える商品やサービスを提供していきます。
(日本経済新聞2017年12月25日付)

【「未来面」からの課題】
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