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career-働き方

サステナブルな会社選び(11)「環境派」今治タオルのIKEUCHI ORGANICはなぜ成長したか

サステナブルな会社選び(11) 「環境派」今治タオルのIKEUCHI ORGANICはなぜ成長したか
authored by 「オルタナ」編集部

 この連載では、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」編集部の記者が企業の規模や知名度を問わず、CSR(企業の社会的責任)で先進的な役割を果たし、社会的課題にも積極的に取り組む企業を紹介していきます。企業のCSRやサステナビリティ担当部署で働く若手社会人や社会起業家へインタビューし、「社会的課題を解決する働き方」を様々な角度からお伝えします。

 今回、登場していただいたのは「今治タオル」で知られる愛媛県今治市のタオルメーカーのひとつ、IKEUCHI ORGANICです。同社は、「最大限の安全と最小限の環境負荷」を掲げ、事業に使用する電力は100%風力発電に切り替え、厳しい基準をクリアしたオーガニックコットン100%で商品をつくっています。同社はモデルチェンジをしないメーカーとして、ファンの支持を得てきました。IKEUCHI ORGANIC流の成長の秘けつを、池内計司代表に聞きました。

マーケティングはエンドユーザーの声を聞くこと

「お客さんの何気ない言葉も製品に生かす」と言う池内計司代表

――「多品種・小ロット・短納期」は日本の製造業のお家芸と言われてきました。しかし、池内さんはそう考えるのは「大きな間違い」と主張されています。

 メーカーが「多品種・小ロット・短納期こそ生きる道だ」と考えることは間違いだと思います。私がそう気付いたのは1999年でした。その年に自社ブランド「IKT」を立ち上げ、いたずらに流行に合わせたモデルチェンジはせず、作り手の理想を愚直に追求しました。結果として、そうすることで顧客との関係性を構築でき、商品が長く愛されるようになりました。

 私にとってマーケティングとは、エンドユーザーの声を聞くことです。商品に関しては、従業員の意見よりも大事にしています。厳密に言うと、エンドユーザーとは「店に来るお客さん」ではなく、「購入したお客さん」です。商品を買ったことがない人の意見を聞いても意味がないのです。

――エンドユーザーの声をどのようにして聞くのですか。

 こちらから話をしたときのお客さんの目の輝きや反応を注意深く見るしかありません。お客さんに聞けば、求めていた答えが返ってくるはずだと思い込むのは危険です。お客さんは詳細に要望を伝えてはくれません。

 なぜなら、お客さんはタオルを作ることが仕事ではないからです。私は365日24時間タオルのことしか考えていない人間なので、お客さんの何気ない言葉を、想像力を働かせて商品づくりに生かしてきました。

 1カ月に1回ほどの頻度で、東京、京都、福岡にそれぞれある直営店で商品に関する説明会を開いています。説明会では、90分間椅子を突き合わせて商品の品質について話し合います。かなり熱い空間になりますよ(笑)。

事業活動の上で環境に配慮することは当然

使用電力がすべて風力の同社製品は「風で織るタオル」と呼ばれる

――その説明会では環境配慮に力を入れていることも伝えるのですか。

 いえ、環境については話しません。品質だけです。エシカルなプロダクツを販売するときに、「環境のために」や「貧しい人々のために」と情に訴えかけることは、ある意味、発展途上国への差別だと思います。

 商品そのもので勝負すべきと思っているので、商品の環境・社会性については意図的にPRしていません。「エシカル」だから、「フェアトレード」だから品質やデザインは我慢するという考えには賛同できません。私はお客さんから、「良いタオルだね」というひと言を待ち望んでいるのです。

――しかし、御社はグリーン電力証書を購入して、使用電力を2002年から100%風力発電に切り替え、素材も環境や生産者への配慮を徹底しています。そのメリットはどう認識していますか。

 私は日本が高度成長をしていく中で、公害により甚大な被害を受けた実態を見て育ちました。だから事業活動の上で、環境に配慮することは当然だと思っています。PRではありません。

 あえて言うと、大企業の中にはやりたい放題やって、その免罪符として環境活動をしているところもあります。私はそういう企業と同列に見られたくない。だから、環境報告書なんて出したくもないのです。

――事業活動を100%自然エネルギーで行う企業の国際的なイニシアチブ「RE100」もありますが、加盟は考えておられますか。

 そのような組織への加盟は一切考えていません。加盟するにもお金がかかりますし、そんなお金があれば困っている人へワクチンを購入する費用に充てます。

コアなファンを裏切ってはいけない

――昨年6月に阿部哲也社長が就任し、池内さんは代表になりました。今後の事業展開について教えてください。

阿部哲也社長(左)と池内計司代表

 阿部社長にもよく伝えているのですが、うちの特徴はコアなファンがいることです。30~40代のタオル好きの男性が多いです。コアなファンが嫌がることは絶対にしてはいけない。彼らが拍手してくれる商品を作り続けていかなくてはいけません。やろうと思えば、今の当社の安全性の高いイメージを使って安価な商品をつくり、たくさん売ることもできますが、どこかで嘘がばれます。

 嘘というのは、例えば安全性を少し落とした上で、「安全」と宣伝することです。コアなファンは当社が情報を公開する姿勢に拍手をしているので、そういう行為は彼らを裏切ることにもなります。

――将来、CSR関連部署に就いたり社会問題を解決する働き方をしたりしたいと考えている学生へ、サステナブルな会社を選ぶ方法についてアドバイスをもらえますか。

 多くの学生は会社を知るためにはインタ―ネットを使うので、どこの会社もホームページの情報を充実させています。でも、きれいごとしか載せていないので、本音を知ることは難しいでしょう。

 その会社の本音を知りたいなら、本気になってインターンシップをしてみてはどうでしょうか。今は転職がしやすくなっているので、卒業が1年遅れても問題ないと思います。会社の本音を知るためには、覚悟を持って乗り込まないといけません。
(聞き手は「オルタナS」編集長・池田 真隆)

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