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宇宙ビジネスの将来は? ベンチャー台頭、官民で連携

宇宙ビジネスの将来は? ベンチャー台頭、官民で連携

 ベンチャー企業が2017年夏、ロケット打ち上げに挑戦したわね。これから宇宙関連のビジネスに取り組む民間企業が増えるのかしら? 海外ではどんな事業が生まれているの?

 宇宙ビジネスの将来について、吉川和輝編集委員に話を聞いた。

 ――ベンチャー企業が宇宙を目指していますね。

 「実業家の堀江貴文氏が創業したインターステラテクノロジズが17年夏、民間単独では初のロケット打ち上げに挑戦しました。残念ながら失敗しましたが、17年内にも再挑戦する見通しです」

記者会見するアクセルスペースの中村社長(2015年12月、東京都文京区)

 「17年末には、宇宙資源探査を手掛けるベンチャー企業のアイスペースが、インドのロケットで探査ロボットを月に送ります。国際的な民間月面探査レースに、HAKUTO(ハクト)というチームで参加するのです。米グーグルが主なスポンサーで、優勝したら2000万ドルの賞金を獲得できます」

 「超小型衛星を打ち上げる取り組みも始まりました。大学発ベンチャーのアクセルスペースが、一辺60~80センチの衛星を約50基打ち上げ、これらを連携させて地球観測を行おうとしています」

 「エンターテインメントも宇宙規模になりそうです。流れ星のもととなる粒子を小型衛星から放出し、大気圏に突入させて人工の流れ星をつくる計画を、ベンチャー企業のエールが進めています。順調にいけば、19年に最初のイベントが見られます」

 ――海外でも宇宙ビジネスが始まっていますか。

 「日本より海外のほうが進んでいます。中でも先行するのは米国企業です。電気自動車の米テスラ最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏が創業したスペースXは、国際宇宙ステーションへのロケット輸送を担っています。アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾス氏がつくったブルーオリジンも有人ロケットを開発しています。両社はロケットの1段目を再利用するなど、先進的な技術にも挑戦しています」

 「小型衛星の打ち上げも米国は大規模です。数千基の衛星で地球をくまなく取り囲む通信網を築き、モバイル通信や、通信機能を備えるクルマをインターネットにつなぐコネクテッドカーに使おうとしています。地球上に"圏外"の地域はなくなるかもしれません」

 ――なぜ日本は後れを取ってしまったのですか。

 「第2次世界大戦後の一時期、日本では航空・宇宙産業の取り組みが禁止されました。一方、米国や旧ソ連は多額の国家予算を割いて人工衛星やロケット技術を磨きました。旧ソ連が初の人工衛星を打ち上げたのは1957年ですが、日本ではその2年前に長さ数十センチのペンシルロケットの水平発射実験が始まったばかりでした。こうした出遅れに加え、宇宙開発に投じる予算も米ロなどに比べ桁違いに少ないものでした。日本は海外に比べ技術的な蓄積が不足しているのが現状です」

 「ただ、日本企業にもチャンスはあります。最近では技術が成熟し、東京・秋葉原で売っているような手に入りやすい部品でも人工衛星を作れます。以前より格段に低コストで宇宙を目指せるようになりました」

 「これから伸びるのは、人工衛星で集めた膨大なデータを活用したり、宇宙観光を実現したりするサービス関連の宇宙産業だといわれます。米国ではショッピングモールの駐車場の車の数をもとに売り上げや業績を分析する事業も始まりました。日本企業もアイデア次第で、新たなサービスを生み出して国際競争を戦える可能性があります」

 ――政府は宇宙ビジネスを育てようとしていますか。

 「具体的な支援策が出てきました。政府の衛星が収集したデータを民間企業などが活用しやすいよう、手続きや費用を見直す動きがあります。今年、誰でも参加できる宇宙ビジネスのアイデアコンテストが始まりました。惑星探査など先端的な宇宙研究は政府の仕事ですが、地球の近くで実現可能な事業は民間が担うといった形で、役割分担が進みそうです」

■ちょっとウンチク
2030年代に市場規模2倍へ
 宇宙時代の幕開けを告げた旧ソ連の人工衛星スプートニク打ち上げから17年10月で60年。各国の政府主導で進んできた宇宙開発で企業の活躍の場が広がり、この流れは「ニュースペース」(新しい宇宙)と呼ばれている。
 日本もビジネスの環境整備を急いでおり、16年11月に「宇宙活動法」と「衛星リモートセンシング法」が成立。前者は事業者の安全確保のための規制を定め、後者は衛星画像がテロなどに悪用されないよう提供ルールを明確化した。
 内閣府は17年5月、衛星データ利用産業や宇宙ベンチャー育成を柱にした「宇宙産業ビジョン2030」を発表。30年代早期に宇宙産業の市場規模を現在の1.2兆円から倍増させる方針を示している。

(編集委員 吉川和輝)[日本経済新聞夕刊 2017年10月16日付、NIKKEI STYLEから転載]

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