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ダイバーシティ担当者インタビュー ~ トヨタの両立支援制度とは?

これからの女子キャリと生き方(27)

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NIKKEI STYLE

こんにちは。manma の新居日南恵です。今回は、国内最大規模の自動車メーカートヨタ自動車で働く両立社員さんにインタビューをさせていただきました。トヨタは7万人の社員を抱える大企業であり、子育てとの両立をする社員も多く抱えています。そんなトヨタでは、男性と女性そして上司も参加する「産休前セミナー」、未来の女性エンジニア候補を支援する「トヨタ女性技術者育成基金」をはじめとした、トヨタならではのライフキャリア(仕事と家庭を両立させる生き方のこと)をサポートする仕組みが整い定着しつつあります。

今回は、人材開発部第1人事室ダイバーシティ推進グループ長の水野至保さんに社内の両立支援制度、そして水野さんご自身のライフキャリアについてもお伺いしました。

女性活躍推進の背景

――女性活躍の動きがはじまった当初の状況を教えてください。

「トヨタで女性の定着・活躍のための制度整備に本格的に取り組み始めたのは2002年のことです。1992年に総合職での女性採用が始まり、それから10年経った頃です。ちょうど結婚・出産といったライフイベントやキャリアの転機を迎える女性も多く、仕事と育児の両立というところで悩まれる方が多くいました。その頃はやはり両立しながら働くという土壌が社内に整っていないということもあり、その当時はおよそ6%の退社率というのが実態でした。また女性の基幹職(管理職にあたる)もわずか1ケタでした。そんな中、まずは女性の方々が定着して活躍できるための制度や環境を作っていこう、ということで2002年に女性活躍推進のプロジェクトが始まりました」

――女性のものづくりの視点の必要性などからも、女性活躍が推進されているのでしょうか。

そうですね。世間的には車のユーザーの8割は男性と言われますが、実は車を購入する時の意思決定者については男女が逆転しています。購入に関しては奥様の意思を尊重される方が多いようです。そういった状況の中、例えば子育て中の社員だと「この高さだと子どもにも手が届く」などと気づくことも多いですよね。車作りにおいて男女の差はないと思うのですが、色々な利便性を想像しながらモノづくりができるというのは、やはり経験によるところが多いと思います。そうすると多様な経験をした人、多様な視点を持っている人がモノづくりに入っていくということがすごく大事だと思うんです。"いいクルマ"を作るにあたって多様な視点を活かしていくために、その要素として女性活躍というものも必要になると思っています。

両立支援政策について

――2002年当時5.8%あった女性の退職率は、2016年には1.6%にまで減少。女性が働き続けられてなおかつ活躍できる土壌が整いつつあるトヨタの両立支援制度とはどのようなものなのでしょうか。

業所内託児所
トヨタの女性活躍推進のための施策計画は2002年からの「制度拡充」、2007年からの「定着」、2012年にはじまった「定着+活躍」の3つのフェーズに分かれています。2001年からの第1フェーズ「制度拡充」の中で行われたのが、育休・時短制度の拡充などに加え事業所内託児所の設立でした。

「遅い時間や祝日にも子どもを預かってくれる場所が欲しい、というニーズから事業所内託児所は生まれました。急な会議や海外との調整が入ったりするようなこともある中、18時に子どもを迎えに行かなくてはいけないなどの状況があると、達成感を得られるまで仕事をやりきれない。そのような声をはじめとして、遅い時間の保育のニーズがありました。またトヨタでは祝日も会社を開いています。月曜から金曜を通常稼働にして祝日分の出勤はゴールデンウィーク、夏休みや冬休みといった長期の連休を長くお休みするという会社カレンダーになっています。しかしそのようなトヨタのスケジュールに合わせて近隣の保育園も開いているわけではありません。こういった幅広い時間・祝日の運営というニーズがあり、事業所内託児所を作ることになりました」

――都内では、満員電車に子どもを乗せたくないなどの理由から事業所内託児所のニーズが少ない企業も多いですね。トヨタの場合は車通勤がメインとなるという会社・地域事情も大きく関係しているのでしょうか。

「そうですね。社員の中には豊田市以外、例えば名古屋市などの近隣の市域に住んでいる方も多くいます。そうした人たちも含めて皆さん大体30分から1時間以内で車通勤することができますし、利用者の方には車を託児所の近くに停められるスペースを確保していますので、託児所に子どもを預けてそのまま出勤することができます。またトヨタには名古屋、東京にも拠点がありますが、実はそういった場所では託児所のニーズがあまりないんです。その場合はその地域の保育所の情報をお知らせするといった保活のサポートを行うなど、各地域にあった支援のあり方で差別化しながらやっています」

休前セミナー
定着を進めるための制度拡充を目標として行われた第2フェーズを経て、トヨタでは2012年から「定着+活躍」の第3フェーズに着手するようになりました。その中で注目を浴びているのが、夫婦と職場を巻き込んだかたちの働き方改革の一つである「産休前セミナー」です。社内婚率も高いトヨタでは、女性だけでなく配偶者も含めた夫婦双方の仕事と育児のバランスを考える重要性も強く意識されていたようです。

「産休前セミナーには本人と配偶者に加え双方の上司の4人で参加していただいています。女性の出産後の働き方の共有はもちろん、男性のキャリアプランも一緒に持ってきてもらいそれを融合したり調整したりしていきます。互いのキャリアプランについて初めて話すという方もいらっしゃるようで、この機会をきっかけに夫婦で仕事も育児も充実させていくんだという意思確認のきっかけにもなります」

――それぞれの上司も同席するという点が革新的ですね。

「配偶者の方に『奥さんが大変になるんだからしっかりと手伝いなさい。こういう時期は在宅制度を使ってもいいだろうし、育休取ってもいいかもしれないね』というようなお話をされる方もいます。もちろんそれが全てということではないですが、このようなセミナーがきっかけで上司が部下の育児参画に関心を寄せるきっかけになればと思っています」

――産休前セミナーの利用率はどのくらいあるのでしょうか。

「現在は総合職の方に限定していて、その中でも社内婚をされている方については参加必須ということにしており、およそ9割の方が受けてくださっていると思います。年間80組といったところでしょうか」

期復職支援(遠方親族旅費、保育費用補助制度)
女性社員の退職率を下げるだけではなく、さらに活躍も視野に入れた2012年からの第3フェーズ「定着+活躍」。女性のキャリアのサポートをするため早期復職支援も行っています。女性の少ない理系中心の職場ということで気遣いという意味もあり「そんなに早く戻ってきても大丈夫なの?」と女性社員に尋ねる上司もまだまだいるそう。いわゆるマミートラック(子育てのため育休制度などを利用する間に、不本意ながら昇進の道などから外れてしまうキャリアコースのこと)に乗ることなく、早期復職をしたい社員を支えるための仕組みもあります。

「具体的にいうと、例えばお子さんが1歳未満で復職した場合には子が1歳になるまでの間の保育費用を会社が補填する制度や、また様々な地域出身の社員も多いので遠方から親にサポートで来てもらう時の旅費等を会社が支援する制度などがあります。育休期間の延長を望む方々への支援だけではなく、早期に職場復帰される方や頑張りたいという方に対しても、会社としてしっかり応援していきたいということで15年から進めています。その結果、早期復職率は2割から3割近くに上がりました。この制度があることにより早期職場復帰をすることも含めた色んな選択が自身の価値観や状況を踏まえてできるんだというメッセージが届いていると感じています」

これらのような施策を推進してきた結果、トヨタでは2002年にわずかに7人だった女性基幹職も、2017年には155名に増加しています。地に足の着いた取り組みが着実に実行されています。

水野さんのライフキャリア

入社当時から人事のお仕事に携われてきた水野さん。小学1年生のお子さんをお持ちのワーキングマザーでもあります。ご自身の家庭生活から考えたライフキャリアやお仕事のやりがいについてのお話もお伺いしました。

――普段はどのようなタイムスケジュールで働かれたり、ご家族との時間を取られていますか。

「朝は娘の送り出しをしてから、大体9時に会社に来て18時に退社します。そのあと娘を迎えに行って娘と食事をします。子どもと一緒に就寝し、朝方に家事や在宅勤務を行うのがほぼ日課です。夫は関西で勤務しているので、基本的に平日は私が娘と過ごしています」

一見、配偶者と職場環境が離れてしまうことも多いトヨタ社員ならではの暮らし方のようにもみえます。ただ今後は女性の活躍が進むことでこのような働き方、暮らし方も増えてくるのかもしれません。

「私の場合は少し特殊なのかもしれませんが、子どもに持病があったため少し長めの3年間休職させていただきました。子どものそばにいる期間に家族としての関係がしっかりできたので、今は離れてもいても、夫は仕事の合間を見つけては新幹線に飛び乗って帰ってきてくれています。夫が家にいる時は、私に仕事を集中してやれる状況を作ってくれていますし、お互いの状況を踏まえ臨機応変に協力し合う体制が夫と私の中でうまくできているので、夫が家に常にいるという状況ではなくてもそのローテーションの中で補い合えるという風にやれているんだと思います。大事なことは夫婦の負担の比重が5:5になることではなくて、夫婦どちらもが家庭においても当事者であると思えるコミュニケーションを、お互いに気持ちのいい形で支え合うことだと思っています。また、夫も私も在宅勤務を使える環境のため、フレキシブルに両立が成立しているということは大きな要素だと思っています」

――ダイバーシティ推進グループ長自らが両立のロールモデルというのはとても心強いことですね。

「私の例も色々な事例の一つです。ロールモデルって大事だけれども言葉を選ばずにいうと、なんだかすごくプレッシャーになるような気もしています。『あんな人にはなれっこない』って。でもやっぱり人それぞれキャリアに対する考えは違いますし、価値観も置かれている状況も違います。だから誰かを参考にすることはあっても、そのまま真似したりするよりも自分で自分のキャリアに対して意思を持って作っていくということがすごく大事だと思っています」

――「モノづくりは人づくり」というトヨタの普遍的な理念を体現するような人事部でのお仕事でのやりがいについても聞かせてください。

「人事は人に対峙する仕事なので、相手に喜んでいただくことは素直に嬉しいことですよね。また現在行っている仕事では、両立支援をはじめとして世の中に先駆けて色々と取り決めていくこともあったりするので、そういったものについて社会が関心を持って注目をしていただけるということもやりがいの一つでもあります」

「例えばトヨタで考えた仕組みやアイデアが他のいろいろな企業でも取り組まれたりすることで、社会全体が女性活躍について一歩前進するとか、そういうことを感じられたときにすごく良い仕事をしているなと感じるし、逆に頑張らなくてはと思うこともあります。キャリアもライフも充実してというのはある意味すごく贅沢なことかもしれないですが、それぞれの社員が思い描く『幸せ』を実現できるような、人事という仕事を通してそういう会社にしていきたいと思っています」

新居日南恵(におり・ひなえ) 1994年生まれ。東京出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科在学。2014年に"いまの女子大生の手で安心して母になれる社会をつくる"をコンセプトに掲げ、任意団体「manma」を設立。2015年1月より学生が子育て家庭の日常生活に1日同行し、生き方のロールモデルに出会う体験プログラム「家族留学」を開始。

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