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人事部の視点(1)「自己分析ができない」と悩んだら

人事部の視点(1) 「自己分析ができない」と悩んだら
authored by 日経カレッジカフェ×人事部

 みなさん、こんにちは。エリーパワー人事部の玉井亜以子です。エリーパワーは大型リチウムイオン電池の開発・製造、蓄電システムの開発・販売を行っているモノづくりベンチャーです。これまで高知大学の中澤二朗さん、HDE人事部長の高橋実さんが執筆してきた連載「人事部長のひとりごと」は、「人事部の視点」とタイトルを改めて、より幅広い視点から皆さんにメッセージを伝えていきたいと思います。今回から私もこの連載陣に加わることになりました。これからよろしくお願いします。

 今回は、私が就活前の学生さんとお話ししていてよく耳にする質問にお答えしながら、説明していきたいと思います。

3年生のAさんの悩み「自己分析ができない・・・・」

 「もうすぐ就職活動が始まります。まずは自己分析の本を買ってみたものの・・・。全く分析できません。自己分析は大切だっていうし、どうしたらいいでしょうか?」

 「自己分析」は本当に難しいですね。考えれば考えるほど永遠に正解が出ないような気がします。「あなたは、明るくて人を盛り上げるタイプです」や「冷静で理論的なタイプです」と言われても、「時と場合によるし、ひとくくりにされても」と反論したくなります。暗い人が華やかな業界に合わないのか? 明るい人が堅い業界に合わないのか? そんなことはありません。

自己分析は完璧にはできない

 社会人でも自己分析が完璧にできている人は、おそらくいないでしょう。なぜなら、自分は変わっていくし、自分認識できない部分があるため、そもそも完璧が難しいことなのです。他己分析という方法もありますが、現実的に、多くの人からフィードバックを受けるのは難しいし、他人からの評価は、あなたの一面でしかありません。

そもそも自己分析をして自分の何を知るのか?

 それは、自分の価値観を見つけ出すためです。

 では、よく自己分析本にある「今まで頑張ってきた経験」のテーマを使って、具体的にやってみましょう。

・Aさんの今まで頑張ってきた経験:
中・高、大学と10年近くにわたり、バスケ部で朝も放課後も休まずに毎日練習を積んできた。

価値観の見つけ方―比較―

 ここからどうやって価値観を抽出するのでしょうか? まず、事実の部分に着目します。この中での事実は、「バスケ部」「休まずに毎日練習した」。そして、比較を使うことで、事実から価値観を抽出していきます。ここでは「バスケ部」を深掘りしていきましょう。

Q.なぜテニスではなくバスケ?(共通:球技)
→仲間とボールをつないでいき、ゴールを決めることが楽しい。お互いの苦手なところを補いながら、チームで向上することができる。

Q.なぜ野球でなく、バスケ?(共通:チームプレイ)
→試合時間中、常に動いている躍動感のあるスポーツが好き。

Q.なぜサッカーでなく、バスケ?(共通:躍動感)
→1チーム11名だと、仲間も相手もどこにいるのか把握しにくい。1チーム5人だと、全員の動きが把握できる

 バスケという事実に着目し、比較することで、

  • 仲間と協力することが好き
  • チームプレイでお互いを補いながら、向上するのが楽しい
  • フルに頑張ることにやる気を感じる
  • 動きを把握したい

という価値観が抽出されました。

 一緒にバスケ部のメンバーに同じ質問をしても、Aさんと同じ回答になるとは限りません。価値観をたくさんみつけることで、「私ってこんな人なんだ」という自分の輪郭が見えてくるのです。

「人生の選択」からあなたの価値観を見つける

 今回は「今まで頑張ってきた経験」をテーマに取り上げましたが、抽出が簡単なのは「人生の選択」から深堀りすることです。「人生の選択」といっても、大げさなものではなく、

  • 「第一志望の大学を〇〇大学にした理由は?」
  • 「〇〇学部を選んだ理由は?」
  • 「△△サークルに入った理由は?」
  • 「地方大学ではなく、東京の大学を選んだ理由は?」
  • 「留学先を〇〇にした理由は?」

 など、自分自身が選んできた結果にある事実に着目し、比較から深堀りしていけば、自然と自分の価値観が抽出されます。

(例)
Q.法学部を選んだ理由は?
→なんとなく弁護士に憧れていた。

Q.なぜ会計士ではなく、弁護士?(共通点:資格のある専門職)
→ビジネスだけではなく、社会全体に関わる領域の広さがいいと思う

Q.なぜ政治家ではなく、弁護士?(共通点:社会全体)
→仕組みを作るのではなく、社会全体に仕組みをどう適用していくのかという点が面白い

Q.なぜ裁判官ではなく、弁護士?(共通点:社会全体に仕組みを適用する)
→裁判という結果だけに関与するのではなく、紛争になる前のプロセスから関与できる。

 「弁護士」という事実に着目し、比較することで、

  • 社会全体に関わる広い領域であること
  • 社会全体に仕組みを適用していくこと
  • 結果だけでなく、プロセスにも関与することという価値観が抽出されました。

 これらは、業界や会社を探す上でのヒントになるのではないでしょうか。

「人からの評価」ではなく、「事実」に着目

 ここで注意してほしいことは、深掘りする対象は、「人からの評価」ではなく、「事実」であるということ。評価は人からのフィルターが入っているので、どうしても歪んでしまい、客観性に欠けます。必ず「事実」からスタートしてください。

 そして、抽出した価値観を複数並べてみて、重複しているもの・インパクトの強いものがあれば、Aさんらしさを強めてくれる価値観といえます。あなただけの価値観が見つかると思いますので、ぜひ抽出してみてください。

 とはいえ、ここではまだ自分という輪郭を描いただけであり、自分はこうだ!と言える状態にはなっていません。ここまで「価値観」と書いてきましたが、実際にはその前の段階である「価値感」でしかありません。「価値感」を「価値観」に仕上げる方法は、次回お伝えしたいと思います。

 そして、業界研究をテーマに「興味のない業界の研究・会社説明会に行くべき、意外な理由」についてお話しします。お楽しみに。

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