コクヨの花田陽一さん「旅行で多くのものを見て吸収を」
卒業までにやっておくこと2018(5)
今春から働き始める内定者の皆さんに、残り少ない学生生活をどう過ごしたらいいのかを社会人の先輩に聞いてみました。第5回はコクヨの花田陽一さん(33)に話を伺いました。
デザイナーでありながら営業も
――現在の業務内容を教えてください。
「コクヨファニチャー事業本部のデザイナーは一般的にはオフィスがメインなのですが、私はこれまでオフィスが半分、もう半分がオフィス以外を手がけてます。オフィス以外で手がけているのは飲食店や英会話教室、あとは最近流行っている「コワーキングスペース」(共用オフィス)です。入社1年目の3月に社員数300人ぐらいのオフィスを担当してから、平均すると年間5件は手がけているので、これまでに40件近くになると思います」
――どのように仕事を進めるのですか?
「基本的にはお客様の要望を聞いて、それにあわせてデザインしていきます。今は『働き方を変えたい』という要望が多く、機能的なだけでなく空間として豊かな場所を作りたいというお客様が増えています。あとは時間や場所にとらわれない働き方を希望するお客様、自社内に保育所を作る、といった要望も増えています」
「コクヨのデザイナーの特徴的な仕事の進め方があります。それはデザインするだけが仕事ではないということ。他社は営業が顧客の要望などを聞いてデザイナーがデザインして営業が顧客に提案していますが、うちの場合にはデザイナーが顧客から直接話を聞き、デザインをして提案しています。だから、けっこう外出することも多いんです。1週間のうち半分ぐらいはお客様のところに行っていますかね。もうちょっと会社でじっくりデザインの仕事をしたい、と思うこともあります(笑)」
就活は1社受けて終了
――大学ではオフィスデザインを学んでいたのですか?
「出身は京都工芸繊維大学のデザイン経営工学課程なのですが、2年までは建築、デザイン、経営、エンジニアリングを広く浅く学び、3年から研究室に所属します。もともと建築には興味があり、オフィスデザインの世界では第一人者と言われる仲先生の研究室に入りました。ただ、オフィスデザインを専門に学ぶというよりも、人がどう動くかというような行動調査や画像解析などをしていました。また、企業と一緒にプロジェクトや課題に取り組む研究室だったので、住宅や企業のオフィス設計をやったり、プレゼン資料を作ったりと、かなり仕事っぽいことをしていました」
――就職活動はどのように進めたのですか?
「先輩がコクヨに3人ぐらい入っていたので話を聞いていましたが、コクヨを受けたのは選考時期が他社よりも早かったというのが最大の理由です(笑)。エントリーシートを提出した企業は何社かあったのですが、実際に選考を受けたのはコクヨだけ。コクヨ1社を受けて内定をもらったので、就活は修士1年に1社だけ受けて終えることになりました」
研究こそが仕事の準備
――内定が決まってから就職に向けて準備したことは?
「当時、研究室が主催するオフィスに特化した研究会があり、協賛企業20~30社と一緒に研究をしていました。例えば、オフィス環境が働く人のモチベーションにどう影響を与えるかという『オフィス評価』などの研究をしていました。ほかにも、アバター同士でコミュニケーションを取る『バーチャルな環境での仕事の進め方』などをひたすら研究していました。特別に準備したことはないのですが、研究そのものが仕事につながるので、強いて言うなら研究ですね。あとは内定者同士で旅行に行ったり、飲みに行ったりしていました」
――大学生活の過ごし方などで学生たちにアドバイスはお願いします。
「デザインという仕事をしてきて思うのは、いろいろなところに行って多くの物を見て吸収してほしいです。やはり仕事をしているとなかなか旅行に出かける機会はありませんので、時間のある学生のうちに旅行に行くことをお勧めします。特にデザインの仕事をするのであれば必要だと思います。私は京都の大学だったので、歴史的な建造物を目にすることが多かったのは良かったです」
「あとは語学、英語ですね。デザインの世界では英語による情報量が圧倒的に多いんですね。写真は見ることができますが、その意図は文章を読まないと理解できない部分もあります。オフィスはやはり海外の方がさまざまな取り組みをしているので、新しい情報を吸収するに語学力はあったほうがいい。建築系に限った話ではありませんが」
愛着を持たれるオフィスを提案したい
――花田さん自身の今後の仕事での夢があればお教えください。
「働いている間のかなりの時間をオフィスで過ごしているにもかかわらず、オフィスに愛着を持っている人って少ないんですね。これからはオフィスも1つの居場所として働いている人が愛着を持ってくれるといいなと思います。自宅の部屋は片付けるけど、オフィスの机は書類だらけみたいな。オフィスデザイナーとしては愛着を持ってもらえるような魅力あるオフィスを提案していきたいと思います」
(聞き手は渡辺茂晃)
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