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チェック! 今週の日経(40)「いまさら携帯電話事業」楽天の真の狙いは?

チェック! 今週の日経(40) 「いまさら携帯電話事業」楽天の真の狙いは?
authored by 日経カレッジカフェ 

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。先週、日経がきれいな特ダネを打ちました。楽天が第4の携帯電話会社に名乗りを上げるという話です。正式発表を受けて他紙もすぐ追随しましたが、なぜか当の楽天の株価は急落。今回は皆さんにも身近な携帯電話の業界の内幕と、楽天の真の狙いを探ってみます。

6000億円を借り入れて13年ぶりの参入目指す

 記事は日本経済新聞の12月14日付朝刊1面トップです。楽天が来年1月にも総務省に携帯電話向けに割り当てられる電波の取得を申請する方針を固めたという内容です。

楽天、第4の携帯会社に 回線に最大6000億円投資 電波取得申請へ(12月14日)

 ご存知のように日本の携帯電話市場は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社の寡占状態にあります。この事業者3社(いわゆるキャリア)以外に、自前の回線をもたずに大手事業者から回線を借りて低料金でサービスを提供する「格安スマホ」事業者(仮想移動体通信事業者)もいます。UQモバイル、Y!モバイルなどですが、大手キャリアは子会社などを通じてこうした格安スマホもやっており、大手の壁が厚い業界です。

 楽天の参入が認められれば、2005年に当時のイー・モバイルが事業を開始して以来13年ぶりのこととなります。ちなみにこのイー・モバイルは契約者数が伸びず、13年にソフトバンクと合併しました。3社の寡占はそれ以来続いているわけです。そこに最大で6000億円の借り入れによる設備投資をして楽天が新規参入するのですが、報道された後は携帯電話業界以外からも「なぜ、いまさら楽天がキャリアを目指すのか」という声があふれました。実際、楽天の株価は14日に一時、前の日に比べ56円(4.9%)も下がり、約9ヵ月ぶりの安値をつけました。市場が事業に疑問符を突きつけたわけですね。

 自前の設備をもたない格安スマホ事業ならともかく、携帯電話のキャリアとなれば、いちから全国に基地局を設置しなければなりません。すでに3大キャリアは長い時間と費用をかけていたるところに基地局を設けています。トンネルや地下鉄、地下街などは、3社が協力して地権者などと交渉して共同で設置しているところもあるそうです。こうしたネットワーク構築に多額の費用がかかるので、「楽天が始めても到底、黒字化はできないのでは」という冷めた見方もあるのです。


狙いは「楽天経済圏」の拡大や資金繰りの安定か

携帯電話参入を発表した14日、市場の評価は厳しかった

 楽天はすでに楽天モバイルという格安スマホ会社をもち、140万の契約者がいます。その上で、なぜ大きなリスクを犯してでも携帯キャリアになろうとするのでしょうか。まだ三木谷浩史会長兼社長の口からはその理由が語られていませんが、いくつか観測記事が出ています。

 そのひとつが、楽天がネット通販、カード事業、ポイント付与を連携させた「楽天経済圏」の入り口を広げるための布石だという見方です。


楽天、「経済圏」入り口拡大狙う 携帯参入 ネット通販と相乗効果(12月14日)

楽天モバイルを発表する楽天の三木谷浩史会長兼社長

 楽天の経営の柱は言うまでもなく「楽天市場」をはじめとする電子商取引(EC)ですが、これはいま、小売業界を震撼させているアマゾン・ドット・コムともろに競合します。そこで楽天グループは約1500万人のクレジットカード会員を土台とする金融事業に新たな成長を託しています。ここに携帯電話事業を組み込んで、ポイントで料金を払えるような仕組みを加え、さらに「経済圏」を拡大するのが狙いだというのです。

 このほか、携帯電話事業が本格化すれば、安定して通信料の現金収入を得ることができ、楽天の弱点である営業キャッシュフローが改善、資金繰りが楽になるという説もあります。それはともかく、我々利用者にとっては大手キャリアを含めた競争が激しくなり、通信料金の引き下げにつながるのでは、という期待が一番大きいでしょう。順調に行けば来年早々にも始まる楽天の携帯電話事業を、しっかり見守りたいですね。

(研修解説委員 若林宏)

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