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お悩み解決!就活探偵団2018揺れる就活ビジネス リクナビの悩み

お悩み解決!就活探偵団2018 揺れる就活ビジネス リクナビの悩み
authored by 就活探偵団'18

 超売り手市場だった2018年卒業予定の大学生による就活戦線。環境変化の中で、就活ビジネスも岐路に立っている。就活情報サイトのトップランナー「リクナビ」はいまや就職希望者が当たり前のように登録するインフラになった。だが「就活=リクナビ」という常識が揺らぎつつあるという。本当だろうか。

イラスト=篠原真紀

「リクナビ使わず」も

 「就活でリクナビは使いませんでした」。来春に大手外資系メーカーに就職を控える東京学芸大学4年の山口みずきさん(仮名、22)はこう振り返る。気になる企業には企業の自社サイトで直接エントリーした。結果的に、外資系を含む大手企業数社に応募し、6社から内定を得たという。

 これまで就活生は、リクルートキャリア(東京・千代田)が運営する「リクナビ」や、マイナビ(同)が運営する「マイナビ」などの情報サイトに登録することが活動の第一歩とされた。

 リクナビやマイナビにいったん登録すれば、採用スケジュールなどの必要な情報が手に入る。セミナーなどへのエントリーもスムーズにできる。

 採用する企業も同様だ。情報サイトに求人情報や企業広告を出しておけば、学生の目に触れやすくなる。「取りあえずリクナビ(マイナビ)」は、学生と企業の双方にウィンウィンの便利な仕組みだと言える。

 とりわけ、学生を大量に採用する大手企業にとっては利便性が高い。ある大手住建の採用担当者は「今年も100人以上をリクナビとマイナビ経由で採用した。採用に欠かせないツールだ」と力を込める。

 ただし、それが全てではない。冒頭の山口さんの場合は、志望企業がすでに絞られており「行きたい会社以外は受ける必要がない」という考えから、リクナビを使わなかった。学生優位の就活戦線であることが、そうした活動を可能にした面もあるかもしれない。

 企業にも変化の兆しがある。

 「従来のやり方では我々が求める人材に出会えない」と話すのは、ヤフーのクリエイター人財戦略室戦略部、金谷俊樹部長。

 ヤフーは新しい採用手法の導入に積極的だ。企業が学生をスカウトする「逆求人イベント」に参加したり、内定者が就職希望者を紹介する「リファラル採用」に乗り出したりしている。大学で情報系を専攻する学生にアピールするため、「言語処理学会」にスポンサーとして資金を提供する取り組みも始めた。営業職や業務職以外にエンジニアやデザイナーを採用していることもあり、情報サイトの枠にはまらない人材を集めたいという意図ものぞく。

就活の先導者

 現在の就活の仕組みは、リクナビがその一端を作ったと言っても過言ではない。

 新卒採用の求人情報を所属大学によらず誰でも手に入れることができる――。今となっては当たり前のそんな仕組みを実現したのは、1962年に創刊された求人広告誌「企業への招待」。

 リクルート創業者である江副浩正氏が設立した広告会社が始めたもので、これが現在のリクナビの原形となった。

 それ以前は、企業は特定の大学にしか求人票を送っておらず、学生の多くは限られた情報しか知り得なかったのだ。

 その後は90年代後半から00年代にかけて、インターネットを使った就活の普及とともに学生の間でリクナビが定着。現在では、リクナビ(会員数約75万人、掲載企業数約2万7千社)と、後発のライバルであるマイナビ(会員数約80万人、掲載企業数約2万社)が2強として君臨している。

 しかし、この「誰でも登録できる」という特性によって、学生が気軽にエントリーできる半面、人気企業ともなれば数十人の枠に数千~数万もの応募が殺到する。

 都内のあるIT(情報技術)関連のベンチャー企業は、リクナビに17年卒向けまで広告を出稿していたが、18年卒向けから取りやめた。「ベンチャーを志向する学生を獲得するにはリクナビは適さない」と判断した。代わりにIT企業が多く掲載されている別のマッチングサイトに切り替えた。

 また、別のスタートアップ企業は創立当初からリクナビやマイナビを利用していない。「当社に合わない学生までが数多く応募してくることが予想され、対応しきれない」と考えた。

 2強の対抗となる新興のサービスやサイトも相次いで登場している。

 新興サービスのひとつ「知るカフェ」は、上位校のキャンパス近くに企業と学生がコミュニケーションを取れるカフェを開設。企業にとっては、ターゲットとなる大学の学生に直接アプローチできるのが特色だ。

 外資系企業への就職を目指す学生向けの情報サイト「外資就活ドットコム」も上位校を中心に登録者を集めている。広告を出す企業は何も外資系だけではなく、「外資系を狙う意識の高い学生を採用したい」国内企業も利用している。

 リクナビは、こうした「上位校に絞った」サービスは展開していない。「誰にでも平等に就職できる機会を与える」というのが当初からの理念であるためだ。

 かつてリクナビの営業を担当していた元社員はこう明かす。「リクナビは社会の公器。やりたくてもやれないことが多かった」。特定セグメントに特化したサービスは「ニーズがあってもできない」事情がある。

 学生と企業の双方のニーズが変化している中で、これからもリクナビが王者で居続けられるのか。それはひとえに理念とニーズのジレンマという難題を乗り越えられるかどうかにかかっていると言えそうだ。

全ての学生に「平等な機会を」

リクルートキャリアの酒井久典執行役員

 リクルートキャリアの酒井久典執行役員に展望を聞いた。

 ――新しいサービスが次々と生まれています。リクナビは生き残れるのですか。

 「サービスのバリエーションが増えることは、学生にとっては悪いことではない。そのサービスを使って就職する学生が増えれば、うちが衰退していくかもしれないが。ただ、一部の学生だけを対象にしたサービスで、就職希望の学生全員が幸せになることはない。リクナビの目標は全ての学生が自分の能力に合った仕事を見つけられるようにすることだ」

 「例えば社内では、就活ガイドラインに縛られないサービス展開を求める声もある。しかし、リクルートが新卒ビジネスをしている意味を考えると、一部の学生や企業だけを対象にしたサービスは考えられない。社員にはリクルートの理念を繰り返し伝えている」

 ――現在の就活スケジュールをどうみていますか。

 「日本の就活システムは尊い。『3月広報開始、6月選考解禁』という就活ガイドラインによって、就職を希望する学生の9割超が、卒業と同時に就職できている」

 「高校時代から徐々に働くことについて考え、大学時代に就業観を磨き、卒業時には就職先が決まっているというのが理想的だ。とはいえ、自分だけではなかなか就活を始められない学生がいるのも事実だ。解禁時期が就活を始めるきっかけになっている面がある」

 ――ライバルの中には3月以前に採用したい企業を取り込んだサービスもあります。リクナビは就活スケジュールに縛られているのでは。

 「その通りではあるが、我々は全ての学生の就活を応援したい。学生の100%が納得できる就活をして、4月に入社すること。難易度は高いが私たちはそこを目指している」
(桜井豪、鈴木洋介、松本千恵)[日経電子版2017年11月14日付]

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