日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

AIに勝つ「臨機応変力」 相手に合わせるスキル磨く

AIに勝つ「臨機応変力」 相手に合わせるスキル磨く

 機転や融通を利かせながら、状況に応じて適切な手段をとりたい――。こうした「臨機応変力」を求める人は多いだろう。人工知能(AI)の職場進出が現実となるなか、AIにまねできないスキルとしてもひそかに関心を集めている。身に付け方などポイントをまとめた。

臨機応変力を高めるための研修(東京都新宿区のエン・ジャパン)

 人材サービス大手エン・ジャパンが、同社の女性向けサイト利用者約600人に「AIの台頭にあたり、今から身に付けておくべきスキルは何か」と聞いたところ、「臨機応変に対応するスキル」が最も多く、72%の人が挙げた。

 臨機応変スキルを重視する理由としては、「相手によって対応を変えたり、優先順位を変えたりなど、暗黙のルールや空気を察知して臨機応変に対応することは、まだまだ機械にはできないから」などの答えがあった。

仕事の目的しっかり把握

 だが、一口に臨機応変といっても、具体的にどんなスキルを指し、どう身に付ければよいかすぐには思い付かない人も多いだろう。状況に応じて適切な手段をとるとしても、何が適切な手段かは、まさにその時の状況によって違うからだ。どうすれば状況に応じた適切な手段をとれるようになるのか。

 エン・ジャパンが運営し、企業向け研修サービスを手掛けるエンカレッジの講師、横田昌稔さんは、「まず、自分がこれからやろうとすることの目的をしっかりと把握することが一番重要」と強調する。

 例えば、上司からコピーを頼まれたとする。「これ○部コピーして」と言われて、「はい、わかりました」という返事は、臨機応変な対応という観点からは失格だ。

 この場合は、コピーする目的は何か、上司にその場で聞いて確認するのが正解。そして、もし翌日の経営会議の資料に使うなら、コピーした後に丁寧にホチキスで留める。取引先にファクスするためなら、急いだほうがいいから、他の仕事を後回しにしてコピーをとるなどの行動に移す。

 このように「目的がわかっていればそれに応じた最適な手段がとれる。つまり臨機応変な対応ができる」(横田さん)。周りからも「仕事ができる人」との評価が高まることになる。

 リクルートマネジメントソリューションズ(東京・品川)のシニアパフォーマンスコンサルタント、松木知徳さんは、「臨機応変な対応のカギは、相手によって自分の対応の仕方を柔軟に変えること」と指摘。具体的な方法として、行動科学の「ソーシャルスタイル理論」の活用が有効と話す。

 同理論は、人は感情表現と自己主張の度合いで4タイプに分けることができ、各タイプに合ったコミュニケーションを選択すれば、良好な人間関係を築くことができるというもの。

 例えば、相手がクールな性格で、効率や結果を重視する「ドライビング(実行型)」タイプの場合、単刀直入で簡潔なコミュニケーションをとることが肝要。愛想がよく協調的な雰囲気の「エミアブル(温和型)」タイプなら、相手の言うことに共感するしぐさを見せたり、相手にじっくり考える時間を与えたりするのが、失敗しないコツだ。

 きちょうめんで慎重な「アナリティカル(分析型)」タイプ相手には、大げさな話は避け丁寧に説明するのが効果的。逆に、陽気で話し好きの「エクスプレッシブ(直感型)」タイプは、相手を持ち上げながら仕事を進めると成功しやすい。

相手によって自分を変える

 同理論は、職場の中でも外でも使えるほか、仕事でミスし、相手に謝る場合などにも応用可能だ。

 難しいのは、同理論に基づけば、自分自身もこの4タイプのどれかに当てはまるという点だ。例えば、相手を持ち上げれば効果があるとはわかっていても、性格上、なかなかヨイショができない人もいる。話し好きの性格が災いし、無駄話の嫌いな相手を不快にさせてしまう場合もある。

 松木さんは、「まず自分自身を知り、次に相手の性格を分析し、そして相手によって自分を変える。違う自分を演じることが、臨機応変な対応につながる」と話す。自分らしさへのこだわりは大切だが、ビジネスの場では、こだわり過ぎると融通が利かない、臨機応変な対応ができないと見られかねないので要注意だ。

 臨機応変は、アドリブやその場しのぎとは違う。臨機応変な対応をするためには、普段からの準備や心構え、訓練が欠かせない。
(ライター 猪瀬聖)[日本経済新聞夕刊2017年11月13日付、NIKKEI STYLEから転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>