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宇宙追い続け新発想 インフォステラ・倉原氏

宇宙追い続け新発想 インフォステラ・倉原氏

 「キャッキャッ」。東京・渋谷のインフォステラのオフィスには子供の笑い声が響く。声の主は、倉原直美最高経営責任者(CEO)の10カ月の息子だ。「週3回は連れてきます」と倉原CEO。従業員のヘイゼル・ネイラーさんは「よく休憩時間に遊びます。癒やしですよ」と笑う。

宇宙飛行士に憧れて

インフォステラ倉原直美最高経営責任者(CEO)

 インフォステラは人工衛星と通信する地上アンテナを利用者同士が時間貸しするシェアリングサービスを手掛ける。日本や欧米、アフリカなどの約10カ国へ設置し、2018年1月に世界で初めてアンテナシェアの実証実験を始める計画だ。

 「最初は宇宙飛行士になりたかったんです」。倉原CEOは宇宙の仕事を選んだ訳を明かす。大分県の出身で、1990年代の初めに訪れた宇宙テーマパーク、スペースワールド(北九州市)に心を奪われた。テレビでは日本人宇宙飛行士の秋山豊寛さんや毛利衛さん、向井千秋さんの活躍が伝えられた時期だ。

 「宇宙に行きたい」。多くの小中学生と同じように宇宙に強く引かれた。「思考するのが好き」で、高校は理系だったが得意科目は国語や社会。「学校のテストはちょっと苦手で」と笑う。

 文転も考えたが、夢をあきらめられなかった。1年間の浪人生活の末、九州工業大学(北九州市)に入学。希望した宇宙関係のコースではなかったが、人工衛星の研究室に滑り込んだ。

衛星アンテナをシェア

 2010年から、博士研究員として東京大学のプロジェクトで衛星と通信するシステムを担当した。アンテナシェアの需要に気づいたのはこの時だ。

 衛星は指示や観測データなどを地上と通信する。東大では国内2基のアンテナを使っていたが、通信できる時間が1日40分程度しかなかった。衛星が通信できるアンテナは限られ、地球の裏側にいる時は使えない。「世界中のアンテナを活用できれば」。このひらめきが世界初のビジネスにつながった。

 さらに背中を押したのが衛星打ち上げ費用の低価格化だ。一般企業の衛星市場が拡大し、アンテナの需要はさらに伸びるとみた。ネットと無線の専門家2人と16年1月に共同で創業した。

 17年9月には欧州エアバス傘下のベンチャーキャピタル(VC)などから8億円を調達し、事業開始の準備を進める。

 いまでも宇宙に行きたいですか。記者が問うと、倉原CEOは、照れながらうなずいた。形は違えども、宇宙への思いはビジネスの世界で実現しつつある。
(企業報道部 矢野摂士)

 日本経済新聞社が未上場スタートアップ企業108社を対象に実施した「NEXTユニコーン調査」。日本でも人工知能(AI)、宇宙など幅広い産業で、推定の企業価値が10億ドル(約1120億円)超の「ユニコーン(一角獣)」候補企業が育ちつつあることが分かった。一角獣を駆る騎手たちの姿を追った。
[日経産業新聞2017年11月22日付、日経電子版から転載]

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