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UCバークレー校の白熱ゼミが教えてくれること

大学のトリセツ(5)

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NIKKEI STYLE

米国の名門・カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)にて。「さあ、始めようか」と教授が言うと、それから約70分、途切れることなくディスカッションが続いていきます。20数名の受講学生が次から次へと挙手をし、前の人の発言に対しての感想やコメントを述べてから、自分の見解を端的に示していきます。教授はその間、真剣なまなざしでそのやりとりを見ています。

議論が深まりをみせたころ、それまでのやりとりを黙って聞いていた教授が口を開きます。教授は議論がどのように展開されたのかを見事にまとめていきます。その上で議論のポイントと課題論文のポイントとの重なりやズレを示していきます。

10分程度で教授のディスカッションのサマリーが終わりました。これで終わりかと思うとそうではないのです。このまとめの内容についても学生から質問が続きます。こうして120分があっという間に過ぎていきます。

学生たちは安易に教授に「正解」を求めようとはしません。自分たちで議論を深めていくのです。カリフォルニア大学バークレー校で、この講義にはじめて参加したときに、私は頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。私は2年間、客員研究員として学部講義や演習、大学院演習、研究会に参加しました。

日本の大学とどこが違うのか?

今回の大学のトリセツでは、私のこの衝撃体験を下敷きにして、「バークレー校の演習がなぜ、白熱するのか」を分析してみたいと思います。その前提として確認しておきたいのが、このように受講学生主体のディスカッションで進んでいく演習はバークレー校に限らず、アメリカの大学のスタンダードといえます。どこにでもあるゼミの1シーンにすぎないということなのです。

バークレー校の白熱ゼミの教室環境や受講人数、教材となる課題論文、これらは一切に特別なものはありません。ハイテクな教育学習ツールを使っているわけでもありません。それでは何が違うのでしょうか?

1つ目は、課題論文の読み方の違いです。日本の私の大学のゼミでも、ゼミ生たちは事前に課題論文を決めて読んでから出席します。ただその際に、「課題論文を読むことが目的となってしまっていたり、あるいは、課題はそれで達成と思われているように感じることがあります。それに対して、「コメントをするために課題論文を読む」というのがバークレー流です。

課題論文や著作に対して、自分の意見を述べる、必ずコメントするという姿勢で準備していくと、読みの深さが確実に違います。私もバークレーゼミでの初回の苦い経験を繰り返さないために、2週目以降は、ゼミの前までにコメントシートを用意して、毎回発言するように心がけました。

「日本の学生は発言をしないが、海外の大学ではディスカッションが盛んだ」というのは、よく耳にする「大学あるある」ですが、その原因は、事前にコメントをする準備が習慣化されているのか、それとも、読むことだけが習慣化されているかの違いにあるのだと思います。

2つ目は、ディスカッション経験数の違いです。事前にコメントを用意すれば、ひとまず、毎回何かしら発言はできるようになります。「出席しているのだからコメントするのは当然だよね」というような空気を感じ、私も毎回発言するようにしました。

ただ、あるときから、前の人の発言を受けて、的確にコメントを付け加えることの難しさを痛感するようになりました。それもそのはず、他の人のコメントは事前にはわからないからです。70分のフリーディスカッションのなかで、まるでサッカーのパスワークのように、コメントがダイナミックに繋がっていきます。このディスカッションが沈黙の時間もなく、流れるように展開されていくのは、ディスカッションの経験数が決定的に違うからです。

いまでは日本の高校でもアクティブラーニング形式での学習機会が増え、少人数グループでディスカッションを重ねることもあります。大学でもディスカッションの機会は増えてきてはいます。ただ、それでも絶対数がまだまだ圧倒的に足りません。講義中の大半時間は、「聞く」時間だからです。

ディスカッションのコツ

さて、前の人の発言を受けてディスカッションを深めていくときの方法は、実はそれほど難しいことをしているわけではありません。とっかかりのコツを伝えておきますね。

まず、そのコメントや意見について、賛成なのか、反対なのか。自分の立場を明確にしてから、その理由を述べていくようにしましょう。ポイントは、賛成と反対の度合いをコメントの中にいれていくようにすると発言がしやすくなります。大賛成であればその理由を、やや反対であれば、その理由を、というように前置きをすると、立ち位置が明確になり、相手にもそのことを伝えた上で理解してもらえるので誤解も減ります。議論もシャープになります。

このフリーディスカッションの経験を徹底的に増やしていくのです。そのことを各人が意識し、受講学生全員で取り組んでいけば、いつのまにか、教授による正解に頼らない、大学らしい学びの空間が生まれてくることでしょう。

バークレー校の白熱ゼミは、「事前にコメントを用意した学生たちが真剣勝負でフリーにディスカッションを創り上げていく毎回の集合的な積み重ねによって生み出されている実践的な学びの空間なのです。

そんな学びの空間は彼らの専売特許なんかではありません。コメントすることを目的にして課題論文を読み、試行錯誤を重ねながらディスカッションを多岐のテーマで継続していく。そうすることでわれわれにだって、創っていくことができるのです。

学びの空間は自ら創る。それではまた、次回。

田中研之輔 (たなか・けんのすけ)
 法政大学キャリアデザイン学部准教授、デジタルハリウッド大学客員准教授。博士(社会学)。1976年生まれ。一橋大学社会学研究科単位取得退学、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校大学院社会学研究科客員研究員を経て現職。著書に『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(ちくまプリマー新書)など。

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