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書店員がおすすめ 年末年始に読むべきビジネス書7冊

書店員がおすすめ 年末年始に読むべきビジネス書7冊

2017年刊行の本を対象に、書店のビジネス書担当者に読んでおきたいビジネス・経済書を選んでもらった。主に昨年の売れ筋本が並ぶことになったが、読み逃していた本がないかチェックして、まとまった休みを利用した読書の参考にしてほしい。

2人が推す『最高の睡眠』

八重洲ブックセンター本店副店長の木内恒人さんのおすすめは『スタンフォード式 最高の睡眠』と『カルロス・ゴーンの経営論』

 今回は4人の書店員におすすめを依頼した。そのうち2人がそろって押したのが、西野精治『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)だった。八重洲ブックセンター本店副店長の木内恒人さんは「仕事以前のコンディションづくりに注目した本が相次いで出版され、ちょっとしたブームになった。その流れを象徴する本」と話す。リブロ汐留シオサイト店店長の三浦健さんも同じ見方でおすすめの1冊に選んだ。仕事も生活も忙しい現代のビジネスパーソンに向け、その忙しさと折り合いをつけつつ睡眠負債を解消する方法を提唱した内容で、「睡眠負債」というキーワードの広がりとともに、大きな読者を獲得した。年が改まるタイミングで読むのにちょうどいいかもしれない。

 木内さんがあげたもう1冊は、太田正孝・池上重輔編著『カルロス・ゴーンの経営論』(監修・公益財団法人日産財団、日本経済新聞出版社)。日産自動車の変革を主導したゴーン氏が講師役を務めた日産財団主催の「逆風下の変革リーダーシップ養成講座」を書籍化した本だ。「コストカッターで冷たい人と思っていたゴーン氏に人間味を感じた。あのゴーン氏でも迷うんだと思ったし、意外な発見が多かった」と木内さん。「『最大の壁は自分自身』など、実のある教えも多い。部課長クラスの人にすすめたい」と話す。講座に参加したミドルリーダーからの質問に答えながら語った内容を採録しているため、ゴーン氏の肉声に触れた気がするところがこの本の魅力だ。

リブロ汐留シオサイト店店長の三浦健さんのおすすめは『SHOE DOG』と『スタンフォード式 最高の睡眠』

 一方、三浦さんがあげたもう1冊は、フィル・ナイト『SHOE DOG(シュードッグ)』(大田黒奉之訳、東洋経済新報社)。スポーツブランド、ナイキの創業者が創業の軌跡を振り返った一冊だ。「最近最も売れた本として印象に残った」と三浦さんはおすすめの理由を話す。

名著の漫画版に注目

 紀伊国屋書店大手町ビル店の西山崇之さんがすすめるのは、吉野源三郎原作、羽賀翔一漫画『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。「普段はコミックが売れないこの店で売れたのが驚きだった」と西山さんは話す。原作は誰もが知る戦前からのベストセラーだが、名うての編集者が集まって漫画版をつくり、全国的にベストセラーになった。昨年8月の出版直後は地味な存在だったが、人気のテレビ番組が取り上げたことで10月ごろに火が付き、「年配の人も若い人も年齢に関係なく、どんどん買っていく」(西山さん)という売れ行きが今も続いている。

紀伊国屋書店大手町ビル店の西山崇之さんのおすすめは『漫画 君たちはどう生きるか』と『アフター・ビットコイン』

 「どう生きるか」というシンプルで深い問いを中学生とその叔父の対話で考えていく内容が、今の読者に強く響いたということだろう。知識やスキルといった直接的に役立つことよりも、生き方そのものを考える契機を、昨今のビジネスパースンは求めているのかもしれない。

 もう1冊は金融街の大手町らしい売れ筋本だった中島真志『アフター・ビットコイン』(新潮社)。「売れたという意味では昨年3月に出た『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』の方が売れたが、ビットコインの先を見据えた内容が大手町の人たちの関心をとらえた」と西山さんは言う。まさにビットコインの高騰が話題になり始めた10月下旬の刊行で、ビットコインの影の部分に光を当てる一方、中核技術のブロックチェーンの可能性を展望した点が、今読むのにふさわしいと考える理由だ。ビットコインブームは今もさらに盛り上がっている。ブームの行く末を考えたい人には、ちょうどいい一冊になりそうだ。

「新しい経済の歩き方」示す

青山ブックセンター本店の益子陽介さんおすすめの2冊

 2~3カ月に一度訪れている準定点観測書店の青山ブックセンター本店の益子陽介さんが選んだのは、最新の売れ筋になっている佐藤航陽『お金2.0』(幻冬舎)。昨年11月末の刊行で、同店の12月11~17日週の売り上げトップだった本だ。「お金をとらえ直す本で、今の経済に起きている本質的な変化とは何かが書いてある。モノからお金になりにくい『価値』に焦点が当たるようになってきているという認識など、共感できるところが多い」と益子さんは言う。著者の佐藤氏は、ビッグデータ解析を武器にアプリ収益化支援事業やオンライン決済サービスを手がけるスタートアップ企業の旗手の一人。ビジネスを通じて得た「新しい経済」のイメージをこれからの生き方に結びつけながら描く。「若いビジネスパーソンにこそ、読んでもらいたい」と益子さんはすすめる。

 もう1冊選んでくれたのは、英国で起こっている社会の変容に鋭く切り込んだオーウェン・ジョーンズ『チャヴ』(依田卓巳訳、海と月社)。副題に「弱者を敵視する社会」とあり、英国で起きている「白人労働者階級」への差別の実態と、それを生み出した政治的、社会的要因を分析している。ビジネス書というジャンルには収まりきらない本だが、原著が刊行された11年に英米などでベストセラーになり、16年には新版が刊行されるなど、現地では版を重ねる。「暗たんとした気分になる本だが、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)の背景にもなり、トランプ現象や今日の日本の現状にも通底する問題。分断が進む社会を考えるきっかけになる」というのが益子さんの推薦の弁だ。
(水柿武志)[NIKKEI STYLE 2017年12月22日付]

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