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「日経TEST」編集長が選んだ
2018年注目のビジネススケジュール

「日経TEST」編集長が選んだ2018年注目のビジネススケジュール

 2018年が始まりました。就職活動を控えた皆さんは年頭にあたり、日本経済新聞などを通じた経済・ビジネス情報の収集に決意を新たにしているころと思います。日本経済新聞社では、仕事に必要な経済知識と考える力を測り、スコア方式で示す「日経TEST」(日経経済知力テスト)を実施しています。経済・ビジネスの最新ニュースを題材に毎年問題を更新し、主要都市に会場を設ける全国一斉試験や、法人向けに随時実施するテストです。

 この日経TESTの編集部では毎年初め、「経済知力アップのための、ビジネス関連予定の読み方」を作成し、その年のテストに挑戦する皆さんに提供しています。経済に関するニュースのどこに注目したらいいかのナビゲーター役にもなると思いますので、以下ご紹介します。手っ取り早く2018年のビジネス関連日程をつかみたいビジネスパーソンにも役立つと思いますので、以下ご紹介します。

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「節目」の2019年もにらんでスケジュール点検

 「生きた経済」を題材にする日経TESTでは、経済知力スコアのアップのため、日々起きる経済ニュースへの感度を高め、そのつど考える習慣をつけておくことを推奨しています。経済ニュースはスケジュールとその位置づけをつかんでおくと、頭に入りやすくなります。年の初めはその絶好の機会です。以下は、日本経済新聞掲載の情報に基づいて、日経TESTの受験に役立てる視点から独自にまとめた「注目ビジネス関連日程」です。

※2017年12月までに日本経済新聞掲載の情報に基づき作成。時期が流動的なものも含む

 この日程表の下部にまとめたように、国内では「節目」となるイベントが「2019年」に集中します。天皇陛下退位・皇太子さま即位・改元の日程が4月30日・5月1日に決まりました。3月には統一地方選挙、7月には参院選挙、10月には消費税の現行8%から10%への引き上げ予定と、波乱含みの日程が続きます。2018年の国内の政治や経済は、この19年のスケジュールをにらんで動くことを、まずは頭に入れておくとよいと思います。

景気拡大はいつまで? 日本の金融政策に注目

 マクロの経済の動きでは、現在の「安定」がいつまで続くかが焦点です。日本の上場企業の純利益が18年3月期、過去最高になる見通しなど企業業績は好調ですが、その背景には堅調な世界経済があります。1.米国の景気拡大が続いている、2.15年12月から始まった米国の利上げのテンポが緩やかで、懸念された新興国経済への影響が軽微である、3.17年10月から2期目に入った習近平(シー・ジンピン)政権下、中国の景気も底堅い――ことが挙げられます。

 これを背景に、日本の景気は12年12月から始まった景気拡大局面(アベノミクス景気)が17年、高度成長期の「いざなぎ景気」(1965~70年の57カ月)を越えて戦後2番目の長さになりました。18年12月まで続けば、日本の景気拡大は7年目に入り、02年2月から73カ月続いた戦後最長の景気拡大期間に並びます。なお、拡大の「期間」が長いとはいえ、その「水準」は国内総生産(GDP)の成長率でせいぜい年1%台と低いことは、押さえておく必要があります。

黒田東彦日銀総裁

 この景気拡大がいつまで続くのか。それを左右する大きな要素が、米国・欧州・日本の金融政策の動きです。日程表では2月に米連邦準備理事会(FRB)のトップがイエレン氏からパウエル氏に交代することと、続投が濃厚ですが4月に黒田日銀総裁が5年の任期を迎える日程があります。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の任期は19年秋です。

 米国の景気拡大も09年7月から始まっており、18年7月になると「10年目」と、第二次世界大戦後最長の景気拡大期間となります。「景気循環」という言葉があるように、景気にはいずれ、後退する局面が訪れます。経済の教科書的には、景気が過熱して「バブル」につながるような懸念が強まると、中央銀行(米国ならFRB)が利上げのペースを上げることで景気を冷やし、拡大局面を終わらせる(そして早く反転させる)ことが、経済に深い傷を残すバブル崩壊やリーマン危機などの事態を招かないための筋書きになります。

 FRBがリーマン危機後続いた超低金利政策をやめ、「利上げ」に転じたのが15年12月でした。既に利上げから3年目に入りましたが、この間、イエレン議長による利上げのペースが非常に緩やか(17年12月の半年ぶり引き上げまで0.25%ずつ5回)だったため、世界の株価を下げたり、新興国からの資金逃避を招いたりすることもなく、景気拡大を演出してきました。パウエル議長もこの流れを引き継ぐ「ハト派(利上げに慎重の意味)」とみられていますが、バブルの懸念などでこの筋書きが崩れるとき、米国の景気後退が起きることになります。

 欧州の中央銀行、ECBも、超金融緩和をやめる「出口政策」に舵を切り始めました。量的金融緩和の手段である国債などの買い取り額を18年1月から半減します。いつまで緩和を続けるかについてドラギ総裁は「オープンエンド(期限を定めない)」という表現を使っていますが、各国で不動産市場の過熱などの兆候もあることから、18年中に打ち切るべきだという「早期出口論」が強まり始めています。

 その中で日本の中央銀行、日銀は短期金利のマイナス金利と長期金利の押さえ込み(長短金利操作)、国債や上場投資信託(ETF)を通じた株式などの買い入れ(異次元の量的・質的金融緩和)による超金融緩和政策を続けています。引き締めに向かう米欧と逆方向の金融政策をいつまで続けるのかという議論がある一方で、金利を上げると現在の輸出主導の景気拡大にとって都合が悪い、為替の円高を招きかねない懸念があります。

 「ポスト黒田」や日銀の金融政策に関しては、年末年始の日本経済新聞でも様々な観点から報じられると思いますが、以上の基本的な構図を頭に入れておくと、記事が理解しやすくなるはずです。

脱デフレ、賃上げ幅がカギ

 日銀が超金融緩和を続けているのは、デフレ(物価の継続的な下落)脱却が目的です。マイナス金利は金融政策にとって異常な状態であり、上げたり下げたりできる余裕(のりしろ)がないと、本来の目的が果たせません。「消費者物価2%上昇」が達成される局面になれば、経済への悪影響をできるだけ和らげながら、超低金利と量的緩和を終える(出口政策)ことになります。

 その意味で、3月に自動車、電機などで労働組合の要求に対する会社からの集中回答日がある春季賃金交渉での賃上げ幅が注目ポイントになります。安倍首相は経済界に、「1人当たりで3%の賃上げ」を求めています。4月からの税制改正には、賃上げに積極的な企業は税負担を減らす法人減税も盛り込まれました。

 17年末にかけて、サンローラン、セリーヌなど欧州高級ブランド品の日本での商品価格や、宝飾品のTASAKIなどの値上げのニュースが相次ぎました。メルセデス・ベンツやアウディなど高級輸入車の価格も18年1月から上がります。これらは円安・株高による訪日外国人や高額所得者の消費の盛り上がりが背景ですが、賃上げ幅が大きくなると、家計全体が温まって値上げの動きが一般商品・サービスにも広がり、デフレ脱却の道筋が見えてくる展開も考えられます。

米中間選挙、中国全人代、ロシア大統領選

 海外の政治日程で最も注目すべきは、11月の米国の中間選挙です。上院は100議席中34議席、下院は435議席全てが改選となります。上院は17年12月のアラバマ州補欠選挙の結果、共和党が1議席を減らし、共和51対民主49とさらに僅差になりました。トランプ大統領が12月、イスラエルの首都をエルサレムとみなすと宣言したことで中東情勢への不安が一気に高まりましたが、この中間選挙をにらんでユダヤ人票を配慮した動き、と解説されています。

 トランプ大統領周辺とロシアの不透明な関係を巡る「ロシアゲート」もくすぶり続けます。日本にとって最も大きな地政学リスクである北朝鮮に対する米国の姿勢にも当然、関係してきます。

 このほか、2期目の習近平政権の人事や新たな経済対策が発表になる中国の全国人民代表大会、プーチン氏の再選が確実視されるロシア大統領選挙と、3月には大きな国際政治の動きがあります。日中関係は17年の「国交正常化45周年」に続き、18年は「平和友好条約締結40周年」にもあたります。17年11月の首脳会談で修復に合意した両国の関係改善が進む動きも要注目です。

EVシフト、世界最大市場の中国に注目

ショッピング施設に展示される米テスラの電気自動車(EV)に群がる中国人。中国のEVシフトは果たして順調に進むのか…(10月、広東省広州市内)

 産業の動きに目を転じると、最も注目すべきは、自動車業界で進む「EV(電気自動車)シフト」です。17年夏、英国、フランスが相次いで「2040年までのガソリン車・ディーゼル車の製造・販売禁止」を宣言したことで一気に広がりました。とりわけ世界最大の自動車市場である中国の動きがポイントです。

 中国の自動車市場(新車販売台数)は16年、約2800万台でした。17年は年初に見込まれた5%増はやや下回るものの、3000万台が目前です。米国は約1700万台、日本は約500万台、全世界でも年間約1億台といわれる新車販売の3割が中国市場であり、普及率を考えると今後も伸び続けます。その中国が17年9月、EVを中心とする新エネルギー車(NEV)に自動車産業の軸足を移す計画を発表したことで、世界の自動車業界に衝撃が広がりました。

 具体的には19年から、中国で生産する自動車の一定割合をNEV(EVとプラグインハイブリッド車=PHV、燃料電池車=FCV。ハイブリッド車=HV=は対象外)にします。また、英国やフランスと同様、ガソリン車・ディーゼル車の製造・販売禁止についても中国の工業情報省の次官が17年秋、「時期を検討中」と表明しています。18年はその時期の発表が再び大きなニュースになると考えられます。

 中国のEV車の販売台数は17年、10月までで既に約50万台。日本ではあまり知られていないブランドですが、トップメーカーは通信機器の華為技術(ファーウェイ)やネットサービスの騰訊控股(テンセント)と同じ深せんに本社を置く、比亜迪(BYD、ビーワイディー)。続いて北京汽車集団など中国メーカーがずらりと上位を占めます。日本メーカーはEVで出遅れており、EVシフトが中国の自動車メーカーの成長を大きく後押しするのは確実です。

 「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬかの瀬戸際の戦いが始まっている」。トヨタ自動車が17年11月、18年1月以降の新役員体制を発表した際、豊田章男社長がこのような厳しいコメントを出したことが話題になりました。トヨタはこれまで4月に行なってきた役員人事を3カ月前倒しし、米国の人工知能(AI)子会社の最高経営責任者を副社長級の技術役員「フェロー」に抜擢するなど外部人材の活用も進めています。いわゆるオープンイノベーションです。

 EV分野での日本の強みは、自動車メーカーの技術より、パナソニックが世界最大のシェアを持つ「車載電池」の分野です。トヨタとパナソニックは17年12月、電池事業での協業を検討すると発表しました。ガソリン車とEVではエンジンかモーターかの駆動源に限らず車体の素材なども含め大きな差があり、EVシフトは産業界全体に大きなインパクトとなります。

アマゾン・エフェクト、コンビニにも成長限界論

 年末恒例の「日経MJヒット商品番付」で、17年の東の横綱は「アマゾン・エフェクト」でした。米国では、アマゾンに大きな影響を受ける小売関連企業の株式銘柄をまとめた「デス・バイ・アマゾン」という名称の株価指数も注目を集めました。世界最大の小売業ウォルマート・ストアーズが18年2月、リアル(実)店舗のイメージを薄め、ネット通販部門を拡大することを印象づける狙いで「ストアーズ」を社名から外す社名変更を行なうのは、象徴的な動きです

 日本でもアマゾン・ジャパンの年間売上高が2016年度時点で1兆円を突破しました。ネット通販の市場規模は既にスーパー業界の売上高を大きく上回ります。好調だったコンビニエンスストア業界にも、「成長の限界」が指摘され始めました。コンビニは全国に5万5千店、売上高は10兆円を越えてスーパー業界の売上高に迫る存在ですが、セブン―イレブン・ジャパンの既存店の連続増収が17年10月に62カ月で途絶え、11月も2カ月連続減収となるなど、息切れが指摘され始めました。

 セブンが17年12月からソフトバンクグループと組んでシェア自転車事業を展開(18年度末まで1000店に5000台計画)したり、ファミリーマートが18年2月から「1階にコンビニ、2階にスポーツジム」の店舗を展開(5年で300店計画)したりするのは、成長の限界を破り、新たな需要開拓を探ろうという象徴的な動きです。

 流通・サービスではこのほか、人手不足による物流コスト増を背景に、ビール各社が居酒屋などに卸す業務系飲料を値上げ(4月)する動きがあります。ロイヤルホールディングスがファミリーレストラン「ロイヤルホスト」に元日と5月、11月に「休業日」を設けます。17年に24時間営業をやめる動きが広がったのに続き、各社・業界に波及すると考えられます。

メガバンクでリストラ、ロボットの活用進む

 金融では17年末、メガバンクでの「リストラ」の動きが話題になりました。18年4月のメガバンク3行の新卒採用人数は約3300人と、前年を25%下回りました。3行は、期間などは異なりますが単純に合算すると、「3万2千人分の業務を減らす」と表明しています。それを可能にしたのが、銀行に限らず活用が広がっている、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのデジタル技術です。一昨年あたりから話題になっていた「AIやロボットが人間の仕事を代替する」風景が、身近になってきました。

 もともと金融にITを組み合わせたフィンテックを活用した異業種からの金融業務への参入などで、メガバンクなどが展開してきたフルライン型の金融サービスには見直しを迫られていました。それを急がせたのが、マイナス金利政策が銀行経営を強く圧迫したことです。

 地方金融機関には人口減少による地域経済縮小の影響が加わり、経営は一段と厳しくなります。前半で日銀の超金融緩和政策が見直される可能性について触れましたが、金融機関経営の圧迫も、その理由となる可能性があります。公正取引委員会の審査が長引き無期延期となっている九州のふくおかフィナンシャルグループ・十八銀行経営統合の行方なども関連して注目されます。

ディズニー35周年、USJは「クールジャパン」

 消費分野では「モノ消費からコト消費」の流れが定着しました。2018年は、コト消費の横綱格ともいえる東京ディズニーリゾート(TDR)が、東京ディズニーランド開園から35周年を迎えます。運営するオリエンタルランド(OLC)が2020年代前半に総面積を約3割広げる計画について、米ウォルト・ディズニー社と協議を始めたニュースも注目を集めます。

USJの新エリア「ミニオン・パーク」で行われたオープニングセレモニー (2017年4月)

 大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は入場者が1460万人と東京ディズニーシー(1346万人)を上回り、東京ディズニーランド(1654万人、以上2016年)に迫る存在です。外国人観光客が目立つUSJは、ゲーム「ファイナルファンタジー」やアニメ「美少女戦士セーラームーン」を題材とした過去最大規模の「クールジャパン」イベントを開く予定です。

 昨年のこの欄でも紹介しましたが、「周年」はモノ・コトの消費にもつながり、ビジネス雑談のネタにもよく使われる話題です。17年は「iPhone発表から10年」や「スーパードライ30年」がありました。カシオ計算機の腕時計「Gショック」もディズニーランド開園と同じ1983年の発売で、35周年となります。17年秋は「山一・拓銀破綻から20年」が話題になりましたが、18年秋は「リーマン危機から10年」が改めて振り返られるはずです。ちなみに日経TESTも2008年9月に第1回全国一斉試験を開始して、今年は10周年の年です。

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 「経済ニュース」というと「難しく、とっつきにくい」印象があると思いますが、経済を動かす大きなストーリーの中で接すると、一つひとつの出来事のつながりもわかり、一見、堅苦しそうな経済指標や金融政策のニュースなどにも親しみがわいてきます。「日程表」と以上の解説で、「この1年のストーリーがわかったような気になった」になっていただければ、情報収集に役立つと思います。

 日経TESTは就職活動を控えた大学生の皆さんにもお勧めで、「学生対抗戦」なども実施しています。興味を持たれた方は是非、ウェブサイトを訪れてみて下さい。
(日経TEST編集長 石塚慎司)