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お願い、水木先生~海外留学はキラキラばかりじゃない

物理ろまん主義(4)

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NIKKEI STYLE

幸せになりたいなぁ、と考えていたら執筆がすごく遅れてしまいました。お久しぶりです、久保田しおんです。

以前の記事でお話ししたように、昨年は夏の間CERNという研究機関で素粒子の研究をして、9月の頭にアメリカ・マサチューセッツ州にある大学に戻り、1学期を終えました。

久しぶりに友人に会って楽しくて、授業もとても面白くて。でも一方で、なんだかすごく疲れてしまい、しばらく記事を書けずにおりました。

というわけで、今回はスイス生活についてのお話ではなく、大学生活を通して感じたことについて書きたいと思います。

楽しいけど、ビクビクしていた

夏が終わり、大学に戻るためボストンのローガン空港に降り立った時、最初に感じたのは安堵でした。ヨーロッパという私にとって新たな場所で3カ月間過ごすのはもちろん楽しいことでした。しかし、フランス語を話せないというハンディキャップを抱えているという自覚から、一瞬たりとも緊張感から解放されることはありませんでした。

夏休み後半は指折りアメリカに帰れる日を心待ちにし、ついにボストンに到着できたあの瞬間は、まるでマラソンのゴールの瞬間のような感じだったのです。大げさな、と思われる方もいらっしゃるでしょう。いや、本当なんです。言葉を何も使えないって、意外とストレスだったのです。

その後、大学に戻り、親友たちと再会して一緒にパーティーに出向いたり、授業を受けたり、食堂でドカ食いをしたり。青春らしい無茶なことをして、以前と変わらない日常が戻りました。

でも、違うのです。楽しいけれども内心いつもビクビクしている自分が無意識のうちにいたのです。かの有名なCERNで客室研究員をした、という輝かしい肩書きを直視できず、そしてその肩書きに注目する友人たち、教授たちに恐怖心を抱いてしまったのです。「肩書きの割にはたいしたことないな」なんて思われたらどうしよう、そのたいしたことのなさがばれてしまったら、そしてがっかりされたらどうしよう。こんなことを思い続け、自分の自信をつけるために引き受けたはずのCERNでの仕事が、逆に自分の価値を疑う引き金になってしまったのです。

以前の記事で述べたように、昔から学校という小さなコミュニティーの中でさえ「残念な子」だった私にとって、CERNという世界的な研究機関で働くという肩書き、孫正義育英財団をはじめとする複数の著名な団体での奨学生という肩書きは、届くはずのなかったものでした。それが急にグッと手に入ってしまったせいで、私の中にいる、幼い頃の久保田しおんの面影がびっくりしてしまい、「いやいや、そんなわけない」と自分の努力の結果を否定し始めてしまったのです。

そのうち、だんだん朝起きたり、授業に行ったりするのも億劫になってきました。もやもやと、なんだかやだなぁと毎日思いながら過ごして、そしてそんな時間の過ごし方をする自分にもやだなぁと思ったりしていました。そして、以前どうしようもなく気分が落ち込んだ時に読んでいた本を引っ張り出してきました。水木しげる先生の『水木サンの幸福論』という本です。

題の通り、この本ではゲゲゲの鬼太郎の著者として有名な水木しげる先生が、幸せになるために心に留めておくべきことを七カ条にまとめてくださっています。その中の三カ条をここでご紹介したいと思います。

第一条
成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。

第四条
好きの力を信じる。

第六条
怠け者になりなさい。

少し前に、この本を以前どうしようもなく気分が落ち込んだ時に読んだとお話ししました。それは、ちょうど二年前、一年生の一月頃でした。もちろん初めての海外生活から溜まったストレスもあったかもしれませんが、それに加えて少し面倒ないざこざに巻き込まれて、自分は何のためにアメリカにいるんだろう。とか、人間じゃなくて犬か何かに生まれてくれば人生楽だったのになぁとか考えていました。

けれども、その時の私は第四カ条にある通り、とりあえず自分の物理に対しての「好き」の力を信じたのです。そして知りたい、理解したい、という感情がいかに人間の本能的な欲求で、いかに人間を力強くしてくれるか、自分の体を通して実感しました。この欲求は落ち込んでいた私の気分を高め、自分は物を知るために・理解するために生きるんだ、というモチベーションを与えてくれたのです。

それから二年の歳月が経った今。 物理の情熱は消えずとも、その思いが飛び火し、物理分野で成功したい、認められたいという思いが自分でも気がつかないうちにどんどん強くなってしまっていました。

エクストリームな頑張り屋さんへ

ふと気づいてみると、人生を豊かにするために始めたはずの物理で、逆に自分に鞭を打っていたのです。犬ではなく、人間という種に生まれたからこそ物理の美しさを愛でることができるという喜び、そして好きなことを見つけ学べるという幸せに感謝することを忘れ、とにかく認められること、成功を否定されないことを目標にしてしまっていました。しまいには傷つかない予防線として自分の努力の果てに得た結果、肩書きを否定し運が良かっただけと片付け始めてしまっていたのです。まさに幸せの第一条への違反です。

これらのことに気がついてから、のんびり生活を始めました。自分に自分が好きなものだけを与え、いい意味で怠け者になる。まだまだ途中だけれども、成功や栄誉という亡霊から自分を解き放つ。そして何よりも、心に余裕を持って、物理に感動する自分の声を素直に聞き、それをエネルギー源とする。すごく簡単に聞こえることですが、ハードワーキングが得意な日本人の私には少し難しいことだと実感しています。

この記事を通して何をお伝えしたかったか、というと。色々なSNSの反響を拝見させていただいて、私を始め海外留学生のキラキラな面ばかりが前面に出ているような気がしているのです。でも、私もボロボロの泥んこになって鼻水と涙を垂らし、どうやったら幸せになれるのか日々苦悩しているのです。そして時には、今は天国にいる水木先生に、「お願い、私も幸せにしてください」とまさに神頼みをすることがあるのです。

この記事が、頑張りすぎている人の助けに少しでもなれば、エクストリームな頑張り屋さんが少しでも怠け者になれるきっかけになれば、と願いながら今回の記事を締めくくらせていただきたいと思います。

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