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ボランティアの架け橋(6)プロジェクトにおける“参加者”という存在

ボランティアの架け橋(6) プロジェクトにおける“参加者”という存在
authored by 青山学院大学ボランティアセンター

 皆さんこんにちは! 青山学院大学4年の今野友彰です。皆さんはどんな年末年始を過ごされたでしょうか。僕は仙台の実家に帰り、ゆっくり過ごしていました。そして箱根駅伝は青学の4連覇をテレビの前で応援していました。今年も良いスタートが切れたと思います!笑

 さて、3月から始めた連載も今回で6本目となりました。2018年が始まりましたが、まずはここまで読んできてくださった皆さんに感謝申し上げたいと思います。僕自身も昨年は様々な記事をインターネットで読みましたが、今年もまた何かのヒントになったり、純粋に自分自身の経験から感じたり、学んだことを皆さんに少しでも還元していけたらと思います。

 今回は、プロジェクトの企画運営をメインとする僕たちにとっての"参加者"という存在についてご紹介していけたらと思います。

お客さん?協働者?

毎日の活動後の夜のミーティング風景。振り返りや反省と共に、自分たちができることを確認し合います

 ボランティアの枠組みを作り、多くの一般学生を巻き込むスタイルを取る僕たちにとって、参加者の学生たちは無くてはならない存在です。長い時間と労力をかけ、毎年プロジェクトをカタチにしてきても、いざ参加者が集まらないとなると活動実施が危ぶまれます。それだけ僕たちの活動にとって絶対的に必要な存在であり、僕たちの活動の特徴であり、アイデンティティである参加者を"巻き込む"というものが成り立っています。

 では、僕たちはこの参加者という存在により着目したときに、どのように考えているのか。自分たちが企画したプロジェクトに参加してくれるお客さんなのか? それとも共にプロジェクトを作り上げる協働者なのか? これに対して、僕は圧倒的に後者を意識しています。というか、時間の流れがそうさせているのかもしれません。プロジェクトが立ち上がった当初は当時の顧問の先生などのお力もお借りし、まずは立ち上げに100%注力することが最重要課題。

 もしかしたら、一般の参加学生は自分たちが作った活動に応募してきてくれたお客さん的立ち位置の色が強かったかもしれません。これに関しては優秀な先輩方が立ち上げに関わっているので、あくまで憶測の域ですが。それからプロジェクトも歴史を重ね、徐々に参加者の捉え方も変わってきたのではないかと思います。プロジェクト実施のノウハウやナレッジも年を追うごとに蓄積され、企画運営の体制や仕組みも構築されてきたことも追い風となりました。自分たちが成し遂げたいことは自分たちだけでは実現できない、参加者は自分たちのお客さんではなく、協働するパートナーなのだと実感するようになっていったのです。

 参加者がいなければ成り立たないという点ではお客さんという解釈も不自然ではないのですが、塩竈市という地域全体を巻き込んだり、活動を通して良い影響を与えるには協働者としての参加者の存在は不可欠です。もっと言えば、企画段階から参加者と一緒に活動するなどのシステムができれば、プロジェクトの作り手が増え、そのまま本番の活動にも参加してくれるという良い循環が生まれる可能性もあります。これからも後輩たちには参加者という存在を大切にし、味方にし、うまく活かしながらプロジェクトを作っていってほしいと思います。

スタッフ、参加者全員で集合写真(2015年3陣)。一番前でこんな写り方もう一生しないと思います…笑

リピーターの存在

 そんな参加者の中にも、毎年参加してくださる、いわゆる「リピーター」がいます。この存在がとても大きく、僕たちの活動を助けてくれていると言っても過言ではありません。東北に関心を持つ学生が減ってきている中、参加者を集めるという点では、このリピーター層がいてくれることで母数を確保できるという点もあります。ですがそれ以上に大きいのは、過去の経験者が参加することで、他の学生をリードしてくれる点にあります。

 次の項目でも話しますが、このプロジェクトがソフトなものである以上、「ヒト」の価値がものすごく大きく、モノをいいます。僕たちスタッフが参加者の活動のサポートをするのはもちろんなのですが、一度参加したことのある学生がいることで、そのリピーターが他の参加者にアドバイスをしたり、経験を話したりしてくれます。当然慣れている学生が多ければ運営側の負担も軽くなります。そういう意味でもリピーターの存在は大きいですし、活動後のプライベートな関係もより深くなっている気がします。

 リピーターの中にはこんな参加者がいました。初めて東北に来て活動をしたときに、ここで地域についての関心や人々の温かさを感じ、もっと地方創生といった分野を勉強したいと、実際にその後大学院に進学して勉強しているという方です。最初に参加した年にPR動画作製の活動に携わり、地域の様々な人やお店にインタビューをし、人柄や街の空気感に触れたことも強く影響したのかもしれません(各活動の詳しい内容は連載3回目の記事をご覧ください)。その後も何度もプロジェクトに参加してくださり、「自分を変えてくれた」、「第二の故郷」とまで言ってくれたことはずっと忘れないと思います。

 他にも、サマースクール中学校支援の活動に参加してくれた教育学部の学生は「自分が将来中学校の先生になるか高校の先生になるか迷っていたけど、今回この活動に参加して中学校の先生を目指すことを決めました」と最後に言ってくれました。リーダーとしてずっと動いてきて大変なこともありましたが、このように参加者たちの今後の人生やキャリアに良い影響やきっかけを与えられたことが嬉しく、一番の自分のモチベーションが上がる瞬間だと実体験を持って確信できました。この経験がその後の自分の軸となり、卒業後の進路もこれが実現できる会社への入社を決めました。

ソフトな事業である以上

 このプロジェクトは、何か目に見えるモノを作っているわけではありません。ハードではなくソフト、そういう意味では個々の「思い」や「ナレッジ」「モチベーション」や「コミュニケーション」こそが最大の資源です。リーダーとしては、それぞれのメンバーにどう思いを乗せ、目に見えない無形なモノをどう作り上げていくかは一番の根本的課題であると同時に、難易度が高いからこそ一番やりがいが生み出されるところでもあります。参加者も当然、全員が全員まったく同じ思いを持っているわけではないので、個々の考えや視点を持ってもらいながらも、プロジェクトとしての大きな目的、ベクトルは共有しておくことがとても大事なことだと感じました。

2016年3月。11日の塩竈市追悼式出席に合わせて現地視察を実施した際の1枚。2本目の記事でも紹介したシンガーソングライターの鈴木さんと、青学高等部生徒会長やその後も様々な活躍をしている久保直生くんと一緒に

 また、学生団体の宿命として、メンバーの入れ替わりが挙げられると思います。それも最大でも4年という、とても短いサイクルです。こうなってくると、創設者の思いや当時の熱量などはどうしても年を追うごとに薄くなってしまうと思います。ビジョン・ミッションを策定したり、引継ぎ資料の作成などでこれをカバーしようと動くものですが、リアリティを持って創設期のことを感じることは難しいのが実情です。僕自身もすべてを把握できていたわけではないと思いますが、これをスタッフはもとより参加者たちにどう伝えようかということは頭を悩ませました。

 有形ではなく、目に見えないモノを作り上げていく裏にある思い......。それをプロジェクトに携わる一人ひとりの人材レベルを引き上げる材料にできないか。実際に上手くできたかは分かりませんが、自分の口からミーティングの時などに歴史や先輩方の思いを伝えたり、過去の報告書や活動ノートなどを閲覧してもらうなどの工夫を凝らしました。また、ここでも過去を知るリピーターの参加者や、現地の関係者にその思いや歴史を話してもらうなどで"自分たち以外からの客観的な発信"も試みたりしていました。参加者一人ひとりにはそれぞれ響き方が違うと思っていたからです。

 総括して言うと、参加者という存在は、プロジェクトの成功に向けて上手く感化させたり方向性を共にするために巻き込むエネルギーを要してまでも、自分たちの強力な味方になってくれる存在だと強く感じました。そしてプロジェクトが終わったあとでもご飯に行って近況を話し合ったり、大学内ですれ違ったりした際には自然と会話が生まれたりしています。SNSなどで参加者同士が交流している様子を見たりしたときはやはり嬉しいですし、こういう瞬間こそ自分たちが作り上げたモノが間違っていなかったんだなと実感できます。

 ソフトな事業でこそ人の繋がりや思いがダイレクトに影響を及ぼし、全体を形作っているのだと思います。皆さんにも思いを共有し、無形の成果物を作り上げる経験から得られる感動や成長を味わって欲しいと思います! 今年も宜しくお願い致します!