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アポロ計画と何が違う 米国、50年ぶり人類を月へ

アポロ計画と何が違う 米国、50年ぶり人類を月へ

 1969年にアポロ11号が月に着陸してからおよそ50年、人類を再び月に送る計画が動き出した。12月11日にトランプ米大統領が、月への有人探査をNASAに指示する文書に署名。中国なども積極的に月探査に取り組んでいて、日本も米国の有人探査計画に参加していく方針だ。

アポロ計画では6回着陸 今回は火星への中継拠点に

 アポロ計画では、1969年に11号が初めて月に着陸、アームストロング船長が人類史上初めて月に足跡をしるした。その後、72年の17号まで、事故で引き返した13号を除いて6回の着陸に成功し、12人の宇宙飛行士が月に降り立った。これまでに人類が地球以外の星に到着したのは、この時だけだ。

月面に立てた米国の国旗とアポロ11号のオルドリン飛行士(NASA)

 アポロ計画は月に人類を送ること自体が目的だった。しかし今回は、すでに公表されている火星探査など、より遠くの星々へ向かう足ががりとして月に拠点を設ける。米国では、オバマ大統領時代に人類を火星に送る構想を打ち出していたが、今回は、そうした計画の前段階として、月への有人探査を追加した格好だ。トランプ大統領も「月面に旗を立てるだけではなく、火星探査への基盤を築く」と説明している。

 NASAは2030年代中ごろに火星へ人類を送る構想を進めている。その足がかりとして月を回る宇宙ステーション「深宇宙ゲートウェイ」の建設構想にも取り組んでいて、ロシアとも協力することを確認済みだ。そうした一連の流れのなかで、月面に宇宙飛行士を降り立たせるとともに有人拠点を建設。深宇宙ゲートウェイとともに、火星などへ向かう拠点にしようというわけだ。

月に宇宙飛行士を送ることをNASAに指示する文書に署名するトランプ米大統領(NASA/Aubrey Gemignani)

 地球から直接、火星などに向かおうとすると、大量の燃料を積んで出発しなければならず、打ち上げに大変な費用や労力がかかる。月の基地や宇宙ステーションにいったん必要な燃料や機材を運び、そこから火星などに出発すれば、必要な燃料を抑えることができる。

 基地ができれば、月に眠る資源の開発にもつながる。これまでの探査で月に水やアルミニウムなどが存在することなどがわかっていて、水は酸素や水素に分解してロケット燃料などにも使える期待もある。日本の探査機「かぐや」が月の地下に巨大な空洞があることを見つけたが、月に基地を造るときに利用できるのではないかと、米国も関心を寄せている。

中国は13年に無人探査機の着陸に成功

 月の探査に熱心なのは米国だけではない。なかでも中国は13年に、米国と旧ソ連に続いて3番目に月に無人探査機「嫦娥(じょうが)3号」を着陸させることに成功した。2017年11月打ち上げの予定は延期されたが、無人探査機「嫦娥5号」を着陸させ、サンプルを地球に持ち帰る計画も進行中だ。具体的なスケジュールなどは公表していないが、有人での月面着陸を視野に入れて探査計画を進めていることは間違いない。

 独自の有人ロケットを持たない日本は、12月に宇宙基本計画の工程表を改定し、米国の探査計画などに参加して、月や火星の有人探査を目指すことを決めている。

 地球温暖化対策に消極的な姿勢をとるなど科学分野には関心が低いトランプ大統領だが、宇宙開発に関しては大統領選挙中から前向きな発言をしていた。特に有人探査を推進する姿勢は強く、今回の月へ宇宙飛行士を送る方針もその流れに沿ったものといえる。またアポロ計画は米国民にとって過去の大きな栄光でもあり、支持率が低迷するトランプ大統領にとって人気回復策のひとつとみられることも否めない。

NASAが開発を進めている大型ロケット「SLS」(NASA)

 とはいえ、米国はすでに、火星探査などに向けて大型ロケット「SLS」や新型宇宙船「オライオン」などの開発を進めている。民間企業のスペースXも、アポロ宇宙船の打ち上げに使われたサターン5型を上回る大型ロケット「BFR」を開発して、火星の有人探査を目指すことを公表している。月に人類を送る計画でも、こうした技術が利用されるはずだ。

 一方で、アポロ計画の時は、旧ソ連との激しい宇宙開発競争の中で、ケネディ大統領が「1960年代のうちに人類を月に到達させる」と宣言。米国が国の威信をかけて資金を投入した。今回は、月に着陸する具体的なスケジュールは決まっておらず、予算をどう手当てするかといった課題も残っている。再び人類が月に立てるかは、技術よりも資金の問題が大きいかもしれない。
(科学技術部シニア・エディター 小玉祥司)[日経電子版2017年12月26日付]

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