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サステナブルな会社選び(12)なぜ株式会社がやるか 障がい者雇用支援のゼネラルパートナーズ

サステナブルな会社選び(12) なぜ株式会社がやるか 障がい者雇用支援のゼネラルパートナーズ
authored by 「オルタナ」編集部

 この連載では、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」編集部の記者が企業の規模や知名度を問わず、CSR(企業の社会的責任)で先進的な役割を果たし、社会的課題にも積極的に取り組む企業を紹介していきます。企業のCSRやサステナビリティ担当部署で働く若手社会人や社会起業家へインタビューし、「社会的課題を解決する働き方」を様々な角度からお伝えします。

 今回、ご紹介するゼネラルパートナーズは、民間として日本で最も早く障がい者雇用の支援事業を始めた企業です。2003年の創業時から行っている人材紹介事業をはじめ、求人情報事業、教育・研修事業、農業生産事業など、幅広く展開してきました。「誰もが自分らしくワクワクする人生」というビジョンのもと、ビジネスを通じて社会問題の解決を目指している同社が、大切にしていることは何か。進藤均社長に聞きました。

ビジネスと社会問題の解決は両立できる

――ゼネラルパートナーズのメーン事業は、障がい者雇用の総合コンサルティングかと思います。創業当時、なぜ障がい者雇用に着目されたのでしょうか。

ビジネスを通じて社会問題の解決を目指すゼネラルパートナーズの進藤均社長

 実は私の妹に障がいがあり、小さい頃から障がい者に対する差別や偏見を感じていたことが影響しています。過去には、親戚の結婚式に妹だけが呼ばれないこともありました。

 日常生活を送るだけでも肩身の狭い思いをしてしまうのに、社会に出れば差別や偏見が根強く残っている。そのような状況を目にするにつれ、障がい者と健常者がもっと混じり合って、一人の人間として向き合っていける社会にしていきたいと思ったのです。

――障がい者雇用の支援を「株式会社」として取り組むことに決めたのはなぜですか。

 ビジネスでの成功と社会問題の解決を切り離して考えてしまう人はまだ多いでしょう。しかし、ビジネスモデルさえ考え抜けば、この2つは両立できると思ったので挑戦することを決めました。

――具体的にどうすればよいのでしょうか。

 例えば創業当時から行っている人材紹介事業です。創業した2003年頃は、障がいのある方が仕事を探す方法はハローワークしかありませんでした。しかも、求人票には簡単な情報しか載っておらず、企業側にも障がい者雇用に関する十分な知識がない。その結果、ミスマッチが生じ、短期間で退職してしまうという問題が多発していたのです。こうした問題を解決するためには、障がい者と企業の間にある情報不足を埋める必要があると考えました。

 この事業では、弊社の専門のキャリアカウンセラーが、障がいの内容や必要な配慮、ご経歴などを求職者からヒアリングします。そして、企業側のニーズとマッチングさせたうえで、求職者からヒアリングした情報を企業へ提供していきます。

 障がいのある方と企業との良いマッチングが増えるほど、売り上げも伸びていきます。ビジネスと社会問題の解決は、ビジネスモデル次第で両立できるのです。

――創業当初は周囲からの反対も多かったと聞きます。

 正直、周囲のほぼ全員から反対されました。「ビジネスとして成立しない」、「利益を追求する株式会社という形態で取り組むべきではない」などと言われました。

 その時、「これが今の世の中なんだ」と痛感しました。障がい者が働くことを特別なことだと思っていたら、いつまでも差別や偏見はなくならない。「こうした世の中を変えたい」という強い意志が創業時のモチベーションとなりました。

精神障がい者向け研修プログラムを開発

――障害者雇用促進法の改正で、今年4月から法定雇用率の算定式に精神障がい者の数も加わり、精神障がい者の雇用が増えそうです。ゼネラルパートナーズでは、精神障がい者の雇用について、どのような取り組みを行ってきたのでしょうか。

「誰もが自分らしくワクワクする人生」という同社のビジョン

 以前は精神障がい者の雇用に対して後ろ向きの企業が多く、そもそも求人が存在しませんでした。精神障がい者自身も体調が安定せず、すぐに働ける状態ではない方が多くいました。そこで、2012年に始めたのが、精神障がい者向けの教育・研修事業(就労移行支援事業)です。

 この事業では、精神障がいのある方に毎日、弊社の事業所へ通ってもらい、体調を整えながら就職後に役立つスキルの習得などを目指していきます。

 現在はさらに対象を細分化しており、うつ症状専門の「シゴトライ」、統合失調症専門の「リドアーズ」、発達障がい専門の「リンクビー」など、障がい別の研修プログラムを提供しています。聴覚障がい専門の「いそひと」、難病専門の「ベネファイ」など、就労が困難な方向けのプログラムも次々と作りました。

――精神障がい者の就労における課題とは、どのようなものでしょうか。

 日本には、精神疾患を患っている方が20~64歳では約200万人いるといわれています。しかし、職場で自らの精神疾患をオープンに伝えている人はたったの5万人です。つまり残りの195万人は、そもそも働けていないか、働けていたとしても自分が精神疾患を抱えていることを伝えられていないということです。

――なぜ自分の疾患を職場の人に伝えられないのでしょうか。

 まず考えられるのは、職場に精神疾患に対する理解がないということです。「自分に精神疾患があることを知られたら、辞めさせられてしまうんじゃないか」と感じたら、伝えられませんよね。精神障がいのある方々が、オープンに自分のことを伝えられるような社会にするためには、企業への啓発が重要です。

――他にはどのような課題があるのでしょうか。

 もうひとつ挙げられるのは、精神障がいのある方の職場への定着率の低さです。弊社の運営する「障がい者総合研究所」が行った調査で、精神障がいのある方の約半数が1年以内に辞めてしまうことが分かっています。一方、弊社の教育・研修事業を経て就職した人の91%は1年後も同じ職場で働き続けています。

誰かが一歩を踏み出せば社会は変わる

――今後の事業展開や目指すゴールについて教えてください。

ゼネラルパートナーズは障がい者雇用で道を切り拓いてきた

 これからはLGBTやニート、高齢者、難病の方々など、より多様な人々の社会進出を進めていくことを考えています。働くことに不自由や生きづらさを抱えているのは、障がいがある方ばかりではありません。障がい者雇用において道を切り拓いてきた私たちだからこそ、できることも多いのではと思っています。

 いま振り返ると、15年前は障がい者雇用の支援を民間企業で行っているところはどこもありませんでした。けれども、今は様々な企業が参入する市場へと成長しました。私たちが一歩踏み出したことで、社会は確実に変わってきているのだと思います。

――これから先、社会課題を解決するような働き方を目指す学生へ、メッセージをいただけますか。

 いま、日本は大きな転換期にあります。経済も例外ではなく、大手企業へ就職できれば安泰と言われていた時代ではなくなってきています。だからこそ一人ひとりの働き方も、企業の選び方も同じように転換期にあります。

 ソーシャルビジネスで社会を変えるというのは、魚を必要としている人々に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるような方法です。これから生まれてくるであろう社会問題の一つひとつに、どのように対応していけば良いのかを考え抜くことが大切だと思います。
(聞き手は「オルタナS」編集長・池田 真隆)

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