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議員はAIに置き換えることができるのか?

僕ら流・社会の変え方(28)

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最近、技術革新が起きてメディアを賑わせているAI(artificial intelligence,人工知能)は、より便利な世の中をつくるのに役立つ可能性がある一方、人とうまく共存できるかについては未知数です。2045年には人工知能が人間の知能を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が起こり、今ある職業の50%はAIに取って代わられるかもしれないという研究結果も発表されています。

私は現在、NPOの代表を務める傍ら、港区議会議員を務めています。そこで今回は、議員もいずれAIに置き換えることができるのか、「AI議員」は誕生する可能性があるのかについて、考えてみました。多くの学生の皆さんにとっても、「議員」を自分のなりたい職業に置き換えてみると、自らのキャリア選択の参考になるかもしれません。

「AI議員」は「3つの壁」を乗り越えられるか?

先に結論から述べたいと思います。議員の役割が「人々の声を政治に反映させること」だとすれば、いずれAIに置き換えることができると思います。なぜなら、SNSなどによって集められた多くの声はインターネットのビックデータの中に転がっていて、それをAIが分析できれば、「代弁者」としての議員はいらなくなるからです。メーカーのマーケティング部門の中にはすでに、AIに商品開発の一部を任せているところもあります。でも、完全に置き換えるには、様々な障壁があるでしょう。

一つ目は「既存の政治家の壁」です。確かに、自らの職にしがみつき、当選することが優先されてしまっている議員もいます。一方で、町会・自治会や企業など、昔から議員を支持してきた団体は少子高齢化によりどんどん組織基盤が弱くなってきています。だから、インターネット上の意見を含め、彼らにはより多くのコミュニティから票を獲得する必要性に迫られています。近い将来、議員は自らのSNSをbotに運用してもらうようになると思います。その方が効率的に意見を収集でき、また間違いのない発言ができるからです。もちろん、その先には、「AI議員」の実現があります。「高齢者などはスマートフォンやタブレット端末などが使えないから、それでも生身の人間のコミュニケーションは必要だ」と言う人もいます。でも、デバイスの急速な普及と人間とAIの急速な接近を考えると、それも時間の問題です。

二つ目は、「利害の壁」です。人間は自らの利益を最大化するべく、政治を使うことがあります。経済が成長し続け、多数の生産が見込める時代には、その配分をどうするかに政治家の手腕がかかっていました。しかし、今は限られた資源をいかに分配するかの時代です。一方、先進国の食品ロスを途上国に回すだけで世界の貧困問題が解決すると言われているように、グローバルな視点でみれば、資源や開発の余地はまだまだあります。もちろん、それは国内でも同様です。そのため、AIが資源の偏りと潜在性を察知し、広く人々に平等に配分することができるなら、加えてそれにより今の生活がより豊かになると証明されれば、人々は「AI議員」の支持へ回るでしょう。

最後は、「変革の壁」です。「AIはイノベーションを起こせない」という問題です。実は私は、これが一番手強いと思っています。AIは主にインターネット上から多数のデータを集め、そこから思考していくものです。そのため、Aが正しいか、Bが正しいかの判断はできても、あるいはAをより改善するための方法を考え出すことができても、これまで全くなかったものを生み出すスキルは持ち合わせていません。一方、議員は時に、AかBかで対立している物事を収め、なるべく多くの人の幸福をつくるため、Cという発想をします。裏を返せば、クリエイティビティや提案力のない政治家はどんどん淘汰され、AIに置き替わられるという結末を迎えるでしょう。

政治家に必要なのは、社会的弱者の声を丁寧に拾い上げること

しかし、「AI議員」がバラ色の生活を私たちにもたらしてくれると手放しで喜ぶことはできません。例えば、マイノリティなど社会的弱者と言われる人々の生活をどうするのか。多くの人の幸福を追求するとどうしても漏れてしまう人々の利益は、AIにはなかなか守りづらいでしょう。

例えば、LGBTの問題。日本では13人に1人がLGBTとされていますから、彼らの意見は社会的にみれば「少数派」です。よって、「多数決」では彼らの意見が通りません。AIはきっと少数の意見として退けてしまうでしょう。しかし、現実はもっと暖かいはずです。もし彼らが人々を感動させるスピーチをすることができ、政治家が「声なき声」に真摯に耳を傾けてそこから政策をつくることができれば、世界はきっと、彼らの生きやすさを追求するようになるでしょう。そして、そんな世の中の方がいいと思っている人はたくさんいます。

私は、議員には、行政サービスで見落とされがちな、「いない」ものとされている人たちの声を日々のコミュニケーションから丁寧に拾い上げ、彼らの生きづらさを解消する役割があるのだと考えています。SNS上でも現実世界でも声を上げられない人々の声を丁寧に聞きに行き、それを政策に反映させること。自らの想像力や発想力、クリエイティビティを最大限に活かし、AIを使いこなしつつ、彼らの意見をマジョリティの人のそれと接続させていくこと。それができる議員は、これまでもこれからも、ずっと求められていると思います。

メーカーの社員でもそれは同じ。AIが気づかないような観察力と想像力で、埋もれがちなニーズを掘り起こし、「本当に世の中に必要なモノやサービスは何か」を考える努力が必要になると思います。障害者向けの開発から劇的に一般に普及した「温水洗浄便座」などは好例です。マイノリティにとって使いやすいモノは、きっと多くの人の生活を豊かにしてくれるはずです。

AIがいいのか、生身の人間がいいのか、そしてどちらが生き残るのか。みなさん一人一人の判断と選択、そして行動にかかっています。

横尾俊成(よこお・としなり)
 NPO法人グリーンバード代表/NPO法人マチノコト代表/港区議会議員(無所属)/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程に在籍中。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。
HP:http://www.ecotoshi.jp
Twitter: @ecotoshi

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